アナフィラキシーなどの治療を非専門医向けに/アレルギー総合ガイドライン改訂

多くの診療科に関係するアレルギー疾患。2022年10月に刊行された『アレルギー総合ガイドライン2022』は、2019年版の全面改訂版だ。各診療ガイドラインのエッセンスを精選して幅広いアレルギー診療の基本をまとめ、前版より大幅なコンパクト化を実現した。編纂作業にあたった日本アレルギー学会・アレルギー疾患ガイドライン委員会委員長の足立 雄一氏(富山大学 小児科学講座 教授)に改訂のポイントを聞いた。
重複を削る編集作業で、コンパクト化を徹底
――『アレルギー総合ガイドライン』は、各分野のガイドラインや診療の手引きの短縮版を合本してつくられています。これまではそのまま合本していたため、どうしても重複箇所が多くなり、2019年版は700ページを超えました。読者から「読みにくい」「重くて持ち運べない」といった声が出ており、今回はガイドライン委員が全ページに目を通して重複を削る作業をした結果、300ページ近いコンパクト化を図ることができました。――2022年版の編集方針は「総合的に、かつ実用的に」です。章立てを変更し、すべてのアレルギーに共通する「アレルゲン検査」「アレルゲン免疫療法」「アナフィラキシー」の項目に最初の3章を割き、その後に個別疾患の解説が続く、というつくりにしました。
――さらに前版の「重症薬疹の診断基準」の章を拡充して「薬物アレルギー」の章を新設しました。ここは前版まで皮膚科の医師だけが執筆していましたが、新たに内科と小児科の医師も執筆に加わり、臨床の場で実際に診ることの多い軽症・中等症の対応にもページを割いています。この1冊でアレルギー全般の診断、治療、管理について最低限知っておくべき知識を得られ、疫学的知識や病態への理解をさらに深めたい方はそれぞれ原本となるガイドラインにあたってもらう、という方針で作成しました。
非専門医が主要な想定読者だが、専門医にも有用
――読者として想定している層は2つです。メインは日常診療を行う非専門医です。国民の2人に1人がアレルギー性疾患を持つとされ、日常診療を行う医師は誰もがアレルギー診療を避けては通れない状況です。そうした非専門医に向け、アレルギー全般の現在の標準治療がわかる1冊としました。コンパクトにまとまっていることで利便性も増したと思います。さらに、今版からは各章の章末に「専門医への紹介のポイント」という文章を加えており、紹介に迷ったときの指針になると思います。――もう1つの読者層は、アレルギー専門医です。たとえば、私は小児アレルギーが専門ですが、他のアレルギー疾患もある程度まで診られたほうがよいと考えています。というのも、アレルギー疾患は身体の複数の部位に症状が出るケースが多く、たとえば成人喘息の患者さんであれば呼吸器内科にかかり、アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎を合併していれば、それぞれ皮膚科と耳鼻科を受診するというケースは少なくないと思います。それぞれが重症であればしかたないでしょうが、いずれかが軽症であれば重症の科の医師が主治医となって他の症状も診ることで患者さんの負担を減らすことができます。本書は、こうした「総合アレルギー専門医(Total Allergist)」の指針ともなる1冊です。
――今回の改訂では、これまでの合本の形式から1冊の本へ編集し直す、という大きな方針転換をしました。図表や画像、レイアウト、紙の質まで細かく見直しています。これから集まる読者の感想を聞き、また3年後の改訂につなげたいと思っています。
『アレルギー総合ガイドライン2022』
定価:5,060円(税込)判型:B5判
頁数:419頁
発行:2022年10月
作成:一般社団法人日本アレルギー学会
発行:協和企画
https://www.carenet.com/store/book/cg003919_index.html
(ケアネット 杉崎 真名)
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