日本語でわかる最新の海外医学論文|page:746

中等度リスク患者、スタチンでベネフィット/NEJM

 心血管疾患既往のない、心血管イベントリスクが中程度の患者に対し、ロスバスタチン治療によりコレステロール値を低下することで、主要心血管イベントリスクは4分の3程度に低減することが示された。カナダ・Population Health Research InstituteのS. Yusuf氏らが、約1万3,000例を対象に行った、無作為化プラセボ対照二重盲検試験HOPE-3の結果、明らかにした。先行研究で、コレステロール値を低下するスタチン治療は、心血管疾患既往のない人では、心血管イベントリスクを低下することが示されているが、試験に参加したのは脂質値および炎症マーカーが高値の人で、また被験者の大半が白人であった。そのためスタチンがもたらすベネフィットが、中等度リスクで民族的に多様な心血管疾患既往のない集団でも認められるかについては明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2016年4月2日号掲載の報告。

中等度リスク患者への降圧治療のベネフィットは?/NEJM

 心血管疾患既往のない、心血管イベントリスクが中程度の患者に対し、カンデサルタン+ヒドロクロロチアジドによる降圧治療を行っても、主要心血管イベントリスクは低下しないことが示された。カナダ・Population Health Research InstituteのEva M. Lonn氏らが、約1万3,000例を対象に行った無作為化プラセボ対照二重盲検試験HOPE-3の結果、明らかにした。降圧治療について、高リスクの人および収縮期血圧が160mmHg以上の人では、心血管イベントリスクを低下するが、中等度リスクの人および血圧が低い(160mmHg未満)人における役割については明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2016年4月2日号掲載の報告。

抗うつ薬誘発性体重増加のレビュー、その結果は

 うつ病と肥満はどちらも複雑な病因を持ち、公衆衛生に大きな影響を与える不均一な疾患である。疾患管理予防センター(CDC)のデータによると、抗うつ薬の処方は1988年以降、約400%上昇している。同時に、1980年以降の肥満率は、成人で15%から30%に倍増しており、小児では3倍以上増加している。肥満率の上昇は、重大な健康への影響を有し、30以上の重篤な疾患の増加率に影響する。西洋社会において、抗うつ薬の使用と肥満率が同時に上昇しているにもかかわらず、2つの関連付けおよび抗うつ薬誘発性体重増加のメカニズムについてはよくわかっていない。オーストラリア国立大学のS H Lee氏らは、抗うつ薬使用およびうつ病と体重増加との複雑な関係に注目し、レビューを行った。Translational psychiatry誌2016年3月15日号の報告。

超低カロリー食+体重管理で2型糖尿病が寛解?

 新たな研究によると、2型糖尿病患者のうち超低カロリー食療法(very-low-calorie diet)のレスポンダーが、少なくとも6ヵ月間、糖尿病寛解の状態にあったという。通常、不可逆性の慢性疾患と見なされることが多い2型糖尿病だが、この研究結果が希望の光になるかもしれない。英国・ニューカッスル大学のSarah Steven氏らによるDiabetes Care誌オンライン版2016年3月21日号掲載の報告。

naltrexone、刑事犯罪者のオピオイド依存再発を抑制/NEJM

 オピオイド依存症歴のある成人刑事犯罪者に対し、徐放性naltrexoneはオピオイド使用再開の抑制効果があることが明らかにされた。米国・ニューヨーク大学のJoshua D. Lee氏らが、通常治療と比較した無作為化試験の結果、報告した。徐放性naltrexoneは、μオピオイド受容体完全拮抗薬の月1回投与の徐放性注射剤で、オピオイド依存症の再発防止効果はすでに確認されているが、刑事犯罪者への効果に関するデータは限定的であったという。NEJM誌2016年3月31日号掲載の報告。

アミロイドβ凝集を継時的に観察する方法

 全世界で4,600万人以上の方がアルツハイマー病に苦しんでいる。多くの治療法が提唱されており、その1つにアルツハイマー病の主な原因の1つであると考えられているアミロイドβペプチド(Aβ)凝集を阻害する治療がある。多くの場合、in vitro研究では、細胞や組織中のAβ凝集モニタリングに限界があることから、抗アミロイド薬のスクリーニングが制限される。スペイン・バルセロナ大学のAlba Espargaro氏らは、in vivoでアミロイド蓄積などのバクテリアを用いて、リアルタイムにin vivoでのAβ凝集を追跡するためのシンプルながらも強力な方法を開発した。Scientific reports誌2016年3月22日号の報告。

