日本語でわかる最新の海外医学論文|page:806

レーバー先天性黒内障、遺伝子治療の有効性報告/NEJM

 小児の進行性網膜変性疾患であるレーバー先天性黒内障について、ヒトを対象とした遺伝子治療の長期有効性の試験結果が報告された。わずかで一過性ではあるが、網膜感度の改善が示されたという。レーバー先天性黒内障は、RPE65遺伝子変異によって生じる。検討では、rAAV2/2 RPE65ベクターを用いた遺伝子治療が行われた。これまでの遺伝子治療の検討では、夜間視力のわずかな改善が示唆されていたがヒトにおける効果については報告が限定的であった。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのJ.W.B. Bainbridge氏らが報告した。NEJM誌2015年5月14日号(オンライン版2015年5月4日号)掲載の報告より。

REVASCAT試験:脳梗塞の急性期治療に対する血栓回収療法の有効性と安全性が確立(解説:中川原 譲二 氏)-359

 2015年2月に、米国・ナッシュビルで開催された国際脳卒中学会議(ISC)では、急性期脳梗塞に対する、血栓回収療法の有効性を示す4件(MR-CLEAN、ESCAPE、EXTEND-IA、SWIFT-PRIME)のランダム化比較試験(RCT)の結果が一挙に報告され、脳梗塞の急性期治療は、t-PA静注療法の確立から20年目にして歴史的な転換点を迎えようとしている。

学歴とうつ病の関連は、遺伝か、環境か

 うつ病と低学歴の関連には、遺伝的多面発現効果(pleiotropy)の影響は認められないが、社会経済的状況などの環境因子が関わっている可能性が示唆された。Major Depressive Disorder Working Group of the Psychiatric GWAS ConsortiumのW J Peyrot氏らがドイツ人、エストニア人のうつ病患者のデータを解析し報告した。Molecular Psychiatry誌2015年6月号の掲載報告。

食品中の残留PCBは高血圧リスク

 ポリ塩化ビフェニル(PCB)は、食物連鎖を通じて生体内に取り込まれて蓄積する、残留性有機汚染物質である。PCBへの曝露が高血圧の発症と関連することが、異なるソースのエビデンスにより示唆されている。しかしながら、成人におけるこの潜在的関連性について検討した前向き研究は、これまでなかった。スペイン・ナバーラ大学のCarolina Donat-Vargas氏らは、PCBの食品由来摂取量と高血圧発症について、大規模な前向きコホート研究を行った。Hypertension誌2015年4月号(オンライン版2015年2月2日号)の掲載報告。

持続性心房細動にアブレーションは有効か/NEJM

 持続性心房細動患者にアブレーションを行う場合に、肺静脈隔離術に加えて、コンプレックス細分化電位図を示すアブレーションやリニアアブレーションを行っても、アウトカムの改善にはつながらないことが報告された。カナダ・モントリオール心臓研究所のAtul Verma氏らが、同患者589例について行った無作為化試験で明らかにした。持続性心房細動へのカテーテルアブレーションは、発作性心房細動に比べ成功率が低く、ガイドラインでは補助的な基質の焼灼を示唆している。NEJM誌2015年5月7日号掲載の報告より。

HCV1型感染に経口3剤配合剤が高い効果/JAMA

 代償性肝硬変を伴うC型肝炎ウイルス(HCV)遺伝子型1型感染者に対し、経口薬のみの3剤配合錠ダクラタスビル(商品名:ダクルインザ)+アスナプレビル(商品名:スンベプラ)+ベクラブビル(beclabuvir、国内未承認)の12週間治療は、87~98%と高い割合で持続的ウイルス学的著効率(SVR)を達成可能であることが示された。これまでにインターフェロンや直接作用型抗ウイルス薬(DAA)で治療を受けた人についても、同達成率は高かったという。米国・デューク大学のAndrew J. Muir氏らが、約200例の患者を対象に行った試験UNITY-2の結果、報告した。ダクラタスビルとアスナプレビルは日本で先行発売されている。ベクラブビルは非ヌクレオシド系NS5B阻害薬である。JAMA誌2015年5月5日号掲載の報告より。

ジェノタイプ2型C型慢性肝炎治療薬 ソバルディ錠が5月25日発売

 ギリアド・サイエンシズ株式会社は5月20日、ジェノタイプ2型C型慢性肝炎またはC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善の効果・効能で、核酸型NS5Bポリメラーゼ阻害薬「ソバルディ錠400mg」を5月25日に発売することを発表した。同社にとっては日本国内で初めての製品販売となる。

てんかん患者への精神療法、その効果は

 英国・王立ハラムシャー病院のEdel Dewhurst氏らは、てんかん患者に対するアクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)の有効性と費用対効果について検討した。その結果、ACTは抑うつや不安、QOL、自尊心、職業および社会的適応に対して良好な効果をもたらし、費用対効果にも優れることを報告した。Epilepsy Behavior誌オンライン版2015年4月10日号の掲載報告。

上部消化管出血への輸血戦略、大規模RCTは可能か/Lancet

 論争の的となっている急性上部消化管出血への輸血戦略について、大規模な非盲検集団無作為化試験の実行可能性を探るTRIGGER試験が英国・オックスフォード大学のVipul Jairath氏らにより行われた。その結果、試験は実行可能であることが示され、著者は、「臨床診療ガイドラインで、すべての上部消化管出血患者に対する制限輸血戦略を推奨するよう記述を変える前に、その効果を評価する大規模な集団無作為化試験は実行可能であり、実施が必須である」と指摘した。これまで、同戦略に関する検討は小規模試験3件と単施設試験1件のみである。単施設試験の所見では、制限輸血(限定的な赤血球[RBC]輸血)群で死亡の低下が報告されており、研究グループは、同所見が多施設の集団無作為化試験によって立証されるか否かを検討することを目的とした。Lancet誌オンライン版2015年5月5日号掲載の報告より。

