日本語でわかる最新の海外医学論文|page:608

ミトコンドリアATPシンターゼと加齢や認知症との関連

 アルツハイマー病などの認知症が増加する根本的な要因は、老化である。老化を治療戦略とする考え方は新しいものではないが、老化と加齢による疾患が分子レベルで、どれほど密接に関連しているかはよくわかっていない。米国・ソーク研究所のJoshua Goldberg氏らは、アルツハイマー病の候補薬J147の分子標的を同定し、老化と認知症との新規分子リンクを発見するための検討を行った。Aging cell誌オンライン版2018年1月7日号の報告。

インフルエンザと心筋梗塞に有意な関連/NEJM

 呼吸器感染症、とくにインフルエンザと急性心筋梗塞には、有意な関連が認められることが明らかにされた。インフルエンザの感染が検査で確認された後の1週間以内に、急性心筋梗塞で入院するリスクは、B型で約10倍、A型で約5倍に増大する。また、RSウイルスについても、同リスクは約4倍に上昇することが示された。カナダ・トロント大学のJeffrey C. Kwong氏らが、自己対照ケースシリーズ試験を行い明らかにしたもので、NEJM誌2018年1月25日号で発表した。これまでにも、インフルエンザ感染と急性心筋梗塞との関連を示唆した試験結果はあったが、インフルエンザ感染の確認に非特異的な検査方法を用いる、バイアスを受けやすい試験デザインを採用するなどの欠点があったという。

軽度アルツハイマー病への抗Aβ抗体、第III相試験の結果/NEJM

 軽度アルツハイマー病患者に対するヒト化モノクローナル抗体solanezumabの投与(400mgを4週ごと)について、認知機能低下を遅らせる有意な効果は認められなかった。米国・コロンビア大学のLawrence S. Honig氏らが、2,129例を対象に行った第III相の無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果を、NEJM誌2018年1月25日号で発表した。アルツハイマー病は、アミロイドβ(Aβ)斑と神経原線維変化を特徴とするが、solanezumabは、可溶性Aβ(原線維アミロイドとして沈着する前の段階で、シナプスで毒性を引き起こすとされるペプチド)が、脳から除去される量を増やすようデザインされた。

NSCLCのニボルマブ、2年後もドセタキセルに対しOS改善(CheckMate-017、057プール解析)/JCO

 既治療の進行非小細胞肺がん(NSCLC)においてニボルマブとドセタキセルを比較した2つの第III相試験(扁平上皮がんでのCheckMate-017非扁平上皮がんでのCheckMate-057)のプール解析の更新結果が報告され、ニボルマブはドセタキセルと比較し全生存期間(OS)を延長していることが示された。

大腸がんの高齢者、心血管疾患発症率が約3倍

 大腸がんの高齢者は、心血管疾患(CVD、脳卒中および心筋梗塞)およびうっ血性心不全(CHF)を発症する危険性が高いことを、米国アラバマ大学のKelly M. Kenzik氏らが報告した。また、糖尿病や高血圧が化学療法と相互に影響し、心血管疾患の罹患リスクを高めることが示唆された。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2018年1月16日号に掲載。

ADHDと電子タバコ、水タバコ、可燃性タバコの使用との関連は?

 最近、電子タバコや水タバコなどの代替タバコ製品の使用が、若者の間で増加している。代替タバコ製品の使用開始が、ADHD症状と関連しているかは、よくわかっていない。米国・南カリフォルニア大学のNicholas I. Goldenson氏らは、青年期の喫煙や電子タバコなどの使用開始とADHD症状との関連について、調査を行った。Journal of pediatric psychology誌オンライン版2018年1月2日号の報告。

重症肥満への外科治療、そのリスクとベネフィット/JAMA

 肥満外科手術を受けた重症肥満患者は、内科的治療を受けた患者と比較すると臨床的に重大な合併症リスク増大と関連しているが、その半面、肥満関連の併存疾患のリスクが低いことが明らかにされた。ノルウェー・Vestfold Hospital TrustのGunn Signe Jakobsen氏らが中央値6.5年間追跡したコホート研究の結果で、JAMA誌2018年1月16日号で発表された。これまで、両者の有益なアウトカムおよび有害なアウトカムとの関連は、明らかにされていなかった。結果を踏まえて著者は、「臨床決定プロセスにおいて、合併症リスクは考慮されなければならない」とまとめている。

夜間血圧の極端な低下は、緑内障の有意なリスク因子

 緑内障性視神経症には、夜間血圧が低いということよりもextreme dipping(昼間と比較して夜間血圧が>20%低下)が影響していることが、ベネズエラ・University of Zulia-MaracaiboのJesus D. Melgarejo氏らによる同国住民を対象とした横断研究で示された。結果を踏まえて著者は、「緑内障の高リスク者における夜間血圧の著明な低下を考慮した、さらなる研究が必要である」とまとめている。Ophthalmology誌オンライン版2018年1月5日号掲載の報告。

高齢者のスタチン非順守に関連する因子~メタ分析

 高齢者のスタチン服用における非順守や中断には、非白人、喫煙、低収入、高い患者負担金、1次予防などが関連することを、オーストラリア・Monash大学のRichard Ofori-Asensoらが報告した。著者らは「金銭的・社会的バリア、疾患リスクに関する患者の認識、ポリファーマシーなど、潜在的に修正可能な因子を対象とした介入によって、高齢者のスタチン服用を改善する可能性がある」としている。The Journals of Gerontology誌Series Aオンライン版2018年1月19日号に掲載。

妊婦のうつ病と子供の成長との関連

 母親のうつ病と子供の成長との関連について、正確な見解は報告されていない。これは、子供の性別による影響に注目が限定されている可能性がある。米国・アメリカ国立衛生研究所のHyojun Park氏らは、母親のうつ病時期と子供の成長との関連について、とくに性差に注目し、集団ベースの出産コホートを用いて評価を行った。Obesity誌2018年1月号の報告。