白内障手術は加齢黄斑変性と関連しているか

 白内障手術が加齢黄斑変性(AMD)の発症や進行と関連するという懸念が高まっているが、これまでの研究結果は一貫しておらず、臨床医を悩ませている。加えて、アジア人集団を対象として、超音波乳化吸引術時代にこの問題に取り組んでいるデータは十分ではないことから、韓国・ソウル大学盆唐病院のSang Jun Park氏らは、韓国国民栄養調査のデータを解析した。その結果、白内障手術とAMDとの関連は現在のところ明確ではないことを示した。左眼についてのみ後期AMDと関連が認められたが、著者は「偶然かもしれない」と述べている。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2016年3月31日号の掲載報告。

CoreValveを使用したTAVRの3年成績、開心術より良好

 重症の大動脈弁狭窄症患者に対する自己拡張型の経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR)は、開心術と比べて術後2年の成績が良好であることが知られている。その成績がその後も持続するかを見極めるべく、全米45施設による多施設共同前向き無作為化非劣性試験が行われ、Journal of the American College of Cardiology誌オンライン版2016年3月22日号に発表された。なお、本試験の資金はMedtronic社によりサポートされている。

駆出率低下心不全、一方向性シャント作成デバイスの有効性をヒトで確認/Lancet

 駆出率が低下した進行心不全患者において、一方向性の心房間シャント作成デバイスは安全に留置でき、早期の臨床転帰や血行動態転帰が改善される可能性があることが、カナダ・ラヴァル大学のMaria Del Trigo氏らの検討で示された。心不全患者では、上昇した左房圧を低下させることで症状が軽減し、入院のリスクが減少するとされる。V-Wave心房間シャント作成デバイスは、左心房から右心房への一方向性のシャントを作成することで左房圧を低下させるという。Lancet誌2016年3月26日号掲載の報告より。

中国の若者におけるアトピー性皮膚炎の特徴

 北京大学人民医院のPing Liu氏らは、中国青少年/成人の慢性対称性湿疹/アトピー性皮膚炎(AD)の臨床的特徴を調べ、中国版青少年/成人AD診断基準を作成する検討を行った。小児ADの臨床的特徴については広く研究されているが、青少年/成人ADについては大規模な検討がなかったという。42施設から2,662例のデータが集まり分析を行った結果、患者の77.5%が発症は12歳以降と遅発性で、ADの発現形態は不均一であったことなどを報告した。Chinese Medical Journal誌2016年4月5日号の掲載報告。

難治性リウマチに新規JAK阻害薬は有効か/NEJM

 生物学的疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)に効果不十分の難治性関節リウマチ(RA)患者に対し、新規経口薬の選択的ヤヌスキナーゼ(JAK)1および2阻害薬baricitinibの1日1回4mg投与で、12週時点の臨床的改善が認められたことが報告された。米国・スタンフォード大学医療センターのMark C. Genovese氏らが、24週間の第III相臨床試験の結果、報告した。baricitinibは第II相試験で、生物学的DMARDs投与歴のないRA患者の疾患活動性を低下したことが確認されていた。NEJM誌2016年3月31日号掲載の報告。

駆出率保持心不全、心房間シャント作成デバイスの安全性を確認/Lancet

 駆出率が保たれた心不全(HFPEF)に対する心房間シャント作成デバイス(IASD)の留置術は安全に施行可能であり、運動時の左室圧を低下させることが、ドイツ・ゲオルク・アウグスト大学ゲッティンゲンのGerd Hasenfuss氏らが行ったREDUCE LAP-HF試験で示された。HFPEFは心不全の一般的な形態と認識されているが、症状や予後を改善する治療法は確立されていない。病態生理は複雑であるが、とくに運動時の左室圧の上昇を特徴とし、これは重要な治療標的と考えられている。Lancet誌2016年3月26日号掲載の報告より。

