顕微鏡的大腸炎は、高齢者における慢性下痢の主な原因の1つであり、これまでプロトンポンプ阻害薬(PPI)や非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、スタチンなどの一般的に用いられる薬剤との関連が指摘されてきた。しかし、スウェーデンで実施された全国調査の結果、これらの薬剤のほとんどは顕微鏡的大腸炎のリスクを増加させない可能性が示唆された。本研究は、Hamed Khalili氏(米国・マサチューセッツ総合病院)らの研究グループによって実施され、Annals of Internal Medicine誌オンライン版2025年7月1日号で報告された。
研究グループは、スウェーデンの65歳以上の住民280万例超の処方、診断、生検データなどを用いて本研究を実施した。本研究ではtarget trial emulationのデザインを用いて、顕微鏡的大腸炎との関連が指摘されているPPI、NSAIDs、SSRI、スタチン、ACE阻害薬、ARBの各使用群と非使用または代替薬使用群を比較した。主要評価項目は12ヵ月、24ヵ月時点における顕微鏡的大腸炎の累積発症率とした。
主な結果は以下のとおり。
・すべての群において、12ヵ月、24ヵ月時点の顕微鏡的大腸炎の累積発症率は0.5%未満であった。
・PPI(vs.非使用)、NSAIDs(vs.非使用)、スタチン(vs.非使用)、ACE阻害薬(vs.カルシウム拮抗薬)、ARB(vs.カルシウム拮抗薬)の使用は、顕微鏡的大腸炎の発症リスクを上昇させなかった。
・12ヵ月時点における顕微鏡的大腸炎の発症リスクは、SSRI群がミルタザピン群と比較してわずかに高かった(リスク差:0.04%、95%信頼区間:0.03~0.05)。ただし、SSRI群は大腸内視鏡検査の施行率が高く、サーベイランスバイアスの可能性が示唆された。
本研究結果について、著者らは「顕微鏡的大腸炎の引き金となることが疑われてきた薬剤の大半について、因果関係を示すエビデンスは得られなかった」と述べている。
(ケアネット 佐藤 亮)