食料不安と糖尿病リスクの関連が縦断研究で示される

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/06/22

 

 日々の食料の購入に苦労している若い成人は、後年の糖尿病の発症リスクが高いことが明らかになった。米ワシントン州立大学のCassandra J Nikolaus氏らの研究結果であり、詳細は「The Journal of Nutrition」に3月14日掲載された。

 Nikolaus氏らは、米国で行われている青年期から若年成人期の健康に関する縦断研究の参加者3,992人のデータを用いて、食料不安を抱えていることと、その約10年後の糖尿病発症リスクとの関連を検討した。その結果、24~32歳の時点で食料不安を感じていると回答した人は、その不安がないと答えた人に比べて、32~42歳になった時点で、血液検査による診断または自己申告による糖尿病の有病率が高いことが明らかになった。

 論文の筆頭著者であるNikolaus氏は、「食料不安の有無により、10年後の糖尿病の有病率に乖離が発生していた。つまり、若年成人期に食料不安を経験した人は、中年期に糖尿病になる確率が高くなるということだ」と解説。同氏によると、これまでにも食料不安と糖尿病、肥満、高血圧などの多くの健康問題との関連が示されていたが、それらは横断研究からのエビデンスであって、因果関係の有無については不明だったという。それに対して今回の研究は同一対象を継続的に追跡した縦断研究であるため、因果関係の存在を示唆しているとのことだ。

 しかし、食料不安がなぜ糖尿病リスクを高めるのかという理由については、今回の研究でも正確には解明できていない。これまでの研究では、食料不安は得てして栄養不良につながることが示されている。ワシントン州立大学発のリリースの中でNikolaus氏は、「健康のための食事療法のガイドラインに則して食生活を続けるには、そうでない食生活に比べると、より高コストになる傾向がある。また、調理などに時間もかかりがちだ。食費を切り詰める生活を送っている人々が、常にガイドラインに示された栄養価の高い食事を口にできるとは限らない」と解説する。

 Nikolaus氏はまた、「食料不安は負のサイクルを生み出す可能性がある」と指摘している。つまり、食料不安に直面しているがために栄養価の高い食生活を送ることができず、結果としてさまざまな疾患のリスクが高まり、実際にそれらの疾患を発症してしまった場合には医療費が発生してしまい、生活がさらに困窮して食料不安に拍車がかかる可能性があるということだ。

 なお、今回の研究では、食料不安を抱いている人の割合や糖尿病発症リスクが人種/民族によって異なることが分かった。ただし、マイノリティーのサンプル数が少ないため、食料不安と糖尿病発症リスクとの関連を人種/民族別に比較検討することは難しいとのことだ。Nikolaus氏は、今後の研究ではこの点を明確にしていく必要があると述べている。

 結論として同氏は、「食料不安を抱いている若年成人を見つけ出すことを可能とする施策が求められる。かつ、そのような境遇にある人たちが、負のサイクルを断ち切ることができるように、利用可能な社会的リソースを整備することが極めて重要である」とまとめている。

[2022年5月12日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら