日本語でわかる最新の海外医学論文|page:317

乳がん患者の抑うつ、適切な治療につなげるには?/JAMA

 地域の腫瘍科診療施設で治療を受けている乳がん患者において、実装科学(implementation science)に基づき日常診療で抑うつ状態のスクリーニングを行う個別化戦略は、抑うつスクリーニング指導のみの治療戦略と比較して、行動療法への紹介に結びつく患者の割合が高く、腫瘍内科の外来受診の頻度は低下することが、米国・カイザーパーマネンテ南カリフォルニア(KPSC)のErin E. Hahn氏らの調査で示された。研究の成果は、JAMA誌2022年1月4日号で報告された。  本研究は、KPSC(南カリフォルニアの450万人以上の会員に包括的な治療を提供する統合保健システム)に所属する6つの医療センターが参加した実践的なクラスター無作為化