日本語でわかる最新の海外医学論文|page:910

SSRI/SNRIへの増強療法、コストパフォーマンスが良いのは

 うつ病患者において、抗うつ薬単独療法で寛解が得られるのは約3分の1にすぎず、その他の抗うつ薬に変更した場合でも累積寛解率は50~55%にとどまる。このような背景から、治療抵抗性うつ病のマネジメントとして増強療法への関心が高まっている。米国・IMS HealthのRolin L. Wade氏らは、選択的セロトニン再取り込み阻害薬/ 選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SSRI/SNRI)に、第二世代非定型抗精神病薬(SGAs)またはL-メチルフォレートを併用する増強療法時のアドヒアランス、ならびに医療コストについて比較検討した。その結果、L-メチルフォレートのほうがSGAと比べて、抗うつ薬のアドヒアランスが高く保たれ、うつ病に特化したコストおよび全医療コストが低いことが示されたことを報告した。Journal of managed care pharmacy誌2014年1月号の掲載報告。

タバコ規制から50年で平均寿命が20年延長/JAMA

 米国では、1964年以降に実施されたタバコ規制により、800万人の早期死亡が回避され、平均寿命が約20年延長したと推定されることが、イェール大学公衆衛生大学院のTheodore R. Holford氏らの検討で示された。2014年1月は、米国で最初の喫煙と健康に関する公衆衛生局長官報告から50周年に当たる。同報告の影響力は大きく、喫煙による損失の低減に向け、政府や非政府組織(NGO)、民間企業によるさまざま取り組みを呼び起こした。JAMA誌2014年1月8日号掲載の報告。

軽~中等度アルツハイマー病にもビタミンEが有効/JAMA

 軽度~中等度のアルツハイマー病(AD)に対するビタミンE(α-トコフェロール)の投与は、身体機能の低下を遅延する効果があることが示された。米国・ミネアポリスVAヘルスケアシステムのMaurice W. Dysken氏らが、AD患者600例超を対象に行った、二重盲検プラセボ対照並行群間無作為化臨床試験「TEAM-AD VA共同無作為化試験」の結果、報告したもので、JAMA誌2014年1月1日号で発表した。なお、ビタミンE+メマンチン投与およびメマンチン単独投与ではプラセボ群と比べて有意差はみられなかったという。これまでの研究で、中等度~重度ADに対するビタミンEの効果は示されていたが、軽度~中等度ADについては、その効果に関するエビデンスは限定的だった。

胃酸分泌抑制薬によるビタミンB12欠乏症の危険性(コメンテーター:上村 直実 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(168)より-

 本論文では、米国の大手保険会社に加入している330万人のデータベースを用いて、1997年~2011年にビタミンB12欠乏症の診断を受けた2万5,956例をCase群、同疾患と診断されていない者から性・年齢および人種をマッチさせた18万4,199例をControl群として両群におけるプロトンポンプ阻害薬(PPI)とH2ブロッカー(H2RA)の処方状況を比較検討した。

KRAS変異型大腸がんリスクに食品中のアクリルアミドが関連

 炭水化物を多く含む材料を加熱調理した食品に含まれるアクリルアミドは、ヒトでの発がん性があると推定されている。これまで、アクリルアミド摂取量と大腸がんリスクとの間に明確な関連性を示す疫学的研究はないが、その理由として大腸がんにおける分子生物学的不均一性が考慮されていなかった可能性がある。アクリルアミド代謝物であるグリシドアミドは、げっ歯類において特定のDNA変異を誘導することから、オランダ・マーストリヒト大学のJanneke GF Hogervorst氏らは、アクリルアミドが、大腸がんの発がんkey遺伝子であるKRASおよびAPCの変異による大腸がんリスクと関連しているかどうかを検討した。Carcinogenesis誌オンライン版2014年1月7日号に掲載。

足関節捻挫、脛腓靱帯部でも保存的治療で競技に復帰可能

 脛腓靱帯結合捻挫は足関節外側捻挫と比較して、長期的な故障の原因となり得る。米国・MedStar Union Memorial HospitalのDaryl C. Osbahr氏らは、ナショナルフットボールリーグ(NFL)に所属するあるチームについて調査し、(1)脛腓靱帯結合捻挫は足関節外側捻挫と比較し重大な障害の原因となる、しかし(2)損傷の重症度にもよるがどちらも保存的治療で競技に復帰できることが多い、ことなどを明らかにした。

小児呼吸器感染症、各症状の持続期間は?/BMJ

 小児呼吸器感染症の症状持続期間について、保護者に提示されているガイダンス内容と比べて、耳痛(7~8日)、感冒(15日)は長期であったことが、米国・ワシントン大学のMatthew Thompson氏らによるシステマティックレビューの結果、判明した。咽頭痛、急性咳嗽、細気管支炎、クループはガイダンス内容と一致していた。著者は、「今回の結果は、保護者および臨床医が呼吸器感染症を適切に見分けるのに有用である」として、新たなエビデンスに基づき現行ガイドラインを更新する必要があると提言している。BMJ誌オンライン版2013年12月24日号掲載の報告より。

人工股関節、24%が臨床的有用性不明/BMJ

 整形外科医が現在、臨床で使用可能な人工股関節のうち、24%は臨床的有用性についてエビデンスがないものであることが、英国・クイーン・エリザベス病院のF Kynaston-Pearson氏らによるシステマティックレビューの結果、判明した。一部のmetal-on-metal人工股関節で高頻度の再置換発生率がみられることから、インプラントの十分なエビデンスを求める声が高まっていることを受けて本検討は行われた。整形外科医が使用可能なインプラントは多数あるが、その使用を支持する臨床的有用性エビデンスを有するものが、どれくらいあるのかはこれまで不明であったという。BMJ誌オンライン版2013年12月19日号掲載の報告より。

イマチニブを中止した慢性骨髄性白血病、投与再開の基準は?