肥満DM患者に胃バイパス手術を加える必要性は?/JAMA

 肥満を伴う2型糖尿病患者に対して、生活習慣介入に力点を置いた医学的管理のみを行った場合と比べて、ルーワイ胃バイパス術を併用したほうが、5年追跡時点の糖尿病の3つの評価項目(HbA1c、脂質、収縮期血圧)は、有意に良好さを維持していたことが示された。米国・ミネソタ大学のSayeed Ikramuddin氏らが、2つの無作為化試験「Diabetes Prevention Program」と「LookAHEAD試験」(それぞれ介入期間は2年)の被験者の観察フォローアップの延長試験の結果、報告した。ルーワイ胃バイパス術は、糖尿病をターゲットとした治療として有効性が確立しているが、効果の持続性については明らかになっていなかった。JAMA誌2018年1月16日号掲載の報告。

糖尿病になりやすい民族…(解説:吉岡成人 氏)-806

糖尿病の発症リスクには人種間差があり、コホート研究では、白人に比べアジア人やヒスパニック、黒人で糖尿病の発症率が高いことが知られている。また、中年女性を対象とした米国におけるNurses’ Health Study(NHS)では、18歳以降の5kgの体重増加に伴う糖尿病の発症リスク(相対リスク)について、白人が1.37であるのに対し、黒人1.38、ヒスパニック1.44、アジア人では1.84と、アジア人はわずかな体重増加でも糖尿病を発症しやすいことが報告されている(Shai I, et al. Diabetes Care. 2006;29:1585-1590.PMID: 16801583)。

ニボルマブ・イピリムマブ併用、MSI-H大腸がんで有効性/ASCO-GI2017

 ブリストル・マイヤーズ スクイブ社(本社:米国ニューヨーク/CEO:ジョバンニ・カフォリオ)は2018年1月20日、第II相CheckMate-142試験から、dMMRまたはMSI-Hの転移性大腸がん患者を対象にニボルマブ(商品名:オプジーボ)とイピリムマブ(商品名:ヤーボイ)の併用療法を評価した新たなデータを発表した。これらのデータは、米国・サンフランシスコで開催された2018年消化器がんシンポジウム(ASCO-GI)において発表され、Journal of Clinical Oncology誌にも同時に掲載された。

病的肥満、肥満外科手術で死亡率減少/JAMA

 肥満症患者において、肥満外科手術(腹腔鏡下での胃バンディング術、ルーワイ胃バイパス術、またはスリーブ状胃切除術)は、手術治療を行わない通常ケアと比較して、全死因死亡率の低下と関連することが示された。イスラエル・Clalit Health ServicesのOrna Reges氏らが、イスラエルの半数超の国民が加入する健康保険データを用いて行った後ろ向きコホート研究の結果で、追跡期間中央値は約4.5年間であった。著者は「通常ケアの肥満症マネジメントのみと比較した、3タイプの肥満外科手術の有益性アウトカムの文献記述は限られているが、それらに今回のエビデンスを加えたい」とまとめている。JAMA誌2018年1月16日号掲載の報告。

術後オピオイド処方と乱用の関連/BMJ

 オピオイドの乱用が世界的に急増している。手術を受けた患者の退院時のオピオイド投与の割合は、非手術例のほぼ4倍に達するが、医師による習慣的なオピオイド処方の、乱用への影響は不明だという。米国・ハーバード・メディカル・スクールのGabriel A. Brat氏らは、米国におけるオピオイドの不適正使用の大幅な増加には、術後にオピオイドを処方された患者への薬剤の補充(refill)および処方期間の延長が関連することを示し、BMJ誌2018年1月17日号で報告した。

人工知能と糖尿病診療の未来予想図(解説:住谷哲氏)-805

Googleの子会社であるGoogle DeepMindが開発した人工知能(Artificial Intelligence:AI)AlphaGoが、世界最強の囲碁棋士とされる柯潔を3局全勝で破ったのは昨年(2017年)である。AlphaGoはその前年に、かつての世界王者であったイ・セドルを4勝1敗で破っている。これがいかに衝撃的であったかは、『Nature』にAlphaGoの開発論文が掲載されたことからもよくわかる1)。このAlphaGoの基礎となった技術が、本論文でも用いられた深層学習(ディープラーニング:deep learning)である。深層学習とは、ヒトが自然に行うタスクをコンピュータに学習させる機械学習の手法の1つであり、AIの急速な発展を支える基礎技術である。深層学習はヒトのニューロンをモデルとした数理モデルであり、階層型ニューラルネットワークとも呼ばれる。階層型ニューラルネットワークのなかで、畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network:CNN)は、とくに画像認識に優れたシステムであり、前述のAlphaGoも本論文で用いられたディープラーニングシステム(DLS)も畳み込みニューラルネットワークを基礎に構成されている。

大腸ポリープも身体活動や座位時間に関連

 定期的なレクリエーションでの中~高強度の身体活動(rMVPA)は大腸がん(CRC)リスク低下と関連しているが、前がん状態の前駆病変である大腸ポリープとの関連を検討した研究はほとんどない。今回、カナダ・アルバータヘルスサービスのDarren R. Brenner氏らが、大規模なCRCスクリーニング集団でスクリーニング時の身体活動および座位時間とポリープとの関連を調べたところ、とくに女性で、rMVPAの増加とポリープ有病率の減少の関連が示唆された。また、とくに男性で、習慣的な座位時間が短くてもポリープの存在に関連していた。Cancer epidemiology誌オンライン版2018年1月17日号に掲載。