日本語でわかる最新の海外医学論文|page:595

慢性肝疾患リスクを低減する遺伝要因が明らかに/NEJM

 HSD17B13のスプライス変異体rs72613567:TAが、脂肪肝や脂肪性肝炎への進展リスク低下と関連することが、米国・Regeneron Genetics CenterのNoura S. Abul-Husn氏らによる検討で明らかになった。約4万7,000例を対象にした「DiscovEHRヒト遺伝学試験」のエクソーム解析データに加え、複数のコホート試験などを基にした検証結果で、NEJM誌2018年3月22日号で発表された。慢性肝疾患の基礎を成す遺伝要因は、新たな治療ターゲットを明らかにできる可能性があることから、解明への期待が寄せられていた。

ジェネリック希少の医薬品、米国で価格高騰/BMJ

 米国において特許期限切れだがジェネリック承認薬がない処方薬のうち、半数超は米国外で少なくとも1社が承認を受けており、半数弱は4社以上が承認製造していた。米国・ジョンズ・ホプキンス大学のRavi Gupta氏らが、1939~2017年に米国食品医薬品局(FDA)で承認を受け、その後特許期限が切れた薬剤などを対象に行った観察試験で明らかにしたもので、BMJ誌2018年3月19日号で発表した。米国では、特許期限の切れた処方薬の一部が、競合会社が少ないために急激に価格が高騰し、入手が困難になるといった問題が生じている。今回の結果を受けて著者は、「それらの処方薬について、米国外からの輸入販売規制などを緩和化することで、適正な市場競争が促され、価格低下や患者への安定的な供給につながるだろう」とまとめている。

世界貿易センターテロ事件後、アジア系アメリカ人において予想されるPTSDに関連する要因

 2001年9月11日に起こった世界貿易センターでのテロ事件では、チャイナタウンや南アジア人が多く働くセンター周辺の施設も被害にあった。しかし、アジア人を対象とした、テロ事件のメンタルヘルスへの影響に焦点を当てた研究は行われていなかった。米国・フォーダム大学のWinnie W. Kung氏らは、テロ被害を受けたアジア人を対象に、その後のPTSD(心的外傷後ストレス障害)の有病率、リスク、保護因子に関する調査を行った。Journal of urban health誌オンライン版2018年2月15日号の報告。

早産児の動脈管開存症には高用量経口イブプロフェンが有効/JAMA

 動脈管開存症(PDA)の早産児への薬物療法による動脈管閉鎖の効果では、高用量の経口イブプロフェンが、標準用量の静脈内イブプロフェンや静脈内インドメタシンに比べて良好であることが、カナダ・ダルハウジー大学のSouvik Mitra氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2018年3月27日号に掲載された。早産児のPDAでは保存的管理が重視されるようになっているが、血行動態的に重要なPDAを発症した患児への薬物療法による介入では、さまざまな治療法が行われているという。

非喫煙者の非扁平上皮肺がん、遺伝的寄与が大

 肺がんの発症には環境的因子や遺伝的因子の影響が強いが、組織型別の遺伝的寄与は不明である。メリーランド大学のShamus R. Carr氏らが喫煙者と非喫煙者における組織型への寄与を調査したところ、非喫煙者の非扁平上皮がんの発症における遺伝的素質を支持する結果が得られた。Journal of thoracic oncology誌オンライン版2018年4月4日号に掲載。

30歳未満で原発不明の悪性黒色腫が増加

 原発不明悪性黒色腫(MUP)の疫学はよくわかっていない。米国・ケース・ウェスタン・リザーブ大学附属病院のJeffrey F. Scott氏らは、米国の地域がん登録を用いて解析を行い、StageIV MUPの発生率が増加しており、その予後因子は年齢や外科治療など、原発既知のStageIV悪性黒色腫(MKP)と類似していることを明らかにした。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2018年3月23日号掲載の報告。

