僧帽弁形成術後の心房細動は転帰不良や生存率低下と関連

提供元:HealthDay News

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公開日:2023/12/19

 

 多くの心臓手術では術後に不整脈の一種である心房細動が生じることが珍しくなく、医師もこれを一過性で無害なものと見なす傾向がある。しかし、心臓弁の修復術に関しては、無害ではない可能性があるようだ。新たな研究で、僧帽弁形成術後に生じた心房細動は、転帰不良や生存率の低下と関連することが示唆された。論文の筆頭著者である米ミシガン大学アナーバー校心臓外科部門のWhitney Fu氏らによるこの研究の詳細は、「The Journal of Thoracic and Cardiovascular Surgery」に9月12日掲載された。

 この研究では、2011年から2022年の間に僧帽弁形成術を受けた922人の患者の転帰を中央値で4.9カ月にわたって追跡し、術後心房細動の発症率、脳卒中などの神経学的イベントの発生率、永続性心房細動の発症率、および死亡率について調査した。対象患者の中に、手術前に不整脈の既往があった者はいなかった。僧帽弁は左心房と左心室の間に位置する弁で、左心室から大動脈へ血液が送り出される際に弁を閉じることで、血液が左心房へ逆流しないようにする働きを持つ。

 追跡期間中に、対象患者の39%が術後心房細動を発症した。多変量ロジスティック回帰分析で術後心房細動のリスク因子を検討したところ、糖尿病(オッズ比2.2、95%信頼区間1.2〜4.1、P=0.01)と加齢(同1.1、1.0〜1.1、P<0.001)がリスク因子であることが明らかになった。また、術後心房細動は、永続性心房細動のリスク因子であり(同3.2、1.9〜5.4、P<0.001)、永続性心房細動は神経学的イベントの発生リスク増加と関連することも示された(同3.8、1.5〜9.7、P=0.004)。さらに、術後心房細動を発症した患者では、長期死亡率も高かった(ハザード比1.8、95%信頼区間1.1〜3.1、P=0.03)。

 こうした結果を受けてFu氏は、「この結果は、術後心房細動が、これまで考えられていたよりも有害な可能性を示唆するものだ」と指摘。さらに、「術後心房細動が生存に悪影響を及ぼすという結果は、過去の研究結果とも一致する」とミシガン大学のニュースリリースで述べている。

 一方、論文の上席著者である、米Frankel心臓血管センターの心臓外科医でミシガン大学医学部外科分野のSteven Bolling氏は、「この研究により、僧帽弁形成術の後には心房細動の発生頻度が高いこと、また、術後心房細動は重篤な転帰をもたらし得ることが明らかになった。こうした結果は、術後心房細動の原因と予防法を解明するさらなる研究と、この病態を管理するためのガイドラインの開発を促すものだと言えるだろう」と述べている。

[2023年11月21日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら