日本語でわかる最新の海外医学論文|page:637

摂食障害への薬物療法、最新知見レビュー

 摂食障害治療では、一般的に薬物療法が行われる。米国・コロンビア大学のHaley Davis氏らは、神経性過食症、過食性障害(BED)、神経性やせ症の治療に用いられる薬剤に関してレビューを行った。最近の研究開発に焦点を当てつつ、適切な場合には、薬理学的薬剤を用いた摂食障害治療のための現在のエビデンスベースの概要を検討するため、古い研究から重要な知見を加えてレビューを行った。Current opinion in psychiatry誌オンライン版2017年8月12日号の報告。

PCI施行心房細動患者の抗血栓療法、2剤 vs.3剤/NEJM

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた心房細動(AF)患者において、ダビガトラン(商品名:プラザキサ)+P2Y12阻害薬による2剤併用抗血栓療法は、ワルファリン+P2Y12阻害薬+アスピリンの3剤併用抗血栓療法と比較して、出血リスクは低く、血栓塞栓イベントリスクは有意差がないことが確認された。米国・ベイム臨床研究所のChristopher P. Cannon氏らが、日本を含む41ヵ国414施設で実施された国際共同無作為化非盲検比較試験「RE-DUAL PCI試験」の結果を報告した。ワルファリン+2剤併用抗血小板薬を用いた3剤併用抗血栓療法は、PCI後のAF患者に対する標準治療であるが、出血リスクが高く新たな治療戦略が求められていた。NEJM誌オンライン版2017年8月27日号掲載の報告。

炭水化物の摂取増加で死亡リスク上昇/Lancet

 炭水化物摂取量の多さは全死亡リスク上昇と、また総脂質および脂質の種類別の摂取は全死亡リスクの低下と関連する。さらに総脂質および脂質の種類は、心血管疾患(CVD)、心筋梗塞、CVD死と関連していないが、飽和脂質は脳卒中と逆相関していることが確認された。カナダ・マックマスター大学のMahshid Dehghan氏らが、5大陸18ヵ国で全死亡および心血管疾患への食事の影響を検証した大規模疫学前向きコホート研究(Prospective Urban Rural Epidemiology:PURE)の結果、報告した。主要栄養素とCVDや死亡との関連性については、これまでのデータのほとんどが栄養過剰の傾向にある欧州や北米の集団からのもので、他の集団にも当てはまるか不明であった。著者は、「今回の結果を踏まえ、世界的な食事ガイドラインを再検討すべきである」と提言している。Lancet誌オンライン版2017年8月29日号掲載の報告。

持続性AFと心機能低下を有する患者に有益なのは?カテーテルアブレーションvs.薬物レートコントロール

 心房細動(AF)と左室収縮不全は、十分なレートコントロールが行われていても頻繁に併存する。しかしながら、AFおよびさまざまな要因に伴う左室収縮不全に関するこれまでのランダム化研究では、リズムコントロールの有益性を裏付ける十分なエビデンスがない。そこでオーストラリア・メルボルン大学のSandeep Prabhu氏ら研究グループが、AFを有する原因不明の左室収縮不全において、AFに対するカテーテルアブレーションが、薬物によるレートコントロールと比べて左室収縮不全を改善するかについて検討を行った。Journal of American College of Cardiology誌2017年8月22号に掲載。

EGFR変異陽性NSCLC1次治療薬としてのオシメルチニブの評価/JCO

 オシメルチニブは、Exon19、21といったEGFR遺伝子変異EFGR遺伝子変異と共にT790M変異に対する強力な阻害薬である。AURA試験に含まれる2つの未治療患者のコホートからEGFR変異型進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対する初回治療としてのオシメルチニブの臨床活性と安全性を検討した研究結果が発表された。

2型糖尿病へのリラグルチド、腎アウトカムも改善/NEJM

 2型糖尿病で心血管疾患ハイリスクの患者に対し、標準治療に加えリラグルチド(商品名:ビクトーザ)を投与することで、腎アウトカムは改善することが示された。リラグルチド投与群の持続性顕性アルブミン尿の新規発症率は、約4分の3に減少した。ドイツ・フリードリヒ・アレクサンダー大学エアランゲンのJohannes F.E.Mann氏らが、リラグルチドによる全死因死亡率の低下、心血管・細小血管アウトカムの改善効果を示した「LEADER」試験の、事前に規定した副次評価項目の腎アウトカムについて分析した結果で、NEJM誌2017年8月31日号で発表した。

カナキヌマブは心血管イベントリスクの抑制に有益か/NEJM

 インターロイキン-1βを標的とするヒトモノクローナル抗体のカナキヌマブ150mgを、心筋梗塞既往、高感度CRP値2mg/L以上の患者に毎3ヵ月投与することで、脂質値が低下せずとも心血管イベントの再発を長期にわたり抑制する効果があることが示された。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のP.M.Ridker氏らが、患者1万61例を対象に行ったプラセボ対照無作為化二重盲検試験で明らかにした。これまでの実験・臨床データから、脂質値の低下に依らず炎症を抑えることで、心血管疾患リスクが低下する可能性が示されていたが、アテローム血栓症における炎症抑制の効果については検証されていなかった。NEJM誌オンライン版2017年8月27日号掲載の報告