米国の長期介護における向精神薬を使用した認知症ケア改善に関する研究

 養護老人施設における認知症ケア改善のための、メディケアおよびメディケイド・サービスセンター(CMS)国家パートナーシップ(以下、パートナーシップ)は、抗精神病薬の処方の割合を測定し、認知症者のケアの質を向上させるために設立された。米国・ミシガン大学のDonovan T. Maust氏らは、長期介護を受ける高齢者への抗精神病薬および他の向精神薬の処方傾向とパートナーシップとの関連について検討を行った。JAMA internal medicine誌オンライン版2018年3月17日号の報告。

心筋梗塞患者のせん妄への抗精神病薬、安全性を比較/BMJ

 急性心筋梗塞による入院患者へのハロペリドール投与開始から7日以内の死亡リスクは、非定型抗精神病薬に比べわずかに高いことが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のYoonyoung Park氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2018年3月28日号に掲載された。外来患者や介護施設入居者の研究では、定型抗精神病薬は非定型抗精神病薬に比べ、死亡リスクが高いことが一貫して示唆されている。一方、抗精神病薬を入院患者のせん妄の症状管理に使用した場合の相対的な安全性に関するエビデンスは、ほとんどないという。

アテゾリズマブと化学療法の併用、扁平上皮肺がん1次治療でPFS延長(IMpower131)

 ロシュ社は2018年3月20日、第III相臨床試験であるIMpower131試験において、2つの主要評価項目の1つである無増悪生存期間(PFS)について、アテゾリズマブ(商品名:テセントリク)と化学療法(カルボプラチン+nab-パクリタキセル)の併用療法により、化学療法単独と比較して、進行扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療における病勢進行または死亡リスクが低下(PFS延長)したことを発表した。アテゾリズマブと化学療法の併用における安全性は、これまで各薬剤で認められている安全性プロファイルと一致しており、新たな安全性のシグナルは確認されなかった。今回の中間解析の時点では、統計学的に有意な全生存期間(OS)の延長は観察されておらず、試験は計画どおり継続する。これらの成績は、今後開催されるがん関連学会で発表される予定。

日本人若年者のピロリ除菌療法、第1選択は?

 若年者のHelicobacter pylori(以下、ピロリ菌)感染に対する除菌治療は、胃がん予防に有効である。今回、JAPAN GAST Study Groupが、プロトンポンプ阻害薬ベースのトリプル療法(PACおよびPAM)について若年者での有効性を多施設無作為化比較試験で検討したところ、PAMによる除菌率がPACより有意に高いことが示された。研究グループは「抗菌薬感受性試験が実施できない場合、PAMが若年者のピロリ菌除菌の第1選択となりうる」としている。Journal of Infection and Chemotherapy誌オンライン版2018年3月28日号に掲載。

アルコール以外の飲料摂取とうつ病リスク

 最近の疫学研究では、アルコール以外のさまざまな種類の飲料の消費とうつ病リスクとの関連が検討されているが、その関連性は矛盾した結果として報告されている。韓国・慶煕大学校のDami Kang氏らは、この関連性についての定量的な評価を行うため、観察研究のシステマティックレビューおよびメタ解析を行った。European journal of clinical nutrition誌オンライン版2018年3月2日号の報告。

米国で死亡率が増えている感染症は?/JAMA

 1980~2014年の米国における感染症死亡の動向を調べた結果、ほとんどの感染症疾患で死亡は減少していたが、郡(county)レベルでみるとかなりの格差があった。さらに同期間中に下痢症の死亡は増大していたという。米国・ワシントン大学のCharbel El Bcheraoui氏らによる調査報告で、JAMA誌2018年3月27日号で発表された。感染症はほとんどが予防可能だが、米国ではいまだに公衆衛生上の脅威とみなされている。そうした中でこれまで、郡レベルの感染症死亡の推定値は把握されていなかった。

