不適切な気管支内挿管を検出する最適な方法は?

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2010/12/10

 



気管挿管は臨床家にとってルーチンの手技だが、経験によって手技のレベルは異なり、気管内チューブの置き違いから重大な合併症が起きる可能性がある。これまで、チューブの位置を評価する方法として、両胸への聴診法が推奨されてきたが、オーストリア・ウィーン医科大学総合病院のChristian Sitzwohl氏らのグループは、不適切な気管支内挿管を検出する最も感度と特異度が高い臨床的手法はどのようなものかを判定する、前向き無作為化盲検試験を行った。BMJ誌2010年11月27日号(オンライン版2010年11月9日号)掲載より。

4つの臨床テストについて検証




試験は、三次救急を行っている大学病院の麻酔部門で、19~75歳の婦人科または泌尿器科の待機的手術予定の患者(米国麻酔学会分類IまたはII)160例を対象とした。

患者は無作為に、最終的に8つの試験群に割り付けられた。まず、気管内チューブを内視鏡的に気管分岐部より2.5~4.0cm上に置く群と、右主気管支に置く群に割り付けられ、各群は4つの異なる、気管内チューブ位置を判定する臨床テスト群に割り付けられた。4つの臨床テストは、(1)胸部両側への聴診(聴診法)、(2)胸部対称運動の観察と触診(観察法)、(3)チューブに印刷されたcmスケールで位置を推定(深度法)、(4)3つを組み合わせて行う(総合法)だった。

各手技およびテストは、1年目のレジデントと経験豊富な麻酔医により行われ、160例の患者は、計320回の観察を受けた。

主要評価項目は、気管内チューブの位置の正誤とされた。

チューブ挿入深度での評価が最適だが、完全ではない




この臨床テストで、1年目のレジデントは、聴診法では55%の症例で判定を誤り、経験豊富な麻酔医より有意に見落としが多かった(オッズ比:10.0、95%信頼区間:1.4~434)。

不適切な気管支内挿管の検出感度は、深度法88%(95%信頼区間:75%~100%)、総合法100%であり、聴診法65%(同:49%~81%)、観察法43%(同:25%~60%)より有意に高かった(P<0.001)。特異度(正しい気管挿管の検出)は、4つの方法とも同等だった。

正しいチューブ挿入深度は平均で女性21cm、男性23cmだった。しかし、この深度では、挿管患者の頭の位置が動くなどした時も安全なように推奨されている、チューブ先端から気管分岐部までを2.5cm以上とする位置に達していなかった症例が、女性では20%(24/118例)、男性では18%(7/42例)あった。このことからSitzwohl氏は、「最適なチューブ挿入深度は女性20cm、男性22cmであると考えられた」との見解を示している。

結論として、「経験の浅い臨床家が不適切な気管支内挿管を検出するには、聴診法よりチューブの挿入深度によるべき」としたうえで、「経験豊富な医師でも、特に周囲のノイズが多く正確な聴診が難しい状況(たとえば緊急事態またはヘリコプター搬送中など)では、女性20~21cm、男性22~23cmをルールとした方がメリットはあるだろう。とはいえ、不適切な気管支内挿管に対する感度と特異度が最も高いのは、深度法、聴診法、観察法の3つを組み合わせて行うことによる」とまとめている。

(朝田哲明:医療ライター)