日本語でわかる最新の海外医学論文|page:913

冠動脈CT:カルシウム容積スコアと密度スコア(コメンテーター:近森 大志郎 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(164)より-

 冠動脈カルシウム・スコアは従来の冠危険因子に加えて、心血管疾患イベント(心臓死・心筋梗塞・脳梗塞など)の独立したリスク因子として確立している。しかしながら、冠動脈石灰化は中膜に出現し、スタチンによる治療過程にて密度が亢進するとの基礎的報告もあることから、冠動脈プラーク病変の治癒過程を反映しているとの意見もある。このことは、冠動脈石灰化の容積と密度を合わせて評価している、従来のカルシウム・スコア(Agatston)の弱点となる可能性がある。

前立腺がんへのアンドロゲン除去療法での副作用、運動で改善できるか

 前立腺がんへのアンドロゲン除去療法は広く施行されているが、その有害事象により健康やQOLが損なわれることがある。これらの治療関連有害事象を改善するための方法として運動が提案されている。オーストラリア・ディーキン大学のJason R. Gardner氏らは、アンドロゲン除去療法を受けている前立腺がん患者の治療関連有害事象に対する運動の効果に関する論文の系統的レビューを行った。その結果、アンドロゲン除去療法を受けた前立腺がん患者において、適切に処方された運動は安全であり、治療誘発性の有害事象を改善する可能性があることが示唆された。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2013年12月16日号に掲載。

新たなアルツハイマー病薬へ、天然アルカロイドに脚光

 現在、アルツハイマー病(AD)に適用される主な薬理学的ストラテジーは、アセチルコリンの主要な分解酵素であるアセチルコリンエステラーゼ(AChE)の阻害である。このような観点から、フィゾスチグミンのような天然アルカロイドが多数分離され、AChEおよびブチリルコリンエステラーゼ(BChE)阻害薬として従来から知られてきた。そして、AD患者の治療薬としてガランタミンが認可されて以降、抗コリンエステラーゼ作用をもつ新たなアルカロイドの探索が進み、huperzine Aなどの有望な候補物質の発見につながっている。ブラジルのリオ・グランデ・ド・スール連邦大学のEduardo Luis Konrath氏らは、ADの治療薬として抗コリンエステラーゼ作用を有する新たなアルカロイドの探索状況を報告した。構造活性相関ならびに物理化学的特性の面から、天然アルカロイドが良い候補物質へつながる可能性があることを示唆している。Journal of Pharmacy and Pharmacology誌2013年12月号の掲載報告。

外傷後の痛みは不安が持続させている

 外傷後は疼痛、うつおよび不安がよくみられることが以前から報告されている。今回、下肢外傷患者における2年間の縦断的研究の結果、受傷後1年間は疼痛が不安やうつの予測因子となるものの、その関連は弱く、2年間を通してうつは疼痛の予測因子とはならず、不安と疼痛の関連が唯一有意であることが示された。

道路や鉄道の騒音は乳がんリスクを増大させる?

 交通騒音への曝露はストレスや睡眠障害につながる。一方、自己申告による睡眠時間と乳がんリスクに関する研究の結果には一貫性がない。デンマークがん協会研究センターのMette Sorensen氏らは、デンマークの人口ベースのコホートにおいて、居住地における道路や鉄道の交通騒音と乳がんリスクの関連を検討した。その結果、交通騒音によりエストロゲン受容体陰性乳がんのリスクが増大する可能性が示唆された。ただし著者らは「本研究は交通騒音と乳がんに関する最初の研究であり、これらの結果は慎重に扱われるべき」としている。International Journal of Cancer誌オンライン版2013年11月8日号に掲載。

