新型コロナウイルス、皮膚表面での生存期間はインフルの5倍

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を巡っては、空気中や物質表面上での生存期間がこれまでの研究で明らかになっているが、ヒトの皮膚表面における生存期間は不明であった。今回、京都府立医科大学の廣瀬 亮平氏ら研究チームが、法医解剖献体から採取した皮膚上におけるウイルスの安定性を検証したところ、SARS-CoV-2は皮膚表面上で9時間程度生存し、1.8時間程度で不活化されるインフルエンザウイルスに比べ大幅に生存時間が長いことがわかった。本研究をまとめた論文は、Clinical Infectious Diseases誌2020年10月3日号に掲載された。
本研究では、十分に解明されていないSARS-CoV-2の危険性に鑑み、生体皮膚の代替として法医解剖献体から採取した皮膚を用いた病原体安定性評価モデルを構築。モデルの再現性を確認するため、比較的危険性の低いインフルエンザA型ウイルス(IAV:PR8株)を被験者の皮膚と皮膚モデルそれぞれの表面上において、安定性を評価・比較したところ、皮膚上のIAVはいずれも60分程度で完全に不活化され、各経過時間におけるモデル皮膚表面上で生存するウイルス量は、被験者皮膚上で生存するウイルス量とおおむね一致していた。
この再現性を基に、SARS-CoV-2の安定性を皮膚モデルで検証したところ、SARS-CoV-2の生存期間はIAVよりも有意に長かった(9.04時間、95%信頼区間[CI]:7.96~10.2時間vs. 1.82時間、95%CI:1.65~2.00時間)。また、本研究では皮膚上のSARS-CoV-2とIAVに対する80%エタノールの消毒効果についても検証。その結果、15秒間のエタノール暴露によって、皮膚上のいずれのウイルスも完全に不活化することが確認された。
著者らは、本研究によりヒト皮膚上でインフルエンザウイルスに比べ大幅に生存時間が長いというSARS-CoV-2の特性が明らかになったと同時に、エタノール消毒薬を使用した手指衛生は、本来9時間程度続くSARS-CoV-2の接触伝播のリスクを速やかに低下させることが可能で、感染制御上きわめて効果的であることが示されたと述べている。
(ケアネット 鄭 優子)
関連記事

新型コロナ、エアロゾルで3時間生存可能/NEJM
医療一般(2020/03/24)

新型コロナ、病棟の床や靴底、患者から4mの空気からも検出
医療一般(2020/04/20)

新型コロナ、マスク着用で手指経由の感染も防げる?
医療一般(2020/09/10)
[ 最新ニュース ]

ブタ心臓のヒトへの異種移植手術、初期の経過は良好/NEJM(2022/07/06)

gBRCA変異陽性HER2-早期乳がんへの術後オラパリブ、日本人解析結果(OlympiA)/日本乳癌学会(2022/07/06)

日本人高齢者の身体活動強度と認知症リスク(2022/07/06)

乳がん術後放射線治療の皮膚障害予防に、カテキン剤塗布が有望(2022/07/06)

短期間のテストステロン補充療法は心血管イベントを増やさない(2022/07/06)

新型コロナ感染リスクに影響を及ぼす意外な因子とは(2022/07/06)

ビーガン食は他の食事療法より減量効果が大きい(2022/07/06)

米FDAが好酸球性食道炎の初の治療薬を承認(2022/07/06)
[ あわせて読みたい ]
「手伝うよ」、開業時の家族サポートにありがちなワナ【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第13回(2021/03/08)
あなたに決めたけど破談もアリ!? 基本合意契約は「結納」だ【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第12回(2021/02/22)
Dr.安部の皮膚科クイズ 上級編(2021/02/10)
優秀だけど給与高く圧強め…、そのスタッフ雇用継続すべき?【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第11回(2021/02/08)
希少疾病・難治性疾患特集 2021(2021/02/01)
クローズアップ!精神神経 7疾患(2021/01/26)
診療所の後継者探し、自分だけで「質」と「量」確保できますか?【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第10回(2021/01/25)
開業or離婚!?人生の分かれ道は夫婦の分かれ道【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第9回(2021/01/11)
Dr.林の笑劇的救急問答16<上巻> 肺炎編(2021/01/10)
開業はしてみたものの、スタッフとの距離が縮まらない…【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第8回(2020/12/25)