潰瘍性大腸炎の炎症の程度を便で診断

提供元:ケアネット

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公開日:2019/07/12

 

 2019年6月26日、アルフレッサ ファーマ株式会社は、体外診断用医薬品として潰瘍性大腸炎(以下「UC」と略す)の病態把握の補助に使用されるカルプロテクチンキット「ネスコートCpオート」が、6月5日に製造販売承認を取得したことを機に、都内で「潰瘍性大腸炎の治療継続における課題とは」をテーマにプレスセミナーを開催した。

潰瘍性大腸炎患者に有用な診断キット

 セミナーは、日比 紀文氏(北里大学北里研究所病院 炎症性腸疾患先進治療[IBD]センター長)の司会により進行し、同氏は「潰瘍性大腸炎は全世界で500万人の患者が推定され、わが国はアメリカについで患者数が多い国である。潰瘍性大腸炎は現在も原因不明の疾患であり、主な症状は、持続反復する下痢、血便、頻回のトイレなどがあり、活動期と寛解期を繰り返すのが特徴。治療では、5SAS製剤、JAK阻害薬などが使用されている。潰瘍性大腸炎の適切な治療では、病態の正確な把握が必要だが内視鏡検査が広く行われている。しかし、内視鏡検査は侵襲性が高く、患者負担も大きいため、非侵襲性の検査が長らく待たれていた。今回製造販売承認されたネスコートCpオートであれば10分で測定ができ、外来でも有用だと期待しているし、患者にも身体・経済面でメリットがある」と潰瘍性大腸炎の疾患概要と本診断キット開発の意義を説明した。

潰瘍性大腸炎治療の要は適切なモニタリング

 つぎに、講演として「潰瘍性大腸炎診療~便中カルプロテクチン測定の展望と課題~」をテーマに、久松 理一氏(杏林大学医学部 第三内科学教室 消化器内科 教授)がレクチャーを行った。

 久松氏は、はじめに潰瘍性大腸炎の病態、症状を詳説し、とくに症状について、直腸に炎症があると残便感が消えず、絶えず下痢や腹痛におびやかされる状態になること、10代後半の若年から発症し、進学や就職など大切なライフイベントと重なることもあり、潰瘍性大腸炎は患者の生活の質や活動領域を著しく悪化させることを説明した。

 治療では、患者の将来を見据え、大腸全摘の回避と大腸がんへのリスクを軽減する必要がある。先述の治療薬を使用して再燃する活動期の寛解導入療法と寛解期の寛解維持療法が行われる。そして、治療で重要なのが、適切なモニタリングであり、内視鏡検査が病勢評価のゴールドスタンダードとして使用されている。

 しかし、内視鏡検査は、さまざまな患者負担があり、安全かつ簡易に内視鏡と相関するバイオマーカーの開発が望まれてきたと開発までの経緯を説明した。

潰瘍性大腸炎の診断が外来の待ち時間でわかる

 こうした要望により開発されたのが「ネスコートCpオート」であり、これは便中のカルプロテクチンを測定し、検出された濃度により活動期と寛解期を把握するものである。カルプロテクチンは、主に好中球から分泌されるカルシウム結合タンパクで、腸内に炎症が起こると、腸壁から浸潤した白球血とともに糞便に入り体外に排出される。便中のカルプロテクチンは室温で5~7日程度安定し、その濃度と内視鏡的活動性は高い相関を示すという。検査は、患者より採取した便を検査することで、10分でカルプロテクチン濃度が測定できる。とくに便中のカルプロテクチン濃度は臨床症状が出現する前から上昇することから、再燃時の事前予測にも活用できる可能性もある。また、欧米ではカルプロテクチン測定は、すでにIBD(炎症性腸疾患)の診断・活動性評価に使用されているという。

 今後の展望として、同氏は「外来の待ち時間で測定が完了し、医療側も新しい機器をそろえる必要のないこの診断キットは、軽症の潰瘍性大腸炎患者のモニタリングとして内視鏡検査を減らすことができる。主治医は患者と検査結果を見ながら治療方針を決めていくことができるようになる」と期待を寄せ、レクチャーを終えた。

 なお、本製品は、現在保険申請の準備中である。

(ケアネット 稲川 進)