全身性ALアミロイドーシスにダラキューロ承認/ヤンセンファーマ

提供元:ケアネット

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公開日:2021/09/17

 

 2021年8月、ヤンセンファーマは抗CD38抗体「ダラキューロ配合皮下注(一般名:ダラツムマブ(遺伝子組換え)・ボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)、以下ダラキューロ」について、全身性ALアミロイドーシス治療における承認を取得したことを発表した。今回の承認は、未治療患者を対象に、ボルテゾミブ+シクロホスファミド+デキサメタゾン(CBD)療法に対するダラキューロの上乗せ効果を評価した第III相試験ANDROMEDAの結果に基づいたもの。同社は9月2日にメディアセミナーを実施し、日本赤十字社医療センター骨髄腫アミロイドーシスセンターの鈴木 憲史氏と石田 禎夫氏が、病態の特徴や新薬による治療の展望について講演を行った。

 最初に鈴木氏が全身性ALアミロイドーシスの疾患の病態について講演を行った。ALアミロイドーシスは血中にアミロイドと呼ばれる異常タンパク質が発現し、全身のさまざまな臓器に沈着して機能障害を起こす病気の総称で、死因は心臓死が多くを占める。日本では年間530人ほど、人口100万人あたり4.2人が罹患し、国内の総患者数は3,000人程度とされる指定難病である。

 鈴木氏は「進行すると予後は悪く、透析が必要となる患者も多い。早期診断、早期治療が非常に重要だが、多くの医師は一生に一人の患者を診るかどうかで見逃されがち。確定診断までに診察した医師の数が5名以上の患者が30%いるなど、診断が遅れて悪化するケースが多い」と説明した。

 さらに新規罹患者数について「指定難病の登録数は530人ほどだが、診断されずにいる人や診断されないまま亡くなる人もいると思われ、実際は年間800人ほどではないか」とした。「初診の主訴はむくみや舌肥大であることが多く、整形外科、循環器内科、消化器内科、腎臓内科、そして一般内科医にこの疾患を知ってもらい、早期発見につなげたい」とし、下記のような原因不明の症状がある患者には、血清フリーライトチェーンの検査を行って欲しい、と述べた。

【診断時の主な臨床症状】
心臓/うっ血性心不全、不整脈
腎臓/尿蛋白、ネフローゼ症候群
肝臓/肝肥大、肝不全
消化管/難治性下痢、下血消化管穿孔イレウス
神経/低血圧、神経障害
その他/舌肥大、眼周囲の内出血

【診断確定には】
・骨髄で単クローン形式細胞の証明、腹壁脂肪組織と骨髄生検でのアミロイド検出、血清フリーライトチェーン(FLC)のκ/λ比で確定

 続いて石田氏が、「従来の全身性ALアミロイドーシスの治療はメルファラン+デキサメタゾンまたは自家末梢血幹細胞移植で、移植不適の患者にできることは限られていた。ANDROMEDA試験の結果では、心アミロイドーシスや高齢者など予後不良が予測される群でも高い有効性が報告されており、さらに自家末梢血幹細胞移植における完全奏効(CR)+部分奏効(VGPR)率は70%前後なのに対し、ダラキューロ上乗せ群は79%と同等以上で、今後は日本を含めた世界のALアミロイドーシスの移植不適患者に対する標準療法はCBD+ダラキューロになり、移植適応患者にも導入療法として検討されるだろう」とまとめた。

(ケアネット 杉崎 真名)

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