扱っている題材は大変真面目なものであるが(解説:野間 重孝 氏)-726

多くの先進国においては、ガイドライン上に今でも記載はされているものの、実臨床の場で急性心筋梗塞に対する経静脈的血栓溶解療法は、何らかの理由で救急センターへの搬送が容易でないような例外例を除いては、すでに行われなくなっているといってよいと思われる。しかしながら一方で、医療資源の乏しい環境下での機械的再灌流の代替え療法として、発展途上国などではいまだに重要な役割を担っていることも事実であるといえる。

心血管イベント抑制薬、肺がん発症も抑制/ESC2017

 IL-1βは炎症性アテローム性動脈硬化症の継続的な進行に関与することで知られているが、がんの微小環境においても、その増殖や転移に関与しているという仮説がある。そのような中、IL-1β阻害薬canakinumab(ACZ885)が、炎症を軽減することによって心血管疾患および肺がんリスクのリスクを低下させるという、最新の試験結果が2017年8月27日、ESC(欧州心臓病学会)2017で発表された。

認知症発症への血圧の影響、ポイントは血圧変動:九州大

 これまでの研究では、診察室血圧変動の大きさが、認知障害や認知症のリスク因子であることが報告されている。しかし、家庭での血圧測定によって評価された日々の血圧変動と認知症発症との関連を調べた研究はなかった。九州大学の大石 絵美氏らは、久山町研究に登録されている日本人高齢者の日常血圧変動と認知症リスクとの関連を調査した。Circulation誌2017年8月8日号の報告。

低・中所得国では新生児の2割が胎児発育遅延/BMJ

 低・中所得国では、新生児のうちおよそ5人に1人が胎児発育遅延(Small for gestational age:SGA)で出生し、そのうち4人に1人が新生児期(生後28日以内)に死亡しているという。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のAnne CC Lee氏らが、低・中所得国の14の集団ベースから成る出生コホートChild Health Epidemiology Reference Group(CHERG)のデータを分析して明らかにした。BMJ誌2017年8月17日号掲載の報告。

網膜動脈閉塞症、民族性や心血管・腎疾患との関連は?

 これまでアジアにおける、網膜動脈閉塞症に関する住民ベースのデータは限られていたが、シンガポール・国立眼科センターのNing Cheung氏らによるシンガポール眼疾患疫学研究において、中国人、インド人およびマレー人の計約1万人中、網膜動脈閉塞症の有病率は約1%、インド人で有病率が最も高く、従来から指摘されている心血管リスク因子、脳卒中のほか、慢性腎臓病との関連が明らかとなった。網膜動脈閉塞症の存在は、脳のみならず腎臓での血管の塞栓性イベントおよび損傷の徴候である可能性を示唆する結果であり、著者は「これらが長期的な研究で確認されれば、網膜動脈閉塞症を有する患者では心血管および腎臓の評価が必要となるだろう」とまとめている。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2017年8月24日号掲載の報告。

統合失調症患者、ライフスタイル改善が課題

 統合失調症患者において、食習慣や生活習慣の改善が、平均余命、疾患の合併症および予後に、影響を及ぼす可能性がある。バーレーン・アラビア湾大学のHaitham Ali Jahrami氏らは、バーレーンの統合失調症患者の食習慣や生活習慣行動を評価し、合併症との関連について検討を行った。Asian journal of psychiatry誌2017年8月号の報告。

NT-proBNPガイド心不全治療の無益性が明らかに/JAMA

 駆出率が低下した心不全(HFrEF)患者において、NT-proBNPガイド治療戦略のアウトカム改善効果は、標準治療によるものと変わらないことが、米国・デューク臨床研究所(DCRI)のG. Michael Felker氏らによる大規模無作為化試験「GUIDE-IT試験」の結果、示された。ナトリウム利尿ペプチドは、HF重症度のバイオマーカーであり、有害アウトカムの予測因子である。これまで小規模試験で、ナトリウム利尿ペプチド値をベースに調整を行うHF治療(ガイド治療)の評価は行われているが、結果は一貫していなかった。JAMA誌2017年8月22日号掲載の報告。

急性期脳梗塞患者の血流再開、吸引型 vs.ステント型(ASTER Trial)(中川原譲二氏)-725

急性期脳梗塞患者に対する吸引型デバイスによる血流再開(contact aspirationまたはa direct aspiration first pass technique[ADAPT])と、ステントリトリーバーによる血流再開の優劣は、両者の無作為化比較試験の欠如からいまだに不明である。そこで、主幹動脈閉塞を有する急性期脳梗塞患者において、良好な再開通のための第1選択となる血管内治療法として、吸引型デバイスまたはステントリトリーバーを用いた場合の有効性と有害事象を比較する目的で、ASTER試験(The Contact Aspiration vs Stent Retriever for Successful Revascularization study)が行われた。

CAR-T療法、難治性・再発B細胞性ALLに承認:FDA

 Novartisは、米国食品医薬品局(FDA)が、難治性または2回以上再発した25歳までのB細胞性急性リンパ芽球性白血病(ALL)患者の治療に対し、初のキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法tisagenlecleucel(CTL019)となる承認したことを2017年8月30日発表した。tisagenlecleucelは、FDAによって承認された遺伝子導入に基づく最初の治療法である。