日本語でわかる最新の海外医学論文|page:808

非毒素産生株でクロストリジウム・ディフィシル感染症の再発を予防(解説:小金丸 博 氏)-364

 クロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI)は、代表的な医療関連感染症の1つである。一般的に、経口バンコマイシンやメトロニダゾールに対する反応は良好であるが、治療後の再発率は25~30%と高率であり、現在、CDIの治療および予防のためのさまざまなアプローチが研究されている(便移植、毒素に対するモノクローナル抗体など)。

スマホアプリで日焼け予防!?

 スマートフォンではアプリケーション(スマホアプリ)を利用し、ユーザーに応じた健康情報を提供することができる。米国・Klein Buendel社のDavid B. Buller氏らは、リアルタイムで日焼け防止のアドバイスを配信するスマホアプリの有用性を評価する無作為化臨床試験を行った。その結果、スマホアプリの使用する人が予想より低かったものの日焼け防止策を実践する人は増えたことを報告した。著者は「太陽下にいる時間と場所に応じて個人的にアドバイスを提供することは、日光曝露の減少に役立つだろう」とまとめている。JAMA Dermatology誌2015年5月号の掲載報告。

気管支鏡の肺がん診断、遺伝子スコアで精度改善/NEJM

 気管支鏡検査による肺がん診断の精度改善に、気管支上皮細胞の遺伝子発現分類を加味することが有用であることが、米国・南カリフォルニア大学のGerard A. Silvestri氏らが行った2つの多施設共同前向き試験(AEGIS-1、AEGIS-2)の結果、示された。米国では年間約50万例の気管支鏡検査が行われているが、そのうち約半数例は肺がんの診断が不能で、それらの多くで追加の侵襲的検査が行われ、結果として良性病変であることが多いという。研究グループは、気管支の遺伝子発現分類を用いることで気管支鏡検査の診断が改善することを確認するため本検討を行った。NEJM誌オンライン版2015年5月17日号掲載の報告より。

進行卵巣がんの術前化療、術後に非劣性/Lancet

 病期III・IVの卵巣がんに対して、化学療法を先行して後に手術を行う場合でも、手術を先行して後に化学療法を行う場合と比べてアウトカムは非劣性であることが示された。英国・バーミンガム大学のSean Kehoe氏らが、550例を対象に行った第III相の非盲検非劣性無作為化試験「CHORUS」の結果、報告した。著者は「今回の試験集団において進行卵巣がんについて、化学療法を手術よりも先行して行うことは標準療法として容認できるものであった」と述べている。Lancet誌オンライン版2015年5月19日号掲載の報告より。

1型糖尿病患者における強化療法と眼科手術(解説:住谷 哲 氏)-363

 糖尿病診断直後からの数年にわたる厳格な血糖管理が、その後の患者の予後に大きく影響することは、1型糖尿病(T1DM)においてはmetabolic memory(高血糖の記憶)、2型糖尿病(T2DM)においてはlegacy effect(遺産効果)として広く知られている。T1DMにおける糖尿病性腎症、心血管イベントおよび総死亡に対するmetabolic memoryの存在がすでに報告されていたが、本論文により眼科手術に対しても同様にmetabolic memoryの存在が明らかにされた。

拒食に対する抗精神病薬増強療法の効果は

 神経性やせ症は生命に危険を及ぼすことがあり、あらゆる精神障害のうち最も死亡率が高く、治療が難しい精神疾患である。イタリア・トリノ大学のEnrica Marzola氏らは、神経性やせ症入院患者のカルテを後ろ向きに評価し、非定型抗精神病薬による増強療法について、アリピプラゾールが有望であることを報告した。今回の所見について、著者らは「無作為化試験での確認に値する有望な知見であった」と述べている。PLoS One誌オンライン版2015年4月29日号の掲載報告。

高齢者への脂質降下薬、脳卒中リスク3割減/BMJ

 血管イベント歴のない高齢者(平均年齢74歳)について、脂質降下薬(スタチンまたはフィブラート系薬)の使用有無別に平均9年間フォローアップした検討において、非使用群と比べて使用群の脳卒中リスクが約30%低下したことが報告された。フランス・ボルドー大学のAnnick Alperovitch氏らが、7,484例の大規模集団を対象に行った住民ベースのコホート試験の結果、示された。また、リスク低下についてスタチンとフィブラート系薬の服用者別にみた場合、同等であったという。著者は「今回の試験データは、高齢者の1次予防として脂質降下薬を長期に用いることは脳卒中の予防に結び付くという仮説を提起するものであった」と述べている。BMJ誌オンライン版2015年5月19日号掲載の報告より。

鼻腔から集中治療を行える時代へ:ハイフロー鼻腔酸素療法(解説:倉原 優 氏)-362

 これは、心臓手術後の呼吸不全に対して、ハイフロー鼻腔酸素療法(HF)と非侵襲性陽圧換気療法(NPPV)の比較を行った研究である。ちなみに、現時点ではHFについては適切な日本語訳がないと聞いているが、将来的にどの日本語訳におさまるだろうか。

認知症治療、薬物療法にどの程度期待してよいのか

 認知症は治癒が望めない疾患であり、治癒または回復に向かわせる治療法は存在しない。現在の治療は、認知または機能的アウトカムの改善を目的としたものである。米国・ブラウン大学のJacob S. Buckley氏らは、認知症および軽度認知障害(MCI)の治療に関する研究をレビューし、治療のベネフィットとリスクを評価した。その結果、コリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)によるベネフィットは小さく、経過とともに効果が減弱すること、用量依存的に有害事象が増加すること、またメマンチン単剤療法はベネフィット、リスクともに小さいことが明らかになったと報告した。Drugs & Aging誌オンライン版2015年5月5日号の掲載報告。

慢性腰痛に耳ツボ指圧は有効?

 慢性腰痛に対して耳指圧療法が有効であることが、米国・ピッツバーグ大学のChao Hsing Yehらが行った無作為化比較試験で示された。耳指圧療法は非侵襲的であり患者自身による自己治療も可能で、慢性腰痛の治療として期待される。ただし今回の研究は、疼痛日誌に記録された疼痛スコアに基づいており、疼痛スコアは日々変動することから、著者は「他の治療パラメータを用いる研究デザインが必要」とも述べている。Pain Medicine誌オンライン版2015年5月19日号の掲載報告。

急性坐骨神経痛に経口ステロイドは有効か/JAMA

 経口ステロイド薬は、椎間板ヘルニアによる急性神経根障害に起因する坐骨神経痛の治療に一般的に用いられるが、適切な統計学的パワーを備えた臨床試験による評価は行われていないという。米国カイザー・パーマネンテ北カルフォルニアのHarley Goldberg氏らは、今回、プレドニゾンの短期投与により身体的な機能障害はある程度改善されるが、疼痛には効果がないことを確認した。JAMA誌2015年5月19日号掲載の報告。

海藻摂取と甲状腺がん発症に関連認めず

 ヨウ素の過剰摂取は甲状腺がんのリスク因子と考えられている。わが国では主に海藻からヨウ素を摂取し、その量は世界的にみても多い。国内のこれまでの疫学的研究では、海藻を毎日摂取すると閉経後女性で甲状腺がんリスクが4倍高くなり、それ以外では関連がなかったと報告している。今回、JACC研究(the Japan collaborative cohort study)※グループは、1988~2009年に追跡したJACC研究で、日本女性の海藻摂取頻度と甲状腺がんリスクとの関連を調査した。その結果、閉経前後にかかわらず、海藻摂取と甲状腺がん発症率との関連は認められなかった。European journal of cancer prevention誌オンライン版2015年5月14日号に掲載。

爪真菌症に有用なホウ素含有の新規抗真菌薬

 爪真菌症は生活の質に影響を与える。ホウ素を含有する新しいクラスの抗真菌薬タバボロール(tavaborole、国内未承認)は、足の爪真菌症に対して優れた臨床効果を発揮するとともに安全性プロファイルは良好であることが、米国・アラバマ大学バーミンガム校のBoni E. Elewski氏らによる2件の第III相試験の結果、確認された。タバボロールは爪真菌症に対する新たな治療選択肢として期待される。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2015年5月5日号の掲載報告。

本当だった!? 血液型による性格の違い

 日本の健常人において、ABO式血液型の遺伝子型と性格特性には有意な関連が認められることが、弘前大学の土嶺 章子氏らの研究により明らかになった。しかし、ABO式血液型の遺伝子型と持続性形質との間の関連が比較的弱い可能性があるため、本研究結果は注意して解釈するべきであるとのこと。PLoS One誌オンライン版2015年5月15日号の報告。

出生地が双極性障害発症時期に影響

 出生直後の環境条件は、概日システムの刷り込みや、その後の環境応答に影響するかもしれない。ドイツ・カールグスタフ・カールス大学病院のMichael Bauer氏らは以前、とくに気分障害の家族歴を持つ人において、春の日射量の増加が双極性障害の発症年齢と関連することを報告していた。本研究では、出生地の日照時間がこの関連に影響を与えているかどうかを検討した。Journal of psychiatric research誌2015年5月号(オンライン版2015年3月27日号)の報告。