日本語でわかる最新の海外医学論文|page:703

認知症者に対する抗精神病薬処方は地域差が大きい

 認知症高齢者に対する抗精神病薬使用は、安全規制により最近10年間で減少しているが、依然として使用率は高い。地理的条件差異が、臨床診療の相違や行動症状の管理のためのエビデンスに基づくガイドラインの遵守の欠如に影響している可能性がある。デンマーク・コペンハーゲン大学のJohanne Kobstrup Zakarias氏らは、認知症ケアにおける抗精神病薬使用の地理的条件差異について調査した。Journal of Alzheimer's disease誌オンライン版2016年8月24日号の報告。

中枢性睡眠時無呼吸、経静脈的神経刺激デバイスが有用/Lancet

 経静脈的神経刺激デバイスは、中枢性睡眠時無呼吸の重症度を軽減し、忍容性も良好であることが、米国・Advocate Heart InstituteのMaria Rosa Costanzo氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌2016年9月3日号(オンライン版2016年9月1日号)に掲載された。中枢性睡眠時無呼吸は、呼吸調節中枢からの神経細胞アウトプットの一時的な遮断によって発症し、呼吸刺激の喪失や気流停止を来す。心血管や脳血管疾患など広範な疾患にみられ、酸化ストレスを増強して基礎疾患の進展を促し、不良な転帰をもたらす可能性が示唆されている。remedeシステムと呼ばれる神経刺激療法は、横隔膜を収縮させる神経を経静脈的に刺激して正常呼吸に近づける埋め込み型デバイスである。

重症/最重症COPD、3剤配合吸入薬の臨床効果/Lancet

 重症/最重症の慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療において、吸入コルチコステロイド(ICS)+長時間作用型β2受容体刺激薬(LABA)+長時間作用型ムスカリン受容体拮抗薬(LAMA)の配合薬の吸入療法は、ICS+LABAよりも良好な臨床ベネフィットをもたらすことが、英国・マンチェスター大学のDave Singh氏らが実施したTRILOGY試験で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌2016年9月3日号(オンライン版2016年9月1日号)に掲載された。GOLDガイドラインは、COPDの増悪歴のある患者には、LAMAまたはICS+LABAを推奨しているが、これらを行っても多くの患者が増悪を来すため、実臨床ではICS+LABA+LAMAの3剤併用療法へと治療が強化されることが多い。このレジメンを簡便化した、プロピオン酸ベクロメタゾン(BDP)+フマル酸フォルモテロール(FF)+グリコピロニウム臭化物(GB)の配合薬の開発が進められている。

NORSTENT試験:人は冠動脈のみにて生くるものにあらず(解説:中川 義久 氏)-594

「人はパンのみにて生くるものにあらず」という言葉を皆さんは耳にしたことがあると思います。聖書の「マタイによる福音書」の有名な一節です。人は物質的な満足だけを目的として生きるものではなく、精神的なよりどころが必要であるといった意味合いでしょうか。医学界における位置付けは聖書にも近いともされるNEJM誌から、「人は冠動脈のみにて生くるものにあらず」というありがたい教えがもたらされました。

感覚トリックで患者の半数の眼周囲ジストニア症状が緩和

 良性本態性眼瞼痙攣患者や片側顔面痙攣患者の中には、感覚トリックを利用して症状を緩和させている患者もいることが知られている。感覚トリックの利用と重症度およびボツリヌス毒素療法との関連はわかっていなかったが、英国・St Mary's HospitalのCaroline L. S. Kilduff氏らによる前向き横断観察研究の結果、患者の半数は感覚トリックを利用しており、それは重症度と関連していたがボツリヌス毒素療法とは関連していないことが明らかとなったと報告した。今回の研究について著者は、「今後、たとえば感覚トリックの使用についてアドバイスしたり装置を作ったり、治療方針を考えるうえで役に立つかもしれない」とまとめている。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2016年9月8日号の掲載の報告。

がん患者の損傷リスクは診断の全過程で予防対策を/BMJ

 がん患者では、医原性損傷(iatrogenic injuries)および非医原性損傷(non-iatrogenic injuries)のリスクが、診断後だけでなく、診断前から上昇しており、診断の全過程を通じて予防対策を講じる必要があることが、スウェーデン・カロリンスカ研究所のQing Shen氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌オンライン版2016年8月31日号に掲載された。大腸がん、前立腺がん、乳がんの患者では、医原性損傷による死亡の増加を認め、がん患者における非医原性損傷のリスク上昇も知られている。これまでに、がんの診断後や治療後の損傷のリスクは検討されているが、診断前のリスクの評価は行われておらず、本試験はがんの診断的検査による医学的合併症の疾病負担を総合的に検討した初めての研究だという。

