ザリガニから重篤な皮膚感染症の原因菌:日本でブルーリ潰瘍が増加

提供元:ケアネット

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公開日:2013/12/05

 

 熱帯および亜熱帯地域ではよくみられるブルーリ潰瘍の発症例が、近年、日本で増加しているという。ブルーリ潰瘍(アフリカ・ウガンダのブルーリ地方で多く報告されたことで命名)は、細菌の一種である抗酸菌のMycobacterium(M.) ulceransを原因とする重篤な皮膚感染症であるが、これまで環境中からの病原菌の検出には至っていなかった。福島県立医科大学医学部皮膚科学講座の大塚 幹夫氏らは、まれな症例であった家族3人の同時発生例について調査した結果、居宅の裏庭にある流れが停滞した水路で捕獲したザリガニから同病原菌が有するのと同一の遺伝子を検出したという。JAMA Dermatology誌オンライン版2013年11月6日号の掲載報告。

 これまで報告されてきた症例はすべて散発的な発生で、現在まで環境中の物質からの病原菌検出には至っていなかった。

 大塚氏らは、2010年の冬に3人の家族が同時にブルーリ潰瘍を発症するという、これまでになかった症例について詳細に検討を行った。

 主な結果は以下のとおり。

・家族3人は、顔や四肢に巨大瘢痕がみられた。
・それら病変部の皮膚生検からは、真皮および皮下脂肪に至る深く広範囲にわたって壊死が認められた。
・各生検からは、チール・ニールセン染色により抗酸菌が検出され、cultured microorganisms法を用いた細菌学的分析の結果、それがM. ulcerans subsp. shinshuenseであることが明らかになった。
・患者は、抗菌薬投与と外科的創面切除による治療が行われた。
・調査により、遺伝子の転移可能要素である挿入配列(Insertion sequence:IS)2404が、居宅の裏にある、流れが停滞した水路で捕獲したザリガニから検出された。
・以上を踏まえて著者は、「ザリガニからIS2404が検出されたことは、この疾患の病原菌は、ほかの流行地域のように日本でも水生環境中に常在することを示唆するものである」と述べ、「この重篤な感染症を予防するために、さらなる調査によって、伝播経路を明らかにする必要がある」とまとめている。

(ケアネット)