 分子遺伝学的完全寛解(CMR)に到達した慢性期慢性骨髄性白血病(CP-CML)患者の半数以上で、イマチニブ中止後に分子遺伝学的再発を認める。仏ベルサイユ大学のPhilippe Rousselot氏らは、治療再開の判断基準として分子遺伝学的major寛解(MMR)の喪失を検討した。その結果から、CMR期間の長いCML患者においてMMR喪失が治療再開の実用的かつ安全な基準であると報告した。Journal of clinical oncology誌オンライン版2013年12月30日号に掲載。

抗精神病薬の用量決定時、精神科医が望むことは

 抗精神病薬処方時の用量決定には、主として臨床医としての直観(intuition)や経験、そして患者の意向が影響していることが、英国・ロンドン大学のLauren Best-Shaw氏らが行った精神科医へのアンケート調査の結果、明らかになった。また、処方のエビデンスに関して懸念を示す臨床医もいたが、大半が治療薬物モニタリング(TDM)を用いることに前向きで、活用可能であればそれを利用するだろうと回答したという。これまで精神科医が、統合失調症の個々の患者について、どのように抗精神病薬の処方用量を選択しているのか、明らかになっていなかった。Therapeutic Drug Monitoring誌オンライン版2013年12月31日号の掲載報告。

aHUS診断基準公表による、早期診断・早期治療に期待

 非典型溶血性尿毒症症候群(atypical hemolytic uremic syndrome:aHUS)は、志賀毒素産生性大腸菌由来尿毒症症候群(Shiga toxin-producing E. coli hemolytic uremic syndrome:STEC-HUS)とADAMTS13 (a disintegrin-like and metalloproteinase with thrombospondin type 1 motifs:member13)活性著減による血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura:TTP) 以外の血栓性微小血管障害(thrombotic microangiopathy:TMA)と定義される。

認知症患者のニーズを引き出すアプリ:神奈川県立保健福祉大学

 認知症患者は進行に伴い、意思疎通が難しくなる。このような問題を解決するため、神奈川県立保健福祉大学の友利 幸之介氏らは、作業療法に当たっての作業選択意思決定支援ソフト「ADOC(Aid for Decision-making in Occupation Choice;エードック)」の活用基準を確定するため検討を行った。検討の結果、ADOCは中等度認知症患者における大切な作業を把握するのに役立つ可能性があることが示された。Disability and Rehabilitation : Assistive Technology誌オンライン版2013年12月24日号の掲載報告。

モース顕微鏡手術の安全性を確認 重大有害イベント発生はごくわずか、死亡例なし

 モース顕微鏡手術(MMS)の安全性について、米国内23施設・2万821例を検討した結果、有害イベント発生率は0.72%であり、重大有害イベント発生率は0.02%で非常に低く、死亡例はなく、「同手術は安全である」ことを米国・ノースウェスタン大学のMurad Alam氏らが報告した。

双極性障害に対するリチウム療法の効果を予測する遺伝子変異/NEJM

 双極性I型障害患者に対するリチウム維持療法では、GADL1遺伝子変異の状態によって効果に差があることが、台湾中央研究院のC-H Chen氏ら台湾バイポーラ・コンソーシアムの検討で示された。リチウム維持療法は双極性障害患者における躁状態およびうつ状態の予防の第一選択の治療法とされ、再発や自殺のリスクを低減することが示されている。その一方で、効果がみられない患者も多いという。これまでに、リチウム治療の奏効と関連し、臨床での使用に十分な感度を有する一塩基多型(SNPs)はみつかっていない。NEJM誌オンライン版2013年12月25日号掲載の報告。

小児の慢性片頭痛に認知行動療法が有効/JAMA

 小児の慢性片頭痛の治療として、認知行動療法(CBT)が有効であることが、米国・シンシナティ小児病院医療センターのScott W Powers氏らの検討で示された。小児の慢性片頭痛に関しては、現在、米国FDAによって承認された治療法がないため、実臨床ではエビデンスに基づかない種々の治療が行われているという。心理学的介入の中でも、対処技能の訓練に焦点を当てバイオフィードバック法に基づくリラクセーション訓練を導入したCBTは、これらの患者における慢性、再発性の疼痛の管理に有効であることを示唆するエビデンスが報告されていた。JAMA誌2013年12月25号掲載の報告。

脳動静脈奇形(未破裂)の予防的切除や塞栓術などの介入療法では予後を改善できない(コメンテーター:中川原 譲二 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(167)より-

 これまで未破裂脳動静脈奇形の予防的切除や塞栓術の臨床的ベネフィットは明らかになっていなかった。未破裂脳動静脈奇形を対象とした多施設共同非盲検無作為化試験「ARUBA」では、内科的管理単独(神経学的症状に応じた投薬治療)と内科的管理+介入療法(脳外科手術、塞栓術、定位放射線療法の単独または複合など)の死亡及び症候性脳卒中のリスクが比較された。その結果、内科的管理単独のほうが、内科的管理+介入療法よりも死亡及び脳卒中のリスク抑制に優れていることが明らかにされ、介入療法の限界が示された。