うつ病診断は、DSM-5+リスク因子で精度向上

 DSM-5分類の大うつ病性障害(MDD)の診断に用いる9つの症状は、背景にある障害の指標と置き換えることが可能であり、すべて同様のリスク因子をもっていると推測されている。ドイツ・ベルリン自由大学のE. I. Fried氏らは、低~高レベルのうつ病を有する母集団コホートを用いて、MDDの診断に用いる9つの症状と、うつに関する7つのリスク因子との関連を評価した。その結果、うつのリスク因子が症状に多彩な影響を及ぼすことが明らかとなり、MDDの診断に際して“うつ”のリスク因子も加味することの重要性を示唆した。Psychological Medicine誌オンライン版2013年12月号の掲載報告。

てんかん治療で新たな展開、患者評価にクラウド活用

 多様な電気生理学的シグナルのデータが急速に増えており、てんかんや睡眠障害など多岐にわたる疾患の患者ケアおよび臨床研究に重要な役割を果たしている。これらデータの2次利用を促進するため、多施設共同研究のontology(概念体系)と同様、新しいアルゴリズムの開発ならびにクラウドコンピューティング技術を用いた新たな情報科学的なアプローチが急務とされている。米国ケース・ウェスタン・リザーブ大学のSatya S Sahoo氏らは、クラウドコンピューティング技術を用いた新たな情報科学的アプローチの有用性を明らかにするため、てんかん患者のデータに基づく心臓パラメータの算出を、従来デスクトップ上で行っていたアプローチと「Cloudwave」を活用したアプローチを比較した。その結果、後者は、大規模な電気生理学的データを活用しうる新しいアプローチであることを報告した。Journal of the American Informatics Association誌オンライン版2013年12月10日号の掲載報告。

アトピー性皮膚炎重症度、黄色ブドウ球菌と多様なミクロフローラとの拮抗が関連?

 フランス・パリ第6大学のMuriel Bourrain氏らは、水治療中のアトピー性皮膚炎(AD)患者の生体内評価を行い、有益なミクロフローラと黄色ブドウ球菌コロニー形成とのバランスについて調べた。296検体を調べた結果、2つの異なる細菌群生と、多様なミクロフローラの存在を特定し、両者間でバランスを保とうとすることが、AD重症度と関連するキー要素であるように思われたことを報告した。

「リハビリテーション専門職のための学びと働き方セミナー」開催のご案内

 ベネッセMCMは、2014年1月19日(日)に「リハビリテーション専門職のための学びと働き方セミナー」を開催する。シリーズ第1回目は、業務に活かせる神経系治療学の最新知見の紹介や、リハビリテーション専門職が活躍できる多様な職場や働き方についてのパネルディスカッションを予定している。

4価ワクチンでインフルエンザの予防率をどれくらい向上できるか/NEJM

 B型の2株(ビクトリア系、山形系)を含めた不活化インフルエンザ4価ワクチン(quadrivalent influenza vaccine:QIV)の有効性に関する、3~8歳児5,000例超を対象とした第3相無作為化対照試験の結果が発表された。ワクチン有効率は全体で59.3%、中等症~重症例では74.2%であったことなどが示された。試験を実施・報告したレバノン・アメリカン大学ベイルート病院のVarsha K. Jain氏らは、「QIVはインフルエンザA型とB型を予防する際に有効であることが示された」と結論している。インフルエンザワクチンはWHOではA型2株とB型1株の3価製剤を推奨し、日本でも採用されている。しかし、B型について2株が混合流行する傾向が続いており、4価製剤が開発された。米国では今シーズンから4価が導入されているという(http://www.nih.go.jp/niid/ja/iasr-sp/2257-related-articles/related-articles-405/4099-dj4053.html)。NEJM誌オンライン版2013年12月11日号掲載の報告より。

DVT後の弾性加圧ストッキング、PTS予防効果なし/Lancet

 近位部深部静脈血栓症(DVT)後の弾性加圧ストッキング(ECS)装着について、血栓後症候群(PTS)の予防効果はないことが判明した。カナダ・ジューイッシュ総合病院のSusan R Kahn氏らが、800例超対象の多施設共同無作為化プラセボ対照試験の結果、報告した。ECSによるPTS予防効果は、これまで非プラセボ単施設試験で示唆されていた。Lancet誌オンライン版2013年12月6日号で発表した。