急性骨髄性白血病、微小残存病変が再発の予測因子に/NEJM

 急性骨髄性白血病(AML)では、完全寛解中の分子レベルでの微小残存病変の検出が、再発率や生存率に関して、高度な独立の予後因子としての意義を持つことが、オランダ・エラスムス大学のMojca Jongen-Lavrencic氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2018年3月29日号に掲載された。AML患者は完全寛解に到達することが比較的多いが、再発率が依然として高い。次世代シークエンシングにより、ほぼすべての患者で分子レベルの微小残存病変の検出が可能となったが、再発の予測における臨床的な意義は確立されていないという。

初回エピソード統合失調症患者における抗精神病薬中止後の長期的な影響

 初回エピソード精神疾患の治療が成功した後、抗精神病薬を中止することによる長期的な影響は、十分に研究されていない。中国・香港大学のChristy L M Hui氏らは、初回エピソード精神疾患における早期維持療法の決定と10年間の臨床的アウトカムとの関連について評価を行った。The lancet. Psychiatry誌オンライン版2018年3月15日号の報告。

市中肺炎の高齢者、再入院しやすい患者は?

 市中肺炎(CAP)で入院した患者では、複数の併存疾患を有する高齢者において再入院が多く、臨床的および経済的負担が生じる。スペインのProject FIS PI12/02079 Working Groupが横断研究を行ったところ、65歳以上のCAP患者の11.39%が退院後30日以内に再入院し、その関連因子として「15歳未満の同居者あり」「発症前90日に病院受診が3回以上」「慢性呼吸不全」「心不全」「慢性肝疾患」「退院先が在宅医療サービスのある自宅」が挙げられた。BMJ open誌2018年3月30日号に掲載。

多発性硬化症の症状は個人差が大きく確定診断まで約3年を待つ

 2018年3月29日、バイオジェン・ジャパン株式会社とエーザイ株式会社は、多発性硬化症に関するメディアセミナーを都内で共同開催した。セミナーでは、女性に多い本症について、疾患概要だけでなく、女性視点から闘病への悩みなども取り上げられた。  セミナーでは、清水 優子氏(東京女子医科大学病院 神経内科 准教授)を講師に迎え、「多発性硬化症の治療選択-女性患者のアンメットニーズとライフステージ」をテーマに講演が行われた。

siponimod、二次性進行型多発性硬化症の身体的障害の進行を抑制/Lancet

 スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)受容体のS1P1およびS1P5サブタイプ選択的調節薬であるsiponimodは、二次性進行型多発性硬化症(SPMS)患者において、身体的障害の進行リスクを低下させ、安全性プロファイルは他のS1P受容体調節薬と同様であることが認められた。スイス・バーゼル大学のLudwig Kappos氏らが、siponimodの無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験(EXPAND試験)の結果を報告した。SPMSは、再発とは無関係に障害が徐々に進行し続けることが特徴で、これまで身体的障害の進行を遅延させる効果を示した治療はなかった。著者は、「siponimodはSPMSの治療に役立ちそうである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2018年3月22日号掲載の報告。

StageIII大腸がんの術後補助化学療法、短縮は可能か?/NEJM

 StageIII大腸がん患者において、FOLFOX療法またはCAPOX療法による術後補助化学療法の3ヵ月投与は、全体集団では6ヵ月投与に対する非劣性が確認されなかったものの、サブグループ解析の結果、CAPOX療法を受けた、とくに低リスク症例において、3ヵ月投与は6ヵ月投与と同程度に有効であることが示された。米国・メイヨー・クリニックのAxel Grothery氏らが、StageIII大腸がん患者を対象とした術後補助化学療法の無作為化第III相試験6件を前向きに統合解析する、International Duration Evaluation of Adjuvant Therapy(IDEA)collaborationの結果を報告した。2004年以降、StageIII大腸がんに対する術後補助化学療法は、オキサリプラチンとフルオロピリミジン系薬を6ヵ月間併用するレジメンが標準治療となっている。しかし、オキサリプラチンは神経毒性の蓄積と関連があるため、治療期間の短縮による毒性や医療費の軽減が期待されていた。NEJM誌2018年3月29日号掲載の報告。