日本における認知症診断、アイトラッキング式認知機能評価の有用性はどの程度か

提供元:ケアネット

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公開日:2025/11/10

 

 認知機能低下および認知症に対する効率的なスクリーニングツールは、多くの臨床医や患者に求められている。大阪大学の鷹見 洋一氏らはこれまで、アイトラッキング技術を用いた新規認知機能評価ツールの認知症スクリーニングにおける有用性について報告している。今回、アイトラッキング式認知機能評価(ETCA)アプリのタブレット版を開発し、プログラミング医療機器(SaMD)としての臨床的有用性を検証するための臨床試験を実施し、その結果を報告した。GeroScience誌オンライン版2025年10月20日号の報告。

 対象は、認知症患者および非認知症者。2020年12月〜2021年7月に参加者を募集した。参加者は、ETCAアプリを使用し、現在に最も広く用いられているスクリーニング検査であるミニメンタルステート検査(MMSE)も併せて実施した。主要アウトカムは、ETCAとMMSEのスコア間の相関とした。主要副次的アウトカムは、ETCAの実施時間、検査関連負担に関する質問票による評価、各サブスコア間の相関とした。認知症検出精度は、探索的に評価した。

 主な内容は以下のとおり。

・全解析対象者での解析結果から、両検査の合計スコア間に強い正の相関が認められた(r=0.831、95%信頼区間:0.743〜0.891、p<0.0001)。
・ETCAの実施時間中央値は254.0秒であり、参加者の70%超がMMSEと比較し、ETCAアプリによる検査関連負担が少ないまたは同程度であると回答した。
・すべてのサブスコアにおいて有意な相関が認められた。
・ETCAは、認知症患者の検出においてAUC 0.864を達成した。

 著者らは「ETCAアプリのタブレット版は、迅速な認知機能評価ツールであり、臨床的に有用であることが示された」とし、これらの結果に基づき、ETCAアプリは日本においてSaMDとして薬事承認されるに至った。

(鷹野 敦夫)