認知症の早期発見やスクリーニングにおいて、多忙な日常診療のなかで効率的かつ客観的に実施できる評価ツールの開発が望まれている。2025年、アイトラッキング技術を用いた神経心理検査用プログラム「ミレボ」が、初の保険適用を有する認知症領域のプログラム医療機器(SaMD)として日本国内で承認された。川崎医科大学高齢者医療センターの和田 健二氏らは、同センターのもの忘れ外来を受診した患者を対象に、ミレボと従来の標準的な神経心理検査であるミニメンタルステート検査(MMSE)および改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)のスコアとの関連性および認知症診断精度を評価するため、本研究を実施した。Neurology and Clinical Neuroscience誌2026年5月号の報告。
対象は、2025年7月1日〜10月30日に同センターのもの忘れ外来を初めて受診した患者96例。このうち、重度の認知機能低下により神経心理検査自体が不可能であった2例および姿勢維持が困難でアイトラッキングのキャリブレーション(視線調整)が不成功に終わった2例を除く92例(95%以上)がミレボによる評価を完了した。対象者にはミレボに加え、MMSEおよびHDS-Rを併せて実施した。相関関係は、スピアマンの順位相関係数を用いて解析、評価した。 対象者を認知機能正常群、軽度認知障害(MCI)群、認知症群の3群に分類し、分散分析を用いて群間差を検証した。また、認知症群と非認知症群(認知機能正常群およびMCI群)を識別するための診断精度および最適なカットオフ値を、それぞれROC曲線およびAUC分析により算出した。
主な結果は以下のとおり。
・ミレボによる検査は、約3分という短い所要時間、最小限の事前トレーニングのみで実施可能であり、対象患者の95.8%(92/96例)が検査を完遂し、高い実行可能性が示された。
・全解析対象者(92例)における相関分析では、ミレボのスコアは、MMSEスコア(r=0.603)およびHDS-Rスコア(r=0.587)の両方と統計学的に有意な正の相関を示した(いずれもp<0.01)。
・認知症群、MCI群、認知機能正常群の3群間において、ミレボの合計スコアにはそれぞれ有意差が認められ、病期に応じた識別能を有していることが確認された。
・非認知症群と認知症群を識別するためのROC解析では、ミレボの良好な診断精度が認められ(AUC:0.830、95%信頼区間[CI]:0.745〜0.914)、その識別能はMMSE(AUC:0.872、95%CI:0.800〜0.945)やHDS-R(AUC:0.888、95%CI:0.814〜0.961)と同等であった。
・認知症識別におけるミレボの最適なカットオフ値は41.3、感度は75.0%、特異度は80.8%であった。
著者らは「ミレボは、日常の臨床現場において認知症のスクリーニングツールとして実現可能かつ効果的であり、従来の標準的な神経心理検査と同等の診断性能が認められた。ただし、ミレボのスコアは、超高齢者では従来の評価尺度よりも低くなる可能性があるため、慎重に解釈する必要がある」と結論付けている。
(鷹野 敦夫)