日本語でわかる最新の海外医学論文|page:637

ACS疑い患者のイベント指標は高感度心筋トロポニンI値5ng/L/JAMA

 急性冠症候群(ACS)疑い患者で高感度心筋トロポニンI値が5ng/L未満の場合は、30日以内の心筋梗塞や心臓死のリスクが低いことが示された。英国・エディンバラ大学のAndrew R. Chapman氏らが、ACS疑い患者におけるリスク層別化ツールとして、受診時の心筋トロポニンIの閾値5ng/Lの性能を評価したシステマティックレビューとメタ解析の結果を報告した。高感度心筋トロポニンI検査はACS疑い患者の評価に広く使用されており、5ng/L未満は低リスクとみなされているが、至適閾値であるかは明らかになっていない。JAMA誌2017年11月11日号掲載の報告。

カナキヌマブの心血管イベント予防効果、CRP低下がカギ?/Lancet

 米国・ブリガム&ウィメンズ病院のPaul M Ridker氏らは、CANTOS試験の2次解析の結果、「カナキヌマブ投与3ヵ月後の高感度C反応性蛋白(hsCRP)値低下の大きさは、治療継続により最も恩恵が得られそうな患者を特定する簡単な臨床的手段(clinical method)といえるかもしれない」との見解を示すとともに、「カナキヌマブ投与後の炎症反応が低いほど予後良好であることが示唆された」ことを報告した。ヒト型抗ヒトIL-1βモノクローナル抗体のカナキヌマブは、心筋梗塞既往患者を対象としたCANTOS試験において、脂質に影響せず炎症と心血管イベントを抑制することが示されている。しかし、どの患者集団で最も有益なのか、またhsCRP値の低下が個々の患者で臨床的有益性と関連するかどうかは不明であった。Lancet誌オンライン版2017年11月13日号掲載の報告。

まだBMSを使う理由があるか?(解説:上田恭敬氏)-769

本試験では、安定狭心症も急性冠症候群も含めた75歳以上のPCI施行患者を対象として、まずDAPTの期間を1〜6ヵ月の間(short DAPT)で臨床的必要性に応じて決めた後に、PCIに使用するステントをDES(Synergy、Boston Scientific)またはBMS(Omega or Rebel、Boston Scientific)に無作為に割り付けた。患者に対しては、「SENIOR stent」の表記で統一することによって、いずれに割り付けられたかわからないようにした(single-blind)。

非喫煙女性の肺がんに飲酒が関連か

 生涯非喫煙者における肺がんの病因はほとんどわかっていない。スペイン・コルーニャ大学病院のJose A. Garcia Lavandeira氏らが、ケースコントロール研究のプール解析で、生涯非喫煙者における肺がんリスクにおける飲酒の影響を検討したところ、ワインと蒸留酒の摂取が、とくに女性で、肺がんリスクを増加させる可能性が示唆された。ただし、本研究の限界を考慮すると本結果を慎重にとらえるべき、と著者らは述べている。European journal of public health誌オンライン版2017年11月13日号に掲載。

重度のストレスやうつ病からの復職に効果的なリハビリは

 うつ病やストレスに関連する精神疾患による世界的な負担は大きく、効果的なリハビリテーションが必要とされている。自然療法のリハビリテーションは、精神疾患患者の復職への手助けとなる可能性がある。スウェーデン農業科学大学のPatrik Grahn氏らは、長期的な重度のストレスやうつ病を有する患者群を対象に、自然療法のリハビリテーションプログラムの期間が、プログラム開始1年後のアウトカムに対し、どのような影響を及ぼすかについて調査した。International journal of environmental research and public health誌オンライン版2017年10月27日号の報告。

EGFR変異陽性肺がん、今後の治療シークエンスは?

 EGFR変異陽性進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対するEGFR-TKIの選択肢が増えてきている。これらの薬剤をどう使用すれば、患者さんにとって最大限のベネフィットが得られるのだろうか。2017年10月30日に開催されたアストラゼネカ株式会社主催のメディアセミナーで、関 順彦氏(帝京大学医学部附属病院腫瘍内科 教授)が、開発中の薬剤を含め、各薬剤の無増悪生存期間(PFS)や毒性から、今後の治療シークエンスについて展望した。

セリチニブ、食事との服用で有効性維持と毒性低減を両立(ASCEND-8)/WCLC2017

 セリチニブ(商品名:ジカディア)750mg空腹時投与は、未治療の進行ALK陽性NSCLCに優れた効果を示すものの、下痢、悪心嘔吐などの消化器症状が発現する。ASCND-8は、ALK陽性NSCLCに対し、セリチニブ450または600mgを低脂肪食と服用した群と、750mgの空腹時服用を比較した無作為化オープンラベル試験。第18回世界肺癌(WCLC)では、未治療患者における有効性の中間解析と、安全性のアップデート結果について、韓国・Yonsei Cancer CenterのCho BC氏が発表した。

