がん関連VTEのDOACによる出血リスク、新たな予測モデルが有用か

提供元:ケアネット

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公開日:2026/06/30

 

 直接経口抗凝固薬(DOAC)治療を受けるがん関連静脈血栓塞栓症(VTE)患者を対象に開発された出血リスク予測モデル「ONCO-DOAC BLEEDスコア」は、既存の出血リスクスコアと比較して大出血リスクを良好に層別化できることが示された。本結果は京都府立医科大学循環器内科の長井 智之氏や中西 直彦氏ら(COMMAND VTE Registry-2)が報告し、JACC:CardioOncology誌2026年6月号に掲載された。

 本研究グループは、国内31施設において2015年1月~2020年8月の期間に、急性の症候性の肺塞栓症および深部静脈血栓症と診断された患者5,197例を登録した多施設共同の観察研究「COMMAND VTE Registry-2」のデータを使用。VTE診断時に活動性がんを有していた1,507例のうち、経口抗凝固療法未実施例、ワルファリン投与例、血栓溶解療法施行例を除外した1,166例を開発コホートとして作成、解析した。主要評価項目は、大出血(国際血栓止血学会[ISTH]基準)の発生とした。

 多変量Cox比例ハザード解析より、大出血と独立して関連する予測因子(各1点)として、(1)大出血の既往、(2)慢性腎臓病(CKD)、(3)NSAIDsの使用、(4)遠隔転移のあるがん、(5)末期がん、(6)上部消化管がん、(7)膵臓がん、(8)子宮がんの8項目を特定し、「ONCO-DOAC BLEEDスコア」を構築。合計点に基づき、低リスク(0点)、中リスク(1点)、高リスク(2点以上)の3群に分類した。さらに、国内臨床試験のONCO DVT試験(601例)およびONCO PE試験(178例)の計779例を検証コホートとした。

 主な結果は以下のとおり。

・開発コホート(1,166例、追跡期間中央値163日)において127例(10.9%)が大出血を経験し、構築されたスコアの1年累積大出血発現率は低リスク群5.7%、中リスク群8.9%、高リスク群21.2%と、有意なリスク層別化が示された(p<0.001[Gray's test])。
・開発コホートでのONCO-DOAC BLEEDスコアの識別能(C-index)は、Harrell's C-indexで0.68(95%信頼区間[CI]:0.62~0.73)、Uno's C-indexで0.67(95%CI:0.62~0.72)を示し、既存スコア(VTE-BLEED:0.55、RIETE:0.58、CAT-BLEED:0.58、Perform:0.54)と比較して有意に高い識別能を発揮した(p値はそれぞれ<0.001、0.004、0.002、<0.001)。
・検証コホート(779例、うち53例が大出血を経験)においても、1年累積大出血発現率は低リスク群6.6%、中リスク群8.6%、高リスク群18.2%と段階的な上昇を示した(p=0.003[Gray's test])。
・検証コホートにおける識別能はHarrell's C-indexで0.62(95%CI:0.54~0.70)、Uno's C-indexで0.63(95%CI:0.54~0.71)で、既存スコア(VTE-BLEED:0.60、RIETE:0.60、CAT-BLEED:0.55、Perform:0.53)と同等以上の予測能を維持し、キャリブレーションにより予測リスクと実際の観察イベント発生率との良好な一致が確認された。

 研究者らは「ONCO-DOAC BLEEDスコアは、DOAC治療中のがん関連VTE患者での大出血リスク予測において、臨床的に意義のある層別化を可能にし、日常診療における個別化された治療意思決定をサポートしうる」とし、「本スコアを用いて高リスク患者を特定することは、より綿密な臨床フォローアップや併用薬(とくにNSAIDs)の見直し、病状モニタリングにつながり、安全な長期抗凝固療法の継続と最適ながん治療・VTE管理の両立に貢献することが期待される。ただし、本研究コホートは日本人のみで構成されているため、今後は欧米などほかの民族集団における外部検証を進める必要がある」と結論付けている。

(ケアネット 土井 舞子)