早期乳がんに対する術後エキセメスタン、継続投与と逐次投与のいずれが有効か?

提供元:ケアネット

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公開日:2011/02/03

 



第3世代アロマターゼ阻害薬(AI)エキセメスタン(商品名:アロマシン)の5年継続投与と、タモキシフェン(商品名:ノルバデックスなど)→エキセメスタン逐次投与は、いずれも早期乳がんの術後補助療法として有用な治療選択肢となる可能性があることが、オランダLeiden大学医療センターのCornelis J H van de Velde氏らが行ったTEAM(Tamoxifen Exemestane Adjuvant Multinational)試験で示唆された。同じく第3世代のAIであるアナストロゾール(同:アリミデックス)およびレトロゾール(同:フェマーラ)は、継続投与、逐次投与ともにタモキシフェン継続投与に比べ無病生存率(DFS)を上昇させるが、全生存率(OS)は改善しないことが示されている。TEAM試験は当初、エキセメスタンとタモキシフェンの単剤の比較試験として開始されたが、もう一つのランドマーク試験であるIES試験の結果(逐次投与群のエストロゲン受容体陽性/不明例でDFS、OSが有意に改善)を受けてプロトコールが変更されたという。Lancet誌2011年1月22日号(オンライン版2011年1月18日号)掲載の報告。

日本の30施設が参加した継続投与と逐次投与の国際的第III相試験




TEAM試験の研究グループは、エキセメスタン継続投与とタモキシフェン→エキセメスタン逐次投与の長期的有用性を比較する多施設共同無作為化第III相試験を実施した。

9ヵ国566施設(ヨーロッパ357施設、アメリカ179施設、日本30施設)から、閉経後ホルモン受容体陽性早期乳がん女性(年齢中央値64歳、範囲:35~96歳)が登録され、エキセメスタン25mg/日(経口)を5年間投与する群(継続投与群)あるいはタモキシフェン20mg/日(経口)を2.5~3年間投与後エキセメスタン25mg/日に切り替えて合計5年間投与する群(逐次投与群)に無作為に割り付けられた。

主要評価項目は、治療5年の時点におけるDFSとし、intention-to-treat(ITT)解析を行った。

DFSは同等、有害事象プロフィールは異なる




9,779例が登録され、逐次投与群に4,875例が、継続投与群には4,904例が割り付けられた。このうち、逐次投与群の4,868例および継続投与群の4,898例がITT解析の対象となった。

治療5年の時点で逐次投与群の4,154例、継続投与群の4,186例が無病生存しており、DFSはそれぞれ85%(4,154/4,868例)、86%(4,186/4,898例)、ハザード比は0.97(95%信頼区間:0.88~1.08)と両群で同等であった(p=0.60)。

婦人科的症状は、逐次投与群が20%(942/4,814例)と、継続投与群の11%(523/4,852例)に比べ高頻度であった。静脈血栓症[2%(99例) vs. 1%(47例)、p<0.0001]や子宮内膜の異常[4%(191例) vs. 1%(19例)、p<0.0001]も、逐次投与群で多くみられた。

継続投与群で多い有害事象としては、筋骨格系障害[44%(2,133/4,814例) vs. 50%(2,448/4,852例)]、高血圧[5%(219例) vs. 6%(303例)、p=0.0003]、脂質異常症[3%(136例) vs. 5%(230例)、p<0.0001]などが認められた。

これらの知見に基づき、著者は「エキセメスタン単独の5年継続投与およびタモキシフェン2.5~3年→エキセメスタン2~2.5年の逐次投与は、いずれも閉経後ホルモン受容体陽性早期乳がんに対する適切な治療選択肢となる可能性がある」と結論し、「ニつの治療アプローチは有害事象プロフィールが異なるため、治療法を決める際はこの点を十分に考慮することが重要であろう。今後、TEAM試験と他のアロマターゼ阻害薬の臨床試験の成果に関するトランスレーショナル・リサーチにより、特定の治療戦略のベネフィットが最も大きい患者を同定することが可能になるだろう」と考察している。

(菅野守:医学ライター)