ER+/HER2-進行乳がんへのimlunestrant、日本人サブグループ解析結果(EMBER-3)/日本乳癌学会

提供元:ケアネット

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公開日:2025/07/23

 

 アロマターゼ阻害薬単剤またはCDK4/6阻害薬との併用による治療中もしくは治療後に病勢進行が認められた、ESR1変異陽性のエストロゲン受容体(ER)陽性HER2陰性(ER+/HER2-)進行乳がん患者において、経口選択的ER分解薬(SERD)imlunestrant単剤療法が、標準内分泌療法と比較して無増悪生存期間(PFS)を有意に延長したことが第III相EMBER-3試験の結果として報告されている。今回、同試験の日本人サブグループ解析結果を、千葉県がんセンターの中村 力也氏が第33回日本乳癌学会学術総会で発表した。

・対象:アロマターゼ阻害薬±CDK4/6阻害薬による治療中もしくは治療後(12ヵ月以内)に病勢進行が認められたER+/HER2-進行乳がん患者
・試験群(imlunestrant群):imlunestrant単剤療法(1日1回400mg)
・試験群(imlunestrant+アベマシクリブ群):imlunestrant(1日1回400mg)+アベマシクリブ(1日2回150mg)
・対照群(標準内分泌療法群):治験医師がエキセメスタンまたはフルベストラントから選択
・評価項目:
[主要評価項目]治験医師評価によるPFS(ESR1変異陽性患者および全患者におけるimlunestrant群vs.標準内分泌療法群、全患者におけるimlunestrant+アベマシクリブ群vs.imlunestrant群)
[重要な副次評価項目]全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、安全性など
・データカットオフ:2024年6月24日

 主な結果は以下のとおり。

・79例が1:1:1の割合で無作為化され、imlunestrant群に31例、imlunestrant+アベマシクリブ群に24例、標準内分泌療法群に24例が割り付けられた。
・ベースラインの患者特性は3群でバランスがとれており、おおむねグローバルの全体集団と同様であったが、ESR1変異陽性患者の割合は若干低かった(imlunestrant群35%vs.imlunestrant+アベマシクリブ群17%vs.標準内分泌療法群25%)。また、CDK4/6阻害薬による治療歴を有する患者がグローバルでは6割程度だったのに対し、日本人集団では19%vs.29%vs.17%と少ない傾向であった。
ESR1変異陽性患者における治験医師評価によるPFS中央値は、imlunestrant群11.1ヵ月vs.標準内分泌療法群7.0ヵ月(ハザード比[HR]:0.26、95%信頼区間[CI]:0.05~1.31)であった。
・全患者における治験医師評価によるPFS中央値は、imlunestrant群11.1ヵ月vs.標準内分泌療法群7.6ヵ月(HR:1.22、95%CI:0.59~2.50)、imlunestrant+アベマシクリブ群11.2ヵ月vs.imlunestrant群11.1ヵ月(HR:0.75、95%CI:0.34~1.66)であった。
・測定可能病変を有する患者におけるORRは、全患者ではimlunestrant群13%(3/23例)vs.標準内分泌療法群5%(1/19例)、imlunestrant+アベマシクリブ群17%(3/18例)vs.imlunestrant群15%(3/20例)、ESR1変異陽性患者ではimlunestrant群29%(2/7例)vs.標準内分泌療法群0%(NA)であった。
・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)の発現率は、imlunestrant群10%vs.imlunestrant+アベマシクリブ群61%vs.標準内分泌療法群13%であり、グローバルと比較してimlunestrant+アベマシクリブ群での発現が多い傾向がみられた。同群における有害事象による減量・治療中止も日本人集団で多く(それぞれ61%、17%)、主に下痢やALT上昇によるものであった。
・Grade3以上のTRAEでimlunestrant+アベマシクリブ群で多くみられたのは、ALT上昇(22%)、皮疹、白血球減少、好中球減少(いずれも13%)、下痢、AST上昇(いずれも9%)などであった。

 中村氏は、ESR1変異陽性のER+/HER2-進行乳がんに対するimlunestrant単剤療法はグローバルと同様に日本人集団でもPFSの改善が確認されたとし、良好な安全性プロファイルを示したとまとめている。なお、OS解析は進行中である。ESR1変異の有無を問わない全患者に対するimlunestrant単剤療法と比較したimlunestrant+アベマシクリブ併用療法についても、グローバルと同様にPFSの数値的な改善がみられたとし、安全性はこれまでのアベマシクリブ+内分泌療法併用でみられたプロファイルと同様で、imlunestrant併用による追加の毒性は示されていないとしている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)