研修医の勤務時間、週80時間未満でも患者転帰に有害な影響はない

提供元:ケアネット

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公開日:2011/04/15

 



アメリカでは卒後研修医の勤務時間を週80時間未満に短縮しても、患者転帰や研修内容への有害な影響はみられなかったことが、イギリス・ユニバーシティ・カレッジ病院のS R Moonesinghe氏らの調査で示された。欧米では、過去20年にわたり、患者の安全性や医師の労働条件の改善を目的とする勧告や法律に従って、卒後研修医の勤務時間の短縮を進めているが、患者の転帰や研修の内容に想定外の有害な影響が及ぶ可能性が懸念されるという。BMJ誌2011年4月2日号(オンライン版2011年3月22日号)掲載の報告。

勤務時間短縮が研修内容や患者転帰に及ぼす影響を系統的にレビュー




研究グループは、卒後研修医の勤務時間の短縮が研修の内容や患者の転帰に及ぼす影響を評価するために系統的なレビューを行った。

データベース(Medline、 Embase、ISI Web of Science、Google Scholar、ERIC、SIGLE)を用いて、記述言語を制限せずに1990~2010年に発表された論文を検索し、抽出された論文の引用文献なども参照した。

対象は、勤務時間の変動が卒後研修、患者の安全や転帰に及ぼす影響を検討した試験とし、試験デザインの違いは問わないこととした。

週56時間/48時間未満への短縮の影響の検討は不十分




適格基準を満たした72の試験のうち、38試験は研修内容のアウトカムを、31試験は患者の転帰を検討しており、3試験は両方の評価を行っていた。

勤務時間を、週80時間以上から、アメリカの勧告に従って80時間未満に短縮しても、患者の安全性に有害な影響はなく、卒後研修への影響も少なかった。

週56時間未満あるいは48時間未満というヨーロッパの規定に関する研究は全般に質が低く、結果も相反するものが多いため、確定的な結論は得られなかった。

著者は、「アメリカでは、勤務時間を週80時間未満に短縮しても、患者転帰や研修内容への有害な影響は見られなかったが、イギリスにおける週56時間/48時間未満への短縮の影響については、質の高い研究が十分には行われていない」と結論し、「大規模な多施設共同試験によるさらなる検討が、特にEUで求められる」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)