労働者は、デジタル技術が普及し、常に相手とオンラインでつながっていなければならないという状況に大きな負担を感じていることが、英国の調査で明らかになった。研究グループは、これは世界的な問題だとの考えを示している。論文の筆頭著者である英ノッティンガム大学心理学分野のElizabeth Marsh氏は、「われわれの研究で分かったのは、デジタル技術を活用した仕事(以下、デジタルワーク)には潜在的な負の側面があるということだ。そのような環境で求められる業務上の要求や激しさは労働者に過度の負担を与え、疲労やストレスを引き起こしている可能性がある」と述べている。この研究結果は、「Frontiers in Organizational Psychology」に12月17日掲載された。
Marsh氏は、「オンライン状態を常に保ってメッセージをチェックしなければならないというプレッシャーを感じると、仕事から離れることが心理的に難しくなる可能性がある」と同大学のニュースリリースで述べている。
今回の研究でMarsh氏らは、14人(男性43%、年齢中央値41歳)の労働者を対象に、デジタル技術を活用した21世紀の職場環境が労働者のウェルビーイングに与える影響について検討した。研究参加者には、ストレスや過負荷などデジタルワークの負の側面に焦点を当てた質問を用いた半構造化面接(平均34分間)を実施し、参加者のデジタルワーク環境での経験を探った。
その結果、人々の性格や傾向に基づく5つのテーマが特定された。一つ目は、「ハイパーコネクティビティ」である。これは、常にテキストメッセージや電子メールなどで連絡が取れる状態を保ち、顧客や同僚からの連絡に迅速に対応しなければならないというプレッシャーを感じている状態を指す。研究参加者の1人は、「常にそこにいなければならないように感じる。まるで、常に前進を意味する青信号を点灯させていなければならないような感じだ」と語ったという。
二つ目は、デジタルワークの中で発生するメッセージやアプリケーション、ミーティングなどへの対応が認知的過負荷を引き起こし、感情的な負担や注意の対立が生じる状態を意味する「テクノロジー関連の過負荷」。三つ目は、不安定なインターネット環境や新しいアプリの使いにくさなど、オンラインでの業務で遭遇する技術上の問題を意味する「デジタルワークのわずらわしさ」。四つ目は、情報や同僚との関係を構築する機会を見逃すことなどへの不安を意味する「見逃しに対する恐れ」。五つ目は、デジタルワークにより発生する健康上の問題を意味する「テクノロジーに起因するストレス」である。
参加者からは、「全てがオンラインになり、昼夜を問わずいつでも仕事に取り掛かれるようになったら、仕事を私生活から切り離すのが難しくなる」、「メールを受信したら〔……〕すぐに返信しなければならないというプレッシャーを感じる。そうしないと、『彼女は家で何をしているのだろう』と思われるかもしれないから」などの意見も聞かれたという。
Marsh氏は、労働者は、仕事と私生活の境界が曖昧になり、「勤務時間外」にも働かなければならないというプレッシャーを感じていることが多過ぎると指摘する。同氏は、「この調査結果は、デジタルワーカーのウェルビーイングを守るために、研究者と専門家の両方がデジタルワークの職務上の要求を特定し、理解し、緩和する必要があることを強調している」と結論付けている。
[2024年12月17日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら