新型インフルエンザに注意すべき疾患は ―重症化しやすいCOPD患者―

2009年11月4日、大手町ファーストスクエアにて開催されたCOPD(慢性閉塞性肺疾患)プレスセミナー(主催:日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社/ファイザー株式会社)で、日本医科大学呼吸器内科教授、同大学呼吸ケアクリニック所長の木田厚瑞氏が「新型インフルエンザとCOPD」について講演を行った。
COPDは呼吸機能が進行的に低下する疾患である。感染や大気汚染が原因で症状が短期間で悪化すること、つまり増悪が生じると、呼吸機能が急激に低下して、元の状態に戻れない。また、COPDが増悪した場合、患者の多くは入院が必要となる。さらに、増悪の回数が増えると、生命予後が悪くなることもわかってきている。重篤な増悪、入院率・死亡率を減少させるために、ガイドラインでは、COPD患者へのインフルエンザワクチン接種が求められている。また、2009年10月2日現在の厚生労働省の発表において、COPDは新型インフルエンザのワクチン優先接種対象疾患として取り上げられている。
第19回日本呼吸ケア・リハビリテーション学会学術集会の会長でもある木田氏は、10月31日に開催した日本呼吸器学会、日本呼吸ケア・リハビリテーション学会合同緊急シンポジウム「新型インフルエンザ 重症化からの脱却」のエッセンスを紹介した。それによると、新型インフルエンザの重症者には、COPDや喘息などの慢性呼吸器疾患を持っていることが多いことが挙げられる。そのうち、若年者では喘息が、高齢者ではCOPDが重症化のリスク因子となる。そのほか、日ごろの慢性呼吸器疾患の治療が不十分である場合に、悪化しやすいこともわかってきた。また、問題点として、COPDは潜在患者が多く、こうした潜在患者はCOPDとして診断されていないために、ワクチンの優先接種者にならないことなどが挙げられる。
木田氏は、潜在患者が500万人以上いるにもかかわらず、約22万人しか診断・治療されていないことに危機感を抱き、新型インフルエンザによるCOPD患者の重症化を防ぐためにも、潜在患者を1日でも早く診断し、治療を開始するべきであることを訴えた。
(ケアネット 呉 晨/吉田 直子)
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