統合失調症患者の3人に1人は、副作用や限られた有効性のため、従来の抗精神病薬による治療反応が不十分である。ムスカリン受容体とニコチン受容体を標的とし、統合失調症の病態生理に関連するコリン作動薬の機能不全を活用した、新たな治療法が注目されている。インド・All India Institute of Medical SciencesのAmiya Shaju氏らは、統合失調症に対するコリン作動薬の有効性および安全性を評価するため、ランダム化比較試験(RCT)のメタ解析を実施した。The British Journal of Psychiatry誌オンライン版2025年5月2日号の報告。
MEDLINE/PubMed、Embase、Scopus、Cochraneのデータベースおよびレジストリから得られた臨床試験データをレビュー担当者が抽出した。研究の質は、バイアスリスクツールとランダム効果モデルによるエフェクトサイズの推定により評価した。PRISMAガイドラインに従い、必要に応じてサブグループ解析、メタ回帰分析、感度分析を行った。
主な結果は以下のとおり。
・30件のRCT(3,128例)において、コリン作動薬の単剤療法または併用療法の検討が行われていた。
・コリン作動薬は、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)の総スコアに有意な改善は認められなかったが(標準化平均差[SMD]:-0.38、95%信頼区間[CI]:-0.93~0.18、エビデンスの確実性:中)、陰性症状スコアの改善が認められた(SMD:-0.42、95%CI:-0.59~-0.25、エビデンスの確実性:中)。
・ムスカリン作動薬は、PANSSの総スコア(SMD:-0.57、95%CI:-0.72~-0.42)、陽性症状スコア(SMD:-0.58、95%CI:-0.73~-0.43)、陰性症状スコア(SMD:-0.40、95%CI:-0.59~-0.21)、臨床全般印象度-重症度(CGI-S)スコア(SMD:-0.48、95%CI:-0.65~-0.31)の改善を示した。
・ニコチン作動薬は、PANSSの陰性症状スコア(SMD:-0.28、95%CI:-0.47~-0.09)およびCGI-Sスコア(SMD:-1.31、95%CI:-2.38~-0.24)の改善に寄与した。
・有害事象の発生は、実薬群でより高かった(オッズ比:1.21、95%CI:0.94~1.56)。
・多くの研究はバイアスリスクが低く、エビデンスの質は非常に低~中の範囲であった。
著者らは「コリン作動薬は陰性症状を改善し、ムスカリン作動薬は症状全体および重症度の改善に有効であり、安全性においてもプラセボと比較し、有害事象の大きな差は認められなかった」と結論付けている。
(鷹野 敦夫)