抗うつ薬、非定型抗精神病薬、ベンゾジアゼピン使用の世界的な傾向~64ヵ国横断的分析

米国・ピッツバーグ大学のOrges Alabaku氏らは、高所得国、中所得国、低所得国における抗うつ薬、非定型抗精神病薬、ベンゾジアゼピン(BZD)使用の世界的な傾向を調査した。その結果、高所得国は中・低所得国と比較し向精神薬の治療利用率が高いことを報告した。PLOS ONE誌2023年4月26日号の報告。
IQVIAのMIDASデータベースを用いて、2014年7月~2019年12月までの国別横断的時系列分析を行った。人口で調整された使用率は、人口規模ごとに、薬剤クラス別の薬剤標準単位数で算出した。高所得国、中所得国、低所得国の分類には、国連の「2020年世界経済状況・予測」を用いた。薬剤クラス別の使用率の変化は、2014年7月~2019年7月の期間で算出した。経済状況を予測変数として用い、各国の薬剤クラス別の使用率について、ベースラインからの変化の予測可能性を評価するため線形回帰分析を実施した。
主な結果は以下のとおり。
・分析には64ヵ国(高所得国:33ヵ国、中所得国:6ヵ国、低所得国:25ヵ国)を含めた。
・ベースラインにおける人口規模ごとの薬剤クラス別平均使用率(標準単位)は、以下のとおりであった。
【抗うつ薬】高所得国:2.15、中所得国:0.35、低所得国:0.38
【抗精神病薬】高所得国:0.69、中所得国:0.15、低所得国:0.13
【BZD】高所得国:1.66、中所得国:1.46、低所得国:0.33
・経済状況でみた薬剤クラス別の使用の平均変化率は、以下のとおりであった。
【抗うつ薬】高所得国:20%、中所得国:69%、低所得国:42%
【抗精神病薬】高所得国:27%、中所得国:78%、低所得国:69%
【BZD】高所得国:-13%、中所得国:4%、低所得国:-5%
・経済状況が向上するほど、抗うつ薬(p=0.916)、非定型抗精神病薬(p=0.23)、BZD(p=0.027)使用の変化率が減少することが示唆された。
・同様に、抗うつ薬と非定型抗精神病薬のベースラインにおける使用率が高いほど、変化率の低下は小さかった(各々、p=0.026、p=0.054)。
・BZDでは、ベースラインの使用率が高いほど、使用率の変化が大きかった(p=0.038)。
(鷹野 敦夫)
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