トシリズマブは巨細胞性動脈炎に有効である(解説:金子 開知 氏)-514

巨細胞性動脈炎は、大動脈とその分枝の中~大型動脈に起こる肉芽腫性血管炎である。多くは50歳以上の高齢者に起こる疾患であり、とくに浅側頭動脈が好発部位で、最も重要な障害は失明である。臨床症状としては発熱、頭痛、視力・視野異常、下顎跛行、側頭動脈の圧痛や拍動を認める。また、約30%にリウマチ性多発筋痛症を合併する。検査所見では、赤沈亢進、CRP上昇を認める。治療は、中等量あるいは高用量のステロイドが第1選択である。しかし、ステロイド減量中の再燃や治療抵抗例が少なからず存在し、免疫抑制薬やTNF阻害薬の併用が試みられてきたが、有効性が十分とは言い難かった。近年、GCAに対してIL-6阻害薬であるトシリズマブ(tocilizumab:TCZ)の有効性が注目されている。

HOPE-3試験:仮説が不明で、かえって混乱を招く結果となった臨床試験(解説:桑島 巖 氏)-513

本試験の仮説がよくわからない。HOPE試験のようにACE阻害薬の“降圧を超えた心血管合併症予防効果”をARB検証するのであれば、サイアザイド利尿薬を併用せずに行うべきであったし、正常高値に対する降圧の有用性を検証するのであれば、ヒドロクロロチアジドではなく、降圧効果の確実なサイアザイド類似薬であるクロルタリドンあるいはインダパミドを併用するなり、降圧薬の用量調整をするなりして、さらに厳格に収縮期血圧で120mmHg前後まで下げるべきであった。本試験では降圧目標を設定しておらず、ただARBとサイアザイド利尿薬の固定用量を用いた場合のイベント抑制効果という、中途半端な試験である。

統合失調症患者への健康増進介入はやはり難しい

 統合失調症患者における早期死亡の最も一般的な原因は、心血管疾患である。デンマーク・オーフス大学病院のMette Vinther Hansen氏らは、短期試験で有効性が証明されている手法を用いて、非選択的な統合失調症外来患者における心血管リスク因子を減らせるかを検討した。さらに、どのようなベースライン特性が良好なアウトカムと関連しているかも検討した。The International journal of social psychiatry誌オンライン版2016年3月23日号の報告。

ピオグリタゾンと膀胱がんリスク~約15万人のコホート研究/BMJ

ピオグリタゾンの使用は膀胱がんのリスクを高め、使用期間や累積用量の増加に伴いリスクが増大することが、カナダ・ジューイッシュ総合病院のMarco Tuccori氏らの、約15万人を対象とした大規模コホート研究の結果、明らかにされた。また、同じチアゾリジン系(TZD)薬のロシグリタゾンでは関連が認められず、膀胱がんのリスク増大はピオグリタゾンに特有で、クラス効果ではないことが示唆されると結論している。ピオグリタゾンと膀胱がんとの関連については、多くの研究で矛盾する結果が報告されており、より長期間追跡する観察研究が求められていた。BMJ誌オンライン版2016年3月30日号掲載の報告。

閉経後ホルモン補充療法の血管への影響、開始時期で異なる?/NEJM

 閉経後早期(6年以内)に開始した経口エストラジオール療法は、頸動脈内膜中膜肥厚(CIMT)で評価される無症候性アテローム性動脈硬化の進行抑制と関連していることが明らかにされた。ただし、閉経後早期あるいは閉経後10年以上経過して開始した場合のいずれにおいても、心臓CTで評価されるアテローム性動脈硬化に有意な影響は認められなかった。米国・南カリフォルニア大学のHoward N. Hodis氏らが、健康な閉経後女性を対象としたELITE(Early versus Late Intervention Trial with Estradiol)試験の結果、報告した。これまで多くの研究で、閉経後まもなく開始したエストロゲンを含むホルモン療法の心血管疾患に対するベネフィットが示唆されている。しかし、閉経後ホルモン療法の心血管系への影響は治療開始時期で異なるという仮説(タイミング仮説)について、これまで検証されていなかった。NEJM誌オンライン版2016年3月31日号掲載の報告。

日本人アルツハイマー病、BPSDと睡眠障害との関連は

 アルツハイマー病(AD)における睡眠障害はBPSD(認知症の行動と心理症状)に影響を与える可能性がある。大阪大学保健センターの壁下 康信氏らは、ADの異なるステージにおける、睡眠障害とBPSDとの関連を検討した。その結果、非常に初期のAD患者において、睡眠障害とBPSDとの強い関連が認められたことを報告した。International journal of geriatric psychiatry誌オンライン版2016年3月21日号の報告。