血液検査によって過敏性腸症候群(IBS)患者の症状を引き起こし得る食品を特定し、食事から除去できる可能性のあることが、新たな研究で示唆された。この血液検査の結果に基づく食事療法を実践したIBS患者の約60%で腹痛が軽減したのに対し、偽(シャム)の食事療法を実践した群ではその割合が約42%にとどまったという。米ミシガン大学消化器病学・肝臓病学主任のWilliam Chey氏らが実施した研究で、詳細は「Gastroenterology」に1月31日掲載された。
Chey氏は、「この血液検査はさらなる検証が必要だが、医療従事者が、個々のIBS患者に最適な食事アドバイスを提供する『精密栄養(プレシジョン・ニュートリション)』のアプローチに一歩近づく可能性がある」と述べている。研究グループによると、特定の食品がIBSの症状を悪化させ、発作を引き起こす可能性があることはよく知られているという。
この血液検査(inFoods IBS)は、18種類の食品に対する被験者の免疫グロブリンG(IgG)抗体レベルを調べることで、IBSの症状を悪化させる可能性のある食品を特定するもの。IgG抗体レベルが上昇を示した食品については、それを食事から除去することで症状が軽減する可能性が高いと考えられる。対象とされた食品は、小麦、オーツ麦、ライ麦、全卵、酵母、牛乳、紅茶、キャベツ、トウモロコシ、グレープフルーツ、蜂蜜、レモン、パイナップルなどであった。
Chey氏らは、IBS患者から提供された血液サンプルで検査を行い、1種類以上の食品がIgG抗体陽性で、1日の平均腹痛強度スコア(11.0点満点)が3.0~7.5点だった238人を、8週間にわたり、血液検査の結果に基づきIgG抗体陽性となった食品を除去する食事療法を実践する群(実験食群)と偽の食事療法を実践する群(シャム食群)にランダムに割り付けた。シャム食群は、例えばクルミにIgG抗体陽性を示した場合には食事からアーモンドを除外するなど、陽性となった食品に近い食品を控えるよう指示された。
223人を対象に解析した結果、主要評価項目とした、治療期間の最後の4週間のうちの2週間以上で腹痛の30%以上の軽減を達成した対象者の割合は、実験食群で59.6%、シャム食群で42.1%であり、両群間に統計学的に有意な差が認められた(P=0.02)。また、IBSのタイプ別(便秘型IBS、混合型IBS〔便秘と下痢を頻回に繰り返す〕)に主要評価項目を達成した対象者の割合を見ると、便秘型IBSでは実験食群67.1%、シャム食群35.8%、混合型IBSでは66%と29.5%であり、どちらのタイプのIBSでも実験食群の方が症状改善の割合が高いことが示された。
研究グループは、「除去食は、抗炎症薬に頼らずにIBSを治療するのに役立つが、広範囲の食品が制限対象となるため実践が難しい場合が多い」と指摘する。それに対し、この血液検査を用いれば、患者個人の検査結果に基づき特定の食品のみを除去のターゲットにすることが可能になる。本論文の上席著者で、米クリーブランド・クリニック消化器疾患研究所のAnthony Lembo氏は、「われわれの食生活は複雑で、症状を誘発し得る食品の特定が困難な場合がある。この血液検査は、IBS患者が自身の症状を悪化させる食品を特定するのに役立つだろう」と述べている。
なお、本研究は、この検査を開発したBiomerica社の資金提供により行われた。また、この血液検査は、現時点では米食品医薬品局(FDA)の認可を受けていない。
[2025年2月19日/HealthDayNews]Copyright (c) 2025 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら