日本語でわかる最新の海外医学論文|page:551

統合失調症患者への非定型抗精神病薬治療に対する治療反応不良の早期予測因子

 非定型抗精神病薬で治療されている統合失調症患者における精神症状の早期改善や最終治療反応との関連を調査し、治療法の切り替えまたは継続を判断する最適な時期について、台湾・国立中山大学のYi-Lung Chen氏らが検討を行った。また、臨床的治療反応の予測因子についても検討を行った。BMC Psychiatry誌2018年12月4日号の報告。  急性増悪統合失調症患者111例を無作為化し、オランザピン、リスペリドン、パリペリドンによる至適治療を1週間の導入期間および12週間の介入期間で行い評価した。全対象患者は、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)を用いて評価した。早期治療反応(PANSSスコア25%減少と定義)は、第1、2、3、4、8週目に評価し、これらの評価を用いて第12週目の最終治療反応(PANSSスコア25%減少)を予測した。著者らは、第1または2週目の早期治療反応が、第12週目の治療アウトカムを予測できると仮定した。

糖代謝の改善にコーヒーやお茶は効果があるか~メタ解析

 前向きコホート研究では、コーヒーやお茶の摂取と糖尿病発症リスクとの関連が示されているが、コーヒーやお茶が糖代謝を改善するかどうかは不明である。今回、横浜市立大学の近藤 義宣氏らは、無作為化比較試験の系統的レビューとメタ解析により、コーヒー、緑茶、紅茶、烏龍茶の糖代謝への影響を調べた。その結果、とくに55歳未満またはアジア人の集団において、緑茶の摂取が空腹時血糖(FBG)を低下させる可能性が示唆された。Nutrients誌2019年1月号に掲載。

病院の水系による感染症の解析と克服は難しい課題である(解説:吉田敦氏)-995

医療関連感染の中で、水を介した感染症を生じる微生物として、レジオネラや緑膿菌が有名である。しかしながらこの他にもアシネトバクターやステノトロホモナスといったブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌や非結核性抗酸菌が知られており、院内・施設内の水道・水系を介してこれらが集団発生した例も報告されている。今回、11年にわたり単一施設で分離され続けていたブドウ糖非発酵菌Sphingomonas koreensisが、院内の水系を介していたことが、全ゲノム解析を含む詳細な分子疫学的解析によって明らかにされた。なおSphingomonasは細胞壁にスフィンゴ脂質を含むことから本邦の薮内 英子らによって属として提唱されたもので、現在127菌種が含まれる。またS. koreensisは2001年に新種として発表されたが、これまで感染例として報告されたのは髄膜炎などごく少数にすぎない。

入院患者の不眠症治療における催眠鎮静薬減量のための薬剤師介入

 多くの患者において入院は不眠症の原因となり、通常は対症療法で治療が行われる。しかし、催眠鎮静薬の誤った使用は、とくに高齢入院患者において合併症と関連している。この合併症には、めまい、転倒、過鎮静が含まれる。このような潜在的な危険性のため、とくに高齢者においては、不眠症に対する催眠鎮静薬の広範な使用は、多くの病院で推奨されていない。サウジアラビア・King Abdulaziz University Faculty of PharmacyのAisha F. Badr氏らは、処方パターンの検討および評価を行い、地域病院における日々の薬剤師介入を通じた催眠鎮静薬の使用最適化について検討を行った。Saudi Pharmaceutical Journal誌2018年12月号の報告。

集団感染発生の多剤耐性菌、温床は院内配管/NEJM

 スフィンゴモナス・コリエンシス(Sphingomonas koreensis)は、米国国立衛生研究所(NIH)臨床センターのインフラに時間と空間を超えて持続的に存在し、医療関連感染症を引き起こすヒト日和見病原体であることを、米国・国立ヒトゲノム研究所のRyan C. Johnson氏らがゲノム疫学調査で突き止めた。病院内の配管システムは、頻度は低いものの入院患者が感染する可能性がある日和見感染病原体の温床として知られている。今回の調査は、2016年に発生したスフィンゴモナス種細菌の集団感染を受けて行われた。NEJM誌2018年12月27日号掲載の報告。

子供がいる米国女医、職場内差別を経験/BMJ

 米国・カリフォルニア大学のMeghan C. Halley氏らが実施した大規模な質的研究の結果、子供を持つ女性医師は、母親ゆえに、頻繁で持続的な、時には露骨な差別を経験していることが明らかになった。そうした母親差別の経験は、他の専門職の女性らの報告と合致する一方で、医師研修に特有の側面もあること、また母親差別を助長する同僚(medical profession)が存在することも示唆されたという。先行研究で、女性医師の3分の2以上が性的な差別を、また女性臨床研究医の3分の1はセクシャルハラスメントを経験しているという報告はあったが、母親ゆえの差別あるいはその後の医師としてのキャリアへの影響に関するデータは限られていた。今回の結果を受けて著者は、「医学・医療分野における母親差別の影響を緩和するためには、出産・育児休暇、保育への取り組みの構造的な変化が必要である」と見解を述べている。BMJ誌2018年12月12日号(クリスマス特集号)掲載の報告。

自分の動脈硬化病変を見せられると生活習慣病が改善する(解説:佐田政隆氏)-994

急性心筋梗塞は、狭心症を生じるような高度の冠動脈の動脈硬化病変が進行して完全閉塞することで生じると従来考えられていた。しかし、最近の研究によると、6~7割の急性心筋梗塞の原因は、軽度な内腔の狭窄しか来さない動脈硬化病変の破裂やびらんに起因する急性血栓性閉塞であるとされている。急性心筋梗塞は発症してしまうと突然死につながる怖い病気であるが、その多くは前兆がなく、発症を予知することは困難である。ヒトの動脈硬化は、従来考えられていたよりかなり早期に子供の頃から始まり、生活習慣病のコントロールが悪いと無症状のうちに進行して、突然心血管イベントを誘発することが多くの研究で示されている。そこで、将来の心筋梗塞の発症を防ぐためには、糖尿病、高血圧、脂質異常症といった生活習慣病のコントロールや禁煙といった1次予防が重要である。しかし、多くの人は、食事などの生活指導、運動指導、場合によっては薬物療法を行っても、現在は痛くも痒くもないため、アドヒアランスは悪く改善に結びつかない。

フルオロキノロン系薬に大動脈瘤・解離に関する使用上の注意改訂指示

 フルオロキノロン系抗菌薬の添付文書について、2019年1月10日、厚生労働省より使用上の注意の改訂指示が発出された。フルオロキノロン系抗菌薬と大動脈瘤および大動脈解離との関連性を示唆する疫学研究や非臨床試験の文献が報告されたことによるもので、改訂の概要は以下のとおり。 1.「慎重投与」の項に、「大動脈瘤又は大動脈解離を合併している患者、大動脈瘤又は大動脈解離の既往、家族歴若しくはリスク因子(マルファン症候群等)を有する患者」を追記する。

使用率75%、米国の腫瘍専門医はNGSをどう使う?

 米国の腫瘍専門医はどのように次世代シークエンス(NGS)検査を用いているのか。主要施設の腫瘍専門医を対象にした米国国立衛生研究所(NHI)の共同研究が、JCO Precision Oncology誌2018年11月13日号に発表された。  この研究は、2017年に全国的に代表されるがん専門医のサンプルに郵送された、がん治療における精密医学の全国調査のデータを使用し、解析された(n=1,281、協力率==38%)。

日本におけるアリピプラゾールの経口剤と持効性注射剤の併用期間に関する分析

 アリピプラゾール長時間作用型持効性注射剤(LAI)の導入にあたっては、導入開始後2週間のアリピプラゾール経口剤との併用が推奨されている。しかし、2週間以上の併用を行う場合も少なくない。そこで、藤田医科大学の波多野 正和氏らは、アリピプラゾールLAIと経口剤との併用期間の違いについて検討を行った。Human psychopharmacology誌オンライン版2018年11月27日号の報告。  本検討は、症例対照研究として実施した。アリピプラゾールLAI導入と併用したアリピプラゾール経口剤の処方プロファイルを調査し、12週間のフォローアップ期間中における臨床経過を評価した。

腎疾患に遺伝子診断は有用か/NEJM

 3,000例超のさまざまな慢性腎臓病患者の集団を対象とした検討で、エクソーム解析に基づく遺伝子診断率は、10%未満であることが明らかにされた。米国・コロンビア大学のEmily E. Groopman氏らによる検討の結果で、NEJM誌オンライン版2018年12月26日号で発表された。  研究グループは、慢性腎臓病の患者3,315例を含む2つのコホートを対象に、エクソーム解析と診断解析を行った。詳細な臨床データが入手できた患者について、診断率や、診断の臨床的意義、その他の医学的所見との関連を検証した。

英外食チェーン、推奨エネルギー量の料理は9%のみ/BMJ

 英国の主要外食チェーンで提供される主な食事のうち、英国公衆衛生局が推奨する1食当たりのエネルギー量が600kcal以下の食事はわずか9%である一方、47%に及ぶかなり多くの食事が1,000kcal以上とエネルギー量が過度であることが明らかになった。英国・リバプール大学のEric Robinson氏らが、英国の外食チェーン27社の食事を調査した結果で、著者は「ファストフード店の食事の栄養価は不十分だがきちんと表示はされている。一方で、英国のフルサービスで提供するレストランの食事のエネルギー量は過度な傾向がみられ、懸念の元である」と述べている。BMJ誌2018年12月12日号(クリスマス特集号)掲載の報告。

心房細動は待つのではなく見つけに行く時代(解説:矢崎義直 氏)-993

心房細動は最もメジャーな不整脈の1つであるが、無治療だと塞栓症のリスクが高く、とくに心原性脳梗塞は重症化し死亡率も高い。心房細動を早期に診断し、適切な抗凝固療法を行うことが重要であるが、症状のない心房細動も多く、定期的な通常の心電図検査では検出が困難なこともある。そこで、心房細動のスクリーニングとして長時間の心電図モニタリングが可能なシステムの開発が進んでいる。mSToPS試験(mHealth Screening to Prevent Strokes trial)は自己装着型の2週間記録可能なパッチ型心電計を使用し、心房細動の新規検出率を検討した。対象は年齢が75歳以上、もしくは高血圧や糖尿病などのリスクを1つ以上持った55歳以上の男性か65歳以上の女性とし、過去に心房性不整脈の既往があれば除外した。被験者の募集はAetnaやMedicareなどの医療保険システムに登録されている対象者に、郵便もしくはeメールで試験参加を勧誘した。オンラインで同意が得られれば試験に登録され、患者データなどはネット経由で得るという、登録が完全にデジタル化された新しい試みと言える。この方法により、通常の治験登録よりも登録時間を短縮でき、コストも抑えられ、普段治験とは疎遠なpopulationにもアプローチでき、よりリアルワールドに近い対象を選出できるという利点がある。

高齢者未治療CLLに対するイブルチニブの有用性~化学免疫療法との比較~(解説:大田雅嗣 氏)-992

イブルチニブ(ibrutinib:以下IBR)はブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬である。BTKは非受容体型チロシンキナーゼTecファミリーの1つで、B細胞のアポトーシス制御、B細胞の成熟・分化、活性化、細胞接着や遊走などB細胞の生存に関与し1)、慢性リンパ性白血病(CLL)細胞の細胞表面から核内遺伝子へ増殖シグナルを伝達する。BTK阻害薬はこの増殖シグナルをブロックすることで抗腫瘍効果を発揮する2)。

わが国の食道アカラシアの疫学~大規模レセプトデータより

 わが国の食道アカラシアの疫学と治療動向について、新潟大学の佐藤 裕樹氏、山梨大学の横道 洋司氏らの調査から、罹患率および期間有病率は他の国と同程度であること、食道がんの発症リスクはアカラシア患者で一般人口と比較し相対的に高いことが示された。また、主に実施されている治療法は食道拡張術であるが、経口内視鏡的筋層切除術(POEM)による治療の割合も年々増加していることがわかった。Journal of Gastroenterology誌オンライン版2019年1月3日号に掲載。

高齢入院患者におけるせん妄と抗コリン薬に関する観察研究

 せん妄は、高齢入院患者において平均5人に1人が発症する神経精神症候群であり、認知および機能の悪化、患者および介護者の負担増加、死亡率の上昇を含む多くの悪影響と関連している。抗コリン作用を有する薬物療法は、高齢入院患者におけるせん妄症状の臨床的重症度と関連しているといわれるが、この関連性はまだよくわかっていない。イタリア・Istituto di Ricerche Farmacologiche Mario Negri IRCCSのLuca Pasina氏らは、累積抗コリン作用性負荷がせん妄リスクを増加させるという仮説を検証するため、せん妄と抗コリン作用性負荷との関連性を評価した。Drugs & Aging誌オンライン版2018年11月27日号の報告。

ダコミチニブ、EGFR変異陽性NSCLCに国内承認/ファイザー

 ファイザー株式会社は、2019年1月8日、「EGFR遺伝子変異陽性の手術不能又は再発非小細胞肺癌」の効能・効果で、EGFR-TKIダコミチニブ(商品名:ビジンプロ錠15mg、同45mg)の製造販売承認を取得した。  ダコミチニブの有効性と安全性は、ダコミチニブとゲフィチニブを直接比較した国際共同第III相ARCHER1050試験の結果により確認された。盲検下での独立中央判定(BICR)の評価による無増悪生存期間中央値は、ダコミチニブ群では14.7ヵ月、ゲフィチニブ群では9.2ヵ月で、ダコミチニブ群はゲフィチニブ群と比べ、優れた改善を示した。また、全生存期間中央値は、ダコミチニブ群では34.1ヵ月、ゲフィチニブ群では26.8ヵ月であった。

mFOLFIRINOXが膵がん術後補助療法に有望/NEJM

 転移を有する膵がんの術後補助療法において、フルオロウラシル/ロイコボリン+イリノテカン+オキサリプラチンによる併用化学療法(修正FOLFIRINOX[mFOLFIRINOX])はゲムシタビン(GEM)療法に比べ、全生存期間が有意に延長する一方で、高い毒性発現率を伴うことが、フランス・ロレーヌ大学のThierry Conroy氏らが実施した「PRODIGE 24-ACCORD 24/CCTG PA 6試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2018年12月20日号に掲載された。膵がんの治療では、手術単独の5年生存率は約10%と低く、術後補助療法ではGEM(日本ではS-1のエビデンスもある)が標準治療とされるものの、2年以内に69~75%が再発する。転移を有する膵がんの1次治療では、従来のFOLFIRINOXはGEMに比べ、全生存期間を延長することが知られている。

リナグリプチンのCARMELINA試験を通して血糖降下薬の非劣性試験を再考する(解説:住谷哲氏)-991

eGFRの低下を伴う腎機能異常を合併した2型糖尿病患者における血糖降下薬の選択は、日常臨床で頭を悩ます問題の1つである。血糖降下薬の多くは腎排泄型であるため腎機能に応じて投与量の調節が必要となる。DPP-4阻害薬の1つであるリナグリプチンは数少ない胆汁排泄型の薬剤であり、腎機能に応じた投与量の調節が不要であるため腎機能異常を合併した患者に投与されることが多い。これまでにDPP-4阻害薬の安全性を評価した心血管アウトカム試験CVOTにはサキサグリプチンのSAVOR-TIMI 53、アログリプチンのEXAMINE、シタグリプチンのTECOSが発表されている。リナグリプチンの安全性を評価した本試験の報告により、DPP-4阻害薬の安全性を評価したすべてのCVOTが出そろったことになる。本試験の最大の特徴は、リナグリプチンが胆汁排泄型であることに基づいて、これまで報告されたCVOTの中で最多の腎機能異常合併2型糖尿病患者を組み入れた点にある。

高血圧の定義、現状維持であれば1万人あたり5人の脳心血管イベントが発症するという警鐘(解説:桑島巖氏)-989

2017年に発表された米国ACC/AHA高血圧ガイドラインでは、高血圧基準がJNC7に比べて、収縮期、拡張期とも10mmHg下がり130/80mmHgとされた。この定義変更はSPRINT研究の結果を大幅に取り入れたものであるが、果たしてこの新しい高血圧基準をアジア住民に当てはめた場合、どの程度が脳卒中や心筋梗塞などの動脈硬化性疾患から免れるのであろうか。その課題に対する答えを示したのがこの論文である。本論文は、韓国国民健康保険サービスに参加した20~39歳までの約250万人について2006年から10年間追跡し、その間に発生した4万4,813件の脳血管障害、脳心血管死についてACC/AHA定義に従って分析したものである。