POTENT試験の探索的解析結果、monarchEの適格基準でも検討

第III相POTENT試験では、エストロゲン受容体(ER)陽性HER2陰性乳がんにおける術後ホルモン療法へのS-1の上乗せ効果が示された。今回、POTENT試験のリスク分類別の探索的解析結果を京都大学の高田 正泰氏らがBreast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2023年9月7日号に報告した。
POTENT試験でのS-1の上乗せ効果はとくに中リスク群で顕著だった
POTENT試験の対象は、StageI~IIIBのER陽性HER2陰性乳がん患者。S-1併用群(S-1[1日2回経口、3週ごと]+標準的ホルモン療法)と標準的ホルモン療法群に無作為に割り付けられた。再発リスク(複合リスク)は、年齢、腫瘍の大きさ、リンパ節転移の有無、グレード、ER発現、Ki-67発現レベルを組み込んだCoxモデルで決定した。複合リスクスコアにより低リスク群(下位四分位数以下、677例)、中リスク群(四分位範囲、767例)、高リスク群(上位四分位数超、453例)に分け、各群におけるS-1の上乗せ効果を評価した。また、monarchE試験の適格基準を満たした患者におけるS-1の上乗せ効果も推定された。
POTENT試験をリスク分類別に解析した主な結果は以下のとおり。
・内分泌療法にS-1を追加することで、無浸潤疾患生存(iDFS)イベントは、中リスク群では49%(ハザード比[HR]:0.51、95%信頼区間[CI]:0.33~0.78)、高リスク群では29%(HR:0.71、95%CI:0.49~1.02)減少した。
・低リスク群では、S-1の上乗せ効果は確認できなかった。
・monarchEコホート1基準のうちリンパ節転移1~3個の患者(290例)において、S-1上乗せはiDFSの改善を示した(HR:0.47、95%CI:0.29~0.74)。
著者らはS-1の上乗せ効果はとくに中リスク群で顕著だったとし、最適な使用法を探るため、さらなる研究が必要とまとめている。
(ケアネット 遊佐 なつみ)
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