コントロール不良の重症喘息にbenralizumabは有用/Lancet

 好酸球増多を伴うコントロール不良な重症喘息の治療において、benralizumabは患者アウトカムを改善する可能性があることが、米国・ウェイクフォレスト大学のEugene R Bleecker氏らが実施したSIROCCO試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2016年9月2日号に掲載された。重症喘息の増悪は生命を脅かし、QOLを低下させる。好酸球増多は、喘息の重症度の悪化や肺機能の低下をもたらし、喘息増悪の頻度を上昇させる。benralizumabは、インターロイキン(IL)-5受容体αに対するモノクローナル抗体であり、抗体依存性細胞介在性細胞傷害作用(ADCC)によって好酸球を抑制するという。

歯科従事者の手湿疹有病率36.2%、そのリスク因子とは?

 歯科医療従事職は、手湿疹のリスクが高い職業の1つである。熊本大学大学院 公衆衛生学分野の皆本 景子氏らは、歯科医療従事者における職業性手湿疹の有病率とそのリスク因子を明らかにする目的でアンケート調査を行った。その結果、実際に歯科医療従事者の手湿疹有病率は高いことが明らかになり、著者は、「予防のための教育とより頻繁なパッチテストが必要」と述べている。Contact Dermatitis誌2016年10月号の掲載の報告。

トルリシティ週1回注射で糖尿病患者の負担軽減

 8月31日、日本イーライリリー株式会社は、同社の持続性GLP-1受容体作動薬デュラグルチド(商品名:トルリシティ皮下注0.75mgアテオス)の投薬制限期間が、9月1日に解除されることから、「新しい治療オプションの登場による2型糖尿病治療強化への影響」をテーマにプレスセミナーを開催した。

妊娠前の飲酒、週14杯未満までは受胎能に影響しない?/BMJ

 週14杯未満のアルコール摂取は、受胎能に明らかな影響はないようである。ビールとワインで受胎確率に差はないことも確認された。デンマーク・オーフス大学病院のEllen M Mikkelsen氏らが、どの程度のアルコール摂取が女性の受胎確率に影響を及ぼすかを検証した前向きコホート研究の結果を報告した。これまでは、少量~中等量のアルコール摂取は受胎能低下と関連することが報告されており、妊娠を希望する女性はアルコール摂取を控えるよう推奨されていた。ただし今回の結果について著者は、「受胎後、最初の数週間、胎児はアルコールに対してとくに脆弱であるため、妊娠を積極的に望む女性は、妊娠が否定されるまで妊娠可能期間のアルコール摂取は控えるべきである」とまとめている。BMJ誌オンライン版2016年8月31日号掲載の報告。

非ST上昇型急性冠症候群への早期侵襲的治療、15年追跡結果/Lancet

 非ST上昇型急性冠症候群(NSTE-ACS)に対する早期侵襲的治療は、非侵襲的治療と比較して死亡または心筋梗塞の発生を平均18ヵ月、虚血性心疾患による再入院を37ヵ月延長させた。NSTE-ACSへの早期侵襲的治療は死亡または心筋梗塞の発生率を減少させることがFRISC-II試験で初めて示されたが、今回、スウェーデン・ウプサラ大学のLars Wallentin氏らは、早期侵襲的治療の長期的な有益性について評価すべく、残存寿命の観点からFRISC-II試験の15年間の追跡調査におけるすべての心血管イベントについて解析した。結果を踏まえて著者は、「ほとんどのNSTE-ACS患者において、早期侵襲的治療は優先すべき治療選択肢であることが裏付けられた」とまとめている。Lancet誌オンライン版2016年8月25日号掲載の報告。

試験前の自信と試験後の落胆(解説:後藤 信哉 氏)-593

クロピドグレルは、ランダム化比較試験の結果に基づいて世界にて広く使用された。使用の拡大後にクロピドグレルの作用メカニズムが解明された。メカニズムに基づいて個別最適化を目指した用量調節を行えば、クロピドグレルの有効性、安全性はさらに増加すると信じている人もいた。

車両運転事故、とくに注意すべき薬剤は

 処方医薬品やOTC薬服用中の自動車運転に対する公衆衛生上の懸念は増大している。米国・ウエストバージニア大学のToni M Rudisill氏らは、特定の薬剤が車両衝突事故リスクの増加と関連しているかについてシステマティックレビューを行った。Accident; analysis and prevention誌オンライン版2016年8月25日号の報告。