CABG合併症としての脳卒中発症、30年間で年率約4.7%の減少傾向に

米国クリーブランド・クリニックにおける、冠状動脈バイパス術(CABG)の合併症としての脳卒中発症率は、過去30年間で、年率約4.7%の減少傾向にあることが報告された。また患者のリスクプロフィールが厳しくなっているにもかかわらず、そうした脳卒中の発症は術中よりも術後の方が半数以上を占め(58%がCABG後)ていたことも明らかにされた。同クリニックのKhaldoun G. Tarakji氏らが、過去30年間に同クリニックでCABGを受けた4万5,000人超について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2011年1月26日号で発表した。
患者の共存症は増加したものの、脳卒中発症率は減少
研究グループは、CABG後の脳卒中の経時的傾向、脳卒中のリスク因子の特定および長期アウトカムとの関連を目的に、1982~2009年に、クリーブランド・クリニックでCABGを受けた4万5,432人(平均年齢63歳、SD:10)について前向きに追跡し、術中・術後の脳卒中発症率とそのタイミング、アウトカムなどについて解析した。脳卒中後の合併症と生存については、傾向スコア適合群との比較で検討がされた。
なお検討されたCABGは、4つの異なる術式(off-pump:体外循環非使用、on-pump with beating heart:体外循環使用心拍動下、on-pump with arrested heart:体外循環使用心停止下、on-pump with hypothermic circulatory arrest:体外循環使用超低体温循環停止下)を含んだ。
その結果、CABGの術中・術後に脳卒中を発症したのは、全体の1.6%(95%信頼区間:1.4~1.7)にあたる705人だった。
CABGを受ける患者は脳卒中歴があったり、高血圧症、糖尿病といった共存症が増えているにもかかわらず、CABG術中・術後の脳卒中発症率は、1988年の2.6%(95%信頼区間:1.9~3.4)を最高に、年率4.69%(同:4.68~4.70、p=0.04)の割合で減少傾向にあった。
術後40時間が術後脳卒中発症のピーク
CABG術中に脳卒中を発症したのは279人(40%)、術後は409人(58%)だった。
術後の脳卒中発症は、術後40時間が最も多く、6日後までは0.055%/日の割合で低下した。
術中・術後の脳卒中発症に関するリスク因子は、加齢と動脈硬化症だった。
CABGの種類別で見てみると、術中脳卒中発症率が最も低かったのは、体外循環非使用CABG(0.14%)と体外循環使用心拍動下CABG(0%)で、続いて体外循環使用心停止下CABG(0.50%)、最も高率だったのは体外循環使用超低体温循環停止下CABG(5.3%)だった。
脳卒中を発症した人の、術後追跡期間中(平均11年、SD:8.6)の死亡率や集中治療室入室時間、術後入院日数といったアウトカムは、そうでない人に比べ悪かった。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)
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