術後に1年間連続的に実施した血中循環腫瘍DNA(ctDNA)検査で陽性と判定された筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)患者において、術後療法としてのアテゾリズマブ投与はプラセボと比較して無病生存期間(DFS)および全生存期間(OS)を有意に改善した。英国・Barts Cancer InstituteのThomas Powles氏が、第III相IMvigor011試験の主要解析結果を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)で報告した。なお、本結果はNEJM誌オンライン版2025年10月20日号に同時掲載された。
・対象:ctDNA陽性(術後1年まで6週ごとにctDNA検査・12週ごとに画像検査を実施)のMIBC患者[膀胱全摘除術後6~24週以内、(y)pT2-4aN0M0または(y)pT0-4aN+M0、画像上の病変なし、ECOG PS 0~2、術前化学療法歴は許容]
・試験群(アテゾリズマブ群):アテゾリズマブ(1,680mg、4週ごと、最大1年まで) 167例
・対照群:プラセボ 83例
※ctDNA陰性患者は経過観察のみ実施 357例
・評価項目:
[主要評価項目]治験責任医師評価によるDFS
[重要な副次評価項目]OS
・無作為化からの観察期間中央値16.1ヵ月(データカットオフ:2025年6月15日)
主な結果は以下のとおり。
・ベースライン特性は年齢中央値がアテゾリズマブ群69歳vs.対照群67歳、PD-L1発現状態:IC 0/1(<5%)が64.7%vs.63.9%、術前化学療法歴ありが47.9%vs.39.8%、初回のctDNA検査で陽性となった症例が59.3%vs.59.0%であった。
・ベースライン特性をctDNA陰性例と比較すると、陽性例では≦T2が少なく(アテゾリズマブ群27.5%vs.対照群28.9%vs.ctDNA陰性例46.8%)、リンパ節転移陽性例が多い(57.5%vs.57.8%vs.20.2%)傾向がみられた。
・ctDNA陽性例における治験責任医師評価によるDFS中央値は、対照群(4.8ヵ月、95%信頼区間[CI]:4.1~8.3)と比較し、アテゾリズマブ群(9.9ヵ月、95%CI:7.2~12.7)で統計学的有意に改善した(ハザード比[HR]:0.64、95%CI:0.47~0.87、p=0.0047)。12ヵ月DFS率はアテゾリズマブ群44.7%vs.対照群30.0%、24ヵ月DFS率は28.0%vs.12.1%であった。
・ctDNA陽性例におけるOS中央値は、対照群(21.1ヵ月、95%CI:14.7~NE)と比較し、アテゾリズマブ群(32.8ヵ月、95%CI:27.7~NE)で統計学的有意に改善した(HR:0.59、95%CI:0.39~0.90、p=0.0131)。12ヵ月OS率はアテゾリズマブ群85.1%vs.対照群70.0%、24ヵ月OS率は62.8%vs.46.9%であった。
・ctDNA陽性となったタイミングによるサブグループ解析の結果、初回検査および以降の検査いずれの場合も、アテゾリズマブ群におけるDFSおよびOSのベネフィットが確認された。
・ctDNAクリアランス(初回検査でctDNA陽性となった症例のうち、3サイクル目の第1日あるいは5サイクル目の第1日にctDNA陰性となった症例)の割合は、アテゾリズマブ群25.1%vs.対照群14.5%であった。
・膀胱全摘除術後の観察期間中央値21.8ヵ月における、ctDNA陰性例の12ヵ月DFS率は95.4%、24ヵ月DFS率は88.4%であり、12ヵ月OS率は100%、24ヵ月OS率は97.1%であった。
・観察期間中に再発した患者は、アテゾリズマブ群63.5%vs.対照群78.3%で、51.5%vs.54.2%の患者が次治療を受けていた。治療法は化学療法36.5%vs.31.3%、免疫療法15.6%vs.31.3%、抗体薬物複合体19.2%vs.19.3%などであった。
・Grade3/4の治療関連有害事象(TRAE)はアテゾリズマブ群7.3%vs.対照群3.6%で発現し、TRAEによる死亡はアテゾリズマブ群で3例(1.8%)で発生した。アテゾリズマブ治療に関する新たな安全性上の懸念は認められていない。
Powles氏は今回の結果を受けて、連続的なctDNA検査により術後アテゾリズマブ療法によるベネフィットが得られる患者を特定でき、また、持続的にctDNA陰性を示した患者における不要な治療を避けることができるとしている。
(ケアネット 遊佐 なつみ)