高齢者では、NOACよりもワルファリンが適していることを証明した貴重なデータ(解説:桑島 巌 氏)-358

 NOAC(新規経口抗凝固薬)とワルファリンに関する出血性イベントのレトロスペクティブコホート研究が2つ、BMJ誌オンライン版2015年4月24日号に掲載された。ここでは、調査規模の大きい米国からのNeena S. Abraham氏らの論文についてコメントする。

認知症への運動療法、効果はあるのか

 最近の複数の研究とシステマティック・レビューにおいて、認知症患者に対する運動の効果について信頼性の高い結果が報告されている。カナダ・アルバータ大学のDorothy Forbes氏らは、認知症高齢者に対する運動の効果について、患者および介護者の両面から明らかにするためメタ解析を行った。その結果、運動プログラムが認知症患者の日常生活動作を改善する可能性、および認知機能、神経精神症状、抑うつに対する運動の効果に関するエビデンスは認められなかったことを報告した。Cochrane Database Systematic Reviewsオンライン版2015年4月15日号の掲載報告。

真皮縫合、セットバック縫合vs. 垂直マットレス縫合

 セットバック縫合は真皮の剥離面から刺入し剥離面へ刺出する縫合法で、垂直マットレス縫合に代わる真皮縫合となり得ることが示唆されている。米国・カリフォルニア大学デイビス校のAudrey S. Wang氏らは無作為化盲検比較試験を行い、セットバック縫合が埋没垂直マットレス縫合より創縁の外反に優れ、縫合痕も美容的に良好であることを明らかにした。Journal of the American Academy of Dermatology誌2015年4月号の掲載報告。

喫煙女性の大腿骨近位部骨折リスクが明らかに

 喫煙により、女性の大腿骨骨折リスクは増加するのか。中国・蘇州大学附属第二医院のGuang Si Shen氏らは、その関連性を明らかにするため、10件の前向きコホート試験のメタ解析を行った。その結果、喫煙は女性の大腿骨近位部骨折リスクと関連すること、禁煙後10年以上経つとリスクへの影響は減少することなどが判明した。著者らは、さらなる検討の必要性を示唆している。Injury誌オンライン版2015年4月20日号の掲載報告。

下大静脈フィルター併用、肺塞栓症の再発リスク低下せず/JAMA

 重症急性肺塞栓症入院患者において、抗凝固療法+回収可能型下大静脈フィルター留置を行っても、3ヵ月時点の症候性肺塞栓症の再発リスクは抗凝固療法単独と比べて減少しなかったことが示された。フランス・サンテティエンヌ大学中央病院のPatrick Mismetti氏らが無作為化試験の結果、報告した。回収可能型下大静脈フィルターは、急性静脈血栓塞栓症患者において抗凝固療法と併用して行われる頻度が高いが、そのリスク-ベネフィットについては不明であった。今回の結果について著者は、「抗凝固療法治療が可能な患者に対する同タイプフィルターの使用を支持しないという所見が示された」とまとめている。JAMA誌2015年4月28日号掲載の報告より。

統合失調症患者の自殺企図、家族でも気づかない:東邦大学

 未治療の統合失調症では多くの場合、周囲の人たちは、患者の精神症状や自殺企図の可能性を認識できていない。東邦大学の山口 大樹氏らは、致死的な自殺企図を経験した未治療の統合失調症患者において、主観的な経験と観察された行動との間に矛盾があるかを質的パイロット研究により調査した。Annals of general psychiatry誌オンライン版2015年4月15日号の報告。

脊椎疾患の待機的手術、患者満足度が有効性を正確に表す?

 患者満足度調査は、医療の質と診療報酬の償還を決める要素として生み出されたもので、満足度を改善する要因を特定することは非常に重要である。米国・ヴァンダービルト大学医療センターのSilky Chotai氏らは、脊椎変性疾患に対する待機的手術時に行った患者満足度調査から、アウトカムに対する患者の満足度は、脊椎外科的治療の有効性を正確に表すことが可能で、術後1年間における疼痛や機能障害の改善で示されることを報告した。ただし、だからといって満足度が治療の全体の質や有効性に依存するわけではないこと、メディケイド/保険非加入者の支払人の社会的地位および手術前の疼痛や機能障害が関与することも示唆されたと述べている。Neurosurgery誌オンライン版2015年4月23日号の掲載報告。

帯状疱疹の新規ワクチン、50歳以上で97%有効/NEJM

 帯状疱疹ウイルス中のタンパク質gEとAS01Bアジュバントを組み合わせた新規ワクチン「HZ/su」について、50歳以上高齢者への有効率は97%で、70歳以上にも同等の効果があることが報告された。米国・GSK Vaccines社のHimal Lal氏らが、50歳以上成人1万5,411例について行った第III相臨床試験の結果、示された。すでに高齢者を対象に組み込んだ第I-II相臨床試験において、臨床的に許容できる安全性プロファイルおよび高い免疫原性が示されていた。NEJM誌オンライン版2015年4月28日号掲載の報告より