糖尿病とうつ病の併存で死亡リスクがより高まる

提供元:HealthDay News

印刷ボタン

公開日:2023/12/26

 

 2型糖尿病患者はうつ病を併発していることが少なくないこと、そして両者の併存により死亡リスクが4倍以上高くなることを示すデータが報告された。米ニューメキシコ州立大学のJagdish Khubchandani氏らの研究によるもので、詳細は「Diabetes & Metabolic Syndrome: Clinical Research & Reviews」11月号に掲載された。

 Khubchandani氏によると、「米国では3500万人以上が糖尿病に罹患し、9500万人以上が前糖尿病状態にあって、糖尿病は米国における主要な死因の一つに挙げられる」という。また同氏は、「残念ながら、これらの人の多くがうつ病や不安症などのメンタルヘルス上の問題を抱えている。しかし、2型糖尿病とうつ病を併発した場合の死亡リスクに及ぼす影響は、これまでのところ十分に検討されていない」と、研究の背景を説明している。

 研究では、2005~2010年の米国国民健康栄養調査(NHANES)と2019年までの同国の死亡統計のデータが解析に用いられた。NHANESの解析対象は1万4,920人の米国人成人であり、そのうち約10人に1人がうつ病(9.08%)または2型糖尿病(10%)に罹患していた。うつ病患者は、女性、喫煙者、肥満者、低所得者、および教育歴の短い人に多く、また2型糖尿病患者や心血管疾患の有病率が有意に高かった。

 交絡因子調整後、2型糖尿病患者は糖尿病でない人に比べて死亡リスクが1.70倍高いことが明らかになった。この結果をうつ病の併発の有無別に見ると、うつ病のない2型糖尿病患者では1.55倍のリスク上昇であるのに対して、うつ病と2型糖尿病を併発している患者は死亡リスクが4.24倍であることが示された。

 このような結果の背景をKhubchandani氏は、「糖尿病という病気は衰弱をもたらしやすい病気だが、うつ病を併発するとその状態がより悪化しやすくなる。さらに不運なことに、糖尿病を患う多くの米国人は、経済的にも精神的にも負担の生じやすい生活を強いられており、そのために病気の治療が困難な状況にある」と解説。また著者らは、「心理・社会的因子や生物学的メカニズムが、うつ病と糖尿病の併発の原因となっている可能性がある」と述べている。

 具体的には、不十分な治療、遺伝的背景、ライフスタイル関連因子、うつ病や2型糖尿病以外の疾患を併発するリスクの高さ、ストレス、医療アクセスの低下、経済的負担の増加、免疫や血管系の機能不全などが、共通の原因として挙げられるとのことだ。実際、今回の研究では、うつ病と糖尿病を併発している人には、いくつかの共通する特徴があることも示された。例えば、収入が少ないことや教育歴が短いこと、人種/民族的マイノリティーであること、および不健康なライフスタイルであること、その他の慢性疾患の併存などが認められた。

 先進国では、一般的に糖尿病患者の約75%が血糖管理のための治療を受けているとされる。しかし、何らかのメンタルヘルス上の問題を抱えている患者の50%以上が、その適切なケアを受けられていないと、著者らは指摘している。Khubchandani氏も、「糖尿病と併発することの多いメンタルヘルス上の問題に関するケアの質を向上させることで、糖尿病とともに生きる人々の幸福感の向上とともに、寿命を延長できる可能性がある」と語っている。

[2023年11月7日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら