m-FOLFOXIRI+セツキシマブ、RAS/BRAF野生型+左側原発大腸がんに有用/日本臨床腫瘍学会

提供元:ケアネット

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公開日:2023/03/31

 

 DEEPER試験は未治療の切除不能転移RAS野生型大腸がんの患者を対象に、m-FOLFOXIRI+セツキシマブの有効性と安全性をm-FOLFOXIRI+ベバシズマブと比較して検証することを目的とした無作為化第II相試験である。すでにセツキシマブ群が主要評価項目であるDpR(最大腫瘍縮小率)を有意に改善したことが報告されている。 2023年3月16~18日に開催された第20回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2023)のPresidential Session 4(消化器)で、本試験における最終登録から3年後の解析結果を、辻 晃仁氏(香川大学 医学部臨床腫瘍学講座)が発表した。

 DEEPER試験は2015年7月〜2019年6月に359例の患者が登録され、179例がセツキシマブ群(C群)、180例がベバシズマブ群(B群)に割り付けられた。対象者はmFOLFOXIRI(5-FU 2,400mg/m2+ロイコボリン 200mg/m2+イリノテカン 150mg/m2+オキサリプラチン 85mg/m2)に加え、セツキシマブ:初回400mg/m2で以降は毎週250mg/m2もしくはベバシズマブ:隔週で5mg/kgを投与された。

 評価対象患者は321例(年齢中央値65歳、PS0~1:90.5%、原発:左84%/右16%)、C群159例、B群162例であった。主要評価項目のDpRの中央値はC群で57.4%(範囲:-15.0~100%)に対して、B群で46.0%(-0.6〜100%)であり、C群が有意に高かった(p=0.0010)。原発腫瘍の部位別では、左側ではC群60.3% vs.B群46.1%(p=0.0007)、右側では50.0% vs.41.2%(p=0.4663)であり、左側でとくにC群のDpRが高い傾向が示された。しかし、副次評価項目評価項目であるETS(Early Tumor Shrinkage)、ORR、R0切除率においては、両レジメン間で有意差はみられなかった。

 今回は新たに生存に関する結果および追加で調査を行ったBRAF変異の結果などについて発表された。

 主な結果は以下のとおり。

・321例中167例でBRAFに関する情報が得られ、セツキシマブの効果が期待できないとされるBRAF V600E変異は14例で認められた。
RAS/BRAF野生型が判明した症例は153例、内訳はC群72例、B群81例であった。この症例群をRAS野生型、RAS野生型+左側原発、RAS/BRAF野生型、RAS/BRAF野生型+左側原発と対象を絞り込むにつれ、有効性が高くなった。最も効果的であったRAS/BRAF野生型+左側原発131例では、DpRはC群63.6% vs.B群47.8%、p=0.0003、R0切除率は32.8% vs.20.0%、p=0.096であった。
・さらに注目される生存に関する解析ではPFS、OSともにC群がB群より統計学的に有意に良好な傾向であった(PFS中央値:15.3ヵ月 vs.11.7ヵ月、ハザード比(HR):0.68、p=0.036、OS中央値:53.6ヵ月 vs.40.2ヵ月、HR:0.54、p=0.02)。
・毒性は許容範囲内であり、Grade3以上の特徴的な有害事象としてはC群ではざ瘡(13.1%)、低マグネシウム血症(4%)、B群では高血圧(33.5%)、蛋白尿(3.4%)などであった。

 辻氏は「m-FOLFOXIRI+セツキシマブは、RAS/BRAF野生型かつ左側原発の大腸がんにおける薬物療法の魅力的なオプションとなり得る」とした。また、質疑応答中にDpRを主要評価項目とした理由と聞かれ、「当初はOSを検討していたが、早期に結果を得られ、かつ生存期間の代用マーカーとして注目されていたDpRに着目した。本試験の結果も両者の関連を示すものだ」と説明した。

(ケアネット 杉崎 真名)