逆流性食道炎、PPI治療を1年以上行っても約40%は寛解せず

提供元:ケアネット

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公開日:2013/09/18

 

 逆流性食道炎(RE)の主な治療薬であるプロトンポンプ阻害薬(PPI)は、平均1.1年投与を継続しても、患者の約40%は内視鏡的に寛解しないことが、大阪医科大学 第二内科の樋口 和秀氏らによる研究で明らかになった。REの治療に際しては、定期的な内視鏡検査を行いながら注意深く経過を観察し、適切にPPI治療を選択する必要があると考えられる。Internal medicine誌オンライン版2013年7月1日号の報告。

 PPIは、臨床試験で得られた結果を基に、RE治療の主力として広く使用されている。しかし、実臨床でPPI治療を行ったRE患者の内視鏡的寛解率は、十分評価されていない。そのため、著者らは、REに対するPPIの有効性を内視鏡所見に基づいてレトロスペクティブに評価した。

 対象は、日本の41の病院でRE(ロサンゼルス分類Grade A~D)と診断され、PPIによる治療を少なくとも8週間行った患者541例(男性337例、女性204例)。本検討では、PPI治療後の内視鏡検査で、Grade NまたはMと診断された患者の割合をREの寛解率として算出した。

 主な結果は以下のとおり。

・PPI治療前における重症度別の割合は以下のとおり。
 Grade A 45.5%(246例)
 Grade B 30.3%(164例)
 Grade C 15.9%(86例)
 Grade D 8.3%(45例)
・PPIによる治療期間は平均410日(約1.1年)であった。
・PPI治療後の内視鏡検査でGrade NまたはMと診断されたのは541例中333例で、平均寛解率は61.6%であった。
・PPI治療後における重症度別の寛解率は以下のとおり。PPI治療前の重症度が高いほど、寛解率が有意に低かった。
 Grade Aから寛解 70.7%
 Grade Bから寛解 59.1%
 Grade Cから寛解 50.0%
 Grade Dから寛解 42.2%
・以上の結果から、RE患者に対し、PPIによる治療を平均1.1年行っても、内視鏡的には約40%の患者が寛解に達しないことが明らかになった。

逆流性食道炎の内視鏡による重症度分類。Grade NとMは日本独自の分類。
Grade N:正常粘膜
Grade M:明らかなびらんや潰瘍がなく、発赤だけを認めるもの
Grade A:粘膜障害が粘膜ひだに限局し、5mm以内のもの
Grade B:粘膜障害が粘膜ひだに限局し、5mm以上で相互に癒合しないもの
Grade C:複数の粘膜ひだにわたって癒合し、全周の75%を超えないもの
Grade D:全周の75%以上にまたがるもの

(ケアネット 武田 真貴子)