日本人の心筋梗塞と大動脈解離、5年生存の違いは?

提供元:ケアネット

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公開日:2026/06/29

 

 急性心筋梗塞(AMI)と急性大動脈解離(AAD)は、いずれも死亡リスクの高い循環器疾患であるが、同一地域の集団で両疾患の長期予後を直接比較した研究は限られている。そこで、澤山 裕一氏(滋賀医科大学)らの研究グループは、滋賀脳卒中・循環器病登録研究のデータを用いて、AMIとAADの死亡率を比較した。その結果、AAD患者ではAMI患者より5年死亡率および心血管死亡率が高かった。しかし、この差は主として発症早期の死亡によるものであり、発症後30日生存した患者集団の比較において、心血管死亡リスクには差が認められなかった。本研究結果は、European Heart Journal Open誌2026年5月30日号に掲載された。

 本研究は、滋賀県全域(約140万人)をカバーするレジストリ研究「滋賀脳卒中・循環器病登録研究」のデータを用いた観察研究である。2014~15年にAMIまたはAADを発症した患者を2019年12月まで追跡した。他県居住者、研究期間中の再発例、AMIとAADの同時発症例を除外した1,923例を解析対象とした。主要評価項目は死亡、副次評価項目は心血管死亡とした。発症早期の死亡による影響を検討するため、発症後30日以内の死亡例を除外したランドマーク解析を実施した。

 主な結果は以下のとおり。

・解析対象1,923例のうち、AMI群は1,550例、AAD群は373例であった。AMIの内訳はST上昇型心筋梗塞(STEMI)902例(58%)、非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)464例(30%)、心筋梗塞が疑われる心臓突然死184例(12%)であった。AADはStanford A型219例(59%)、B型154例(41%)であった。
・平均年齢はAMI群71.3歳、AAD群72.9歳であった。男性の割合はそれぞれ70.3%、51.7%であり、AMI群で高かった。
・来院時に心肺停止状態であった患者割合は、AMI群16.5%、AAD群27.6%であり、AAD患者で多かった。
・死亡の1、3、5年累積発生率は、AMI群が25.8%、30.7%、35.4%であったのに対し、AAD群では38.9%、44.8%、50.0%と高率であった。
・背景因子(年齢、性別)の調整後もAAD群はAMI群と比較して、死亡リスクが有意に高かった(調整ハザード比[aHR]:1.53、95%信頼区間[CI]:1.29~1.83、p<0.001)。
・心血管死亡の1、3、5年累積発生率は、AMI群が23.5%、25.5%、27.4%であったのに対し、AAD群では36.3%、38.0%、38.7%と高率であった。
・AAD群はAMI群と比較して、心血管死亡リスクも有意に高かった(aHR:1.41、95%CI:1.17~1.71、p<0.001)。
・発症後30日生存した患者を対象としたランドマーク解析でも、死亡率はAAD群がAMI群より高かった。ランドマーク解析における死亡の1、3、5年累積発生率は、AMI群で6.3%、12.4%、18.4%であったのに対し、AAD群では9.2%、17.9%、25.7%と高率であった(aHR:1.47、95%CI:1.12~1.93、p=0.006)。
・ランドマーク解析における心血管死亡の1、3、5年累積発生率は、AMI群が4.0%、6.5%、8.9%で、AAD群は5.7%、8.3%、9.2%であり、両群に差はみられなかった(aHR:1.02、95%CI:0.66~1.59、p=0.927)。

 本研究結果について、著者らは、滋賀県全域を対象とした集団ベース研究において、AAD患者ではAMI患者より5年死亡率および心血管死亡率が高かったが、発症後30日生存した患者では、長期的な心血管死亡率は両疾患で同程度であり、急性期を乗り越えられるか否かが、長期予後を大きく規定することが示唆された。これらの知見は、外科治療またはインターベンション治療を迅速に受けられる体制の重要性を示すものであるとまとめた。

(ケアネット 佐藤 亮)