HR+/HER2-転移乳がんへのSG、Trop-2遺伝子発現別の効果とUGT1A1遺伝子多型での安全性(TROPiCS-02)/日本臨床腫瘍学会

提供元:ケアネット

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公開日:2024/02/28

 

 複数の治療歴のあるHR+/HER2-転移乳がん患者を対象に、sacituzumab govitecan(SG)を医師選択治療(TPC)と比較した第III相TROPiCS-02試験において、探索的解析の最終解析(追跡期間12.8ヵ月)における無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)の結果がASCO2023で報告されている。今回、それに加えて、探索的解析のTrop-2遺伝子(TACSTD2)発現の有無別のPFSとOS、さらにUGT1A1遺伝子多型における安全性について、米国・UCSF Helen Diller Family Comprehensive Cancer CenterのHope S. Rugo氏が第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)で発表した。

 UGT1A1遺伝子多型における安全性については、UGT1A1遺伝子多型がイリノテカン、パゾパニブ、スニチニブ、ニロチニブなどの抗がん剤と同様に、SGにおいてもグルクロン酸抱合の減少により好中球減少症、発熱性好中球減少症、貧血、下痢などの有害事象との関連が報告されていることから検討された。

<TROPiCS-02試験の概要>
・対象:転移または局所再発した切除不能のHR+/HER2-乳がんで、転移後の内分泌療法またはタキサンまたはCDK4/6阻害薬による治療歴が1ライン以上、化学療法による治療歴が2~4ラインの患者 543例
・試験群:SG(1、8日目に10mg/kg、21日ごと)を病勢進行または許容できない毒性が認められるまで静注 272例
・対照群:TPC(カペシタビン、エリブリン、ビノレルビン、ゲムシタビンから選択)271例
・評価項目:
[主要評価項目]盲検下独立中央評価委員会によるPFS
[副次評価項目]OS、奏効率(ORR)、奏効持続期間(DOR)、臨床的有用率(CBR)、患者報告アウトカム(PRO)、安全性
[探索的解析]最終解析におけるPFS・OS、TACSTD2発現の有無別のPFS・OS・ORR・CBR・DOR、UGT1A1遺伝子多型における安全性

 主な結果は以下のとおり。

・追跡期間中央値12.8ヵ月の最終解析におけるPFS中央値は、SGが5.5ヵ月、TPCが4.0ヵ月と引き続き改善を示した(ハザード比[HR]:0.65、95%信頼区間[CI]:0.53~0.81、名目上のp=0.0001)。
・OS中央値もSGが14.5ヵ月、TPCが11.2ヵ月と引き続き改善を示した(HR:0.79、95%CI:0.65~0.95、名目上のp=0.0133)。事前規定されたサブグループ解析においても、おおむねSGでベネフィットがみられた。
TACSTD2発現別の効果について、中央値(10.5TPM)以上を高発現、中央値未満を低発現として検討したところ、TACSTD2発現にかかわらず、PFS中央値はSGがTPCより改善した(低発現:5.6ヵ月vs.2.8ヵ月、高発現:7.3ヵ月vs.5.6ヵ月)。また、OS中央値も同様に改善がみられた(低発現:14.2ヵ月vs.10.6ヵ月、高発現:14.4ヵ月vs.11.8ヵ月)。
・SG群のうち、UGT1A1 *28/*28の患者は、*1/*28の患者または*1/*1(野生型)の患者に比べ、Grade3以上の試験治療下における有害事象(TEAE)の発現率が高く、好中球減少症(順に64%、57%、45%)、下痢(順に24%、13%、6%)であった。
・TEAEはUGT1A1 *28/*28の患者は野生型の患者より好中球減少症と下痢の発現までの期間が短く、*1/*28の患者は野生型や*28/*28の患者より貧血の期間が長かった。

 Rugo氏は「SGはTrop-2遺伝子の発現にかかわらず、PFS、OSを改善し、UGT1A1の遺伝子多型に関係なく、管理可能な安全性プロファイルを有していた」とまとめた。

(ケアネット 金沢 浩子)

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