認知症リスクへの糖尿病・高血圧・脂質異常症の影響

インスリン抵抗性に起因する高血圧症や脂質異常症の患者と、糖尿病ではない高血圧症や脂質異常症の患者では、認知症リスクが異なる可能性がある。今回、台北医学大学のYen-Chun Fan氏らによる全国的な集団コホート研究から、糖尿病の有無により高血圧症や脂質異常症による認知症リスクの増加に差があることがわかった。著者らは、「糖尿病発症に続く高血圧症や脂質異常症の発症は糖尿病発症の2次的なものでインスリン抵抗性を介在する可能性があり、認知症リスクをさらに高めることはない」と考察し、「糖尿病自体(高血糖の全身的な影響)が認知症リスク増加の主な原因かもしれない」としている。Alzheimer's research & therapy誌2017年2月6日号に掲載。
著者らは、台湾の国民健康保険研究データベースから、後ろ向きコホート研究を実施した。糖尿病コホートは、2000~02年に新たに糖尿病の診断を受けた1万316人を登録し、非糖尿病コホートは、同時期に糖尿病ではなかった4万1,264人を無作為に選択した(年齢および性別が一致した人を1:4の比率で登録)。両コホートをそれぞれ、高血圧症または脂質異常症の有無により4群に分けた。
主な結果は以下のとおり。
・20~99歳の5万1,580人が登録された。
・糖尿病コホートは非糖尿病コホートに比べて認知症リスクが高かった(調整ハザード比[HR]:1.47、95%CI:1.30~1.67、p<0.001)。
・糖尿病コホートでは、高血圧症と脂質異常症の両方を有する群は、どちらもない群と比較して、認知症リスクの増加は有意ではなかった(p=0.529)。高血圧症のみ(p=0.341)または脂質異常症のみ(p=0.189)の群でも同様の結果がみられた。
・非糖尿病コホートでは、高血圧症と脂質異常症の両方を有する群は、どちらもない群と比べて認知症リスクが高く(調整HR:1.33、95%CI:1.09~1.63、p=0.006)、高血圧症のみの群でも結果はほぼ変わらなかった(調整HR:1.22、95%CI:1.05~1.40、p=0.008)。脂質異常症のみの群では認知症リスクの増加は有意ではなかった(p=0.187)。
(ケアネット 金沢 浩子)
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