発症後6時間超でも血栓除去術は有益か/NEJM

 急性虚血性脳卒中で、症状が現れてから6~24時間が経過しているが臨床的障害と梗塞体積の重症度が一致しない患者については、標準的治療だけでなく、血栓除去術を合わせて行ったほうが90日後の障害アウトカムが良好であることが明らかにされた。米国・エモリー大学のR.G.Nogueira氏らが、206例を対象に行った無作為化試験で示された。虚血性脳卒中発症後6時間超の血栓除去術については、これまでそのベネフィットは明らかにされていなかった。NEJM誌オンライン版11月11日号掲載の報告。

リバーロキサバン、下肢末梢動脈疾患に効果/Lancet

 安定末梢動脈/頸動脈疾患患者に対する1日2回投与の低用量リバーロキサバン(商品名:イグザレルト)+アスピリン1日1回の併用投与は、アスピリン単独投与に比べ、主要有害心血管・下肢イベントリスクを有意に低減することが、カナダ・マックマスター大学のSonia S. Anand氏らによる無作為化プラセボ対照二重盲検試験で示された。大出血は増大したが、致死的出血や重大臓器の出血は増大せず、著者は、「この併用療法は、末梢動脈疾患患者の治療において重大な進化を意味するものだ」と述べている。なお、リバーロキサバン単独(5mg)ではアスピリン単独と比べて、主要有害心血管イベントは有意に低減せず、主要有害下肢イベントは低減したが大出血の増大が認められたという。Lancet誌オンライン版2017年11月10日号掲載の報告。

派手さはないが重要な研究(解説:野間 重孝 氏)-767

急性心筋梗塞患者の急性期の治療において、酸素の使用が初めて報告されたのは古く1900年までさかのぼり、以来今日までごく当たり前のように行われてきた。血液酸素飽和度を上昇させることにより、より効率的に虚血心筋に酸素を供給することができるだろうという発想から生まれた治療法で、この理屈には大変説得力があったことから、疑われることなく長く行われ続けた。80年代になってパルスオキシメータによるモニターが容易に行えるようになっても、この考え方の根本が見直されることはなかった(パルスオキシメータの発明は1974年で、わが国で行われた)。

ADHD児への有酸素運動効果は

 ADHDは、世界の小児の約8~10%に発症する最も一般的な精神神経疾患の1つである。ADHD児の大多数が成人期まで持続的な症状を有していることを示唆する研究が増加しており、ADHDによる人生経過への影響を明らかにしている。ADHD管理の主流は、薬物療法と、行動および心理的な介入であり、潜在的な治療戦略としての運動介入については、あまり注目されていない。シンガポール国立大学のQin Xiang Ng氏らは、ADHD児に対する運動介入の短期的および長期的な影響を調査するため、システマティックレビューを行った。Complementary therapies in medicine誌2017年10月号(オンライン版8月31日号)の報告。

単純性尿路感染症へのNSAID、抗菌薬と比較/BMJ

 単純性下部尿路感染症(UTI)の女性患者において、ジクロフェナクの使用は抗菌薬の使用を減らすが、ノルフロキサシンと比較して症状軽減に関して劣性であり、腎盂腎炎のリスクを増大させる可能性が、スイス・ベルン大学のAndreas Kronenberg氏らによる無作為化二重盲検非劣性試験の結果で示された。著者は、「選択的な抗菌薬使用の開発と検証を、今後の試験で行うことが必要だ」と述べている。BMJ誌2017年11月7日号掲載の報告。

ドイツ製人工網膜、初の研究者主導臨床試験

 末期網膜色素変性症患者を対象にして行った、人工網膜Alpha AMS(Retina Implant AG社、ドイツ)に対する研究者主導臨床試験の成績が、英国・オックスフォード大学のThomas L. Edwards氏らにより初めて報告された。6例中5例で視機能が改善し、最長24ヵ月まで持続していることが認められた。好成績が示された要因について著者は、「埋植手術はなおチャレンジングなものだが、光干渉断層撮影(OCT)ガイダンスのような新しい技術の開発により、手術手技を改良することができた」と述べている。Ophthalmology誌オンライン版2017年10月27日号掲載の報告。

好酸球性心筋炎の特徴、治療、予後は?

好酸球性心筋炎は致死性の急性炎症心臓疾患である。この疾患に関する大規模な症例研究や臨床試験は、これまでに報告されていない。米国カリフォルニア大学サンディエゴ校のMicela Brambatti氏ら研究グループは、過去のデータベースから組織的に証明された好酸球性心筋炎を系統的に見直し、好酸球性心筋炎の臨床的な特徴、治療および予後について調査した。Journal of American College of Cardiology誌2017年11月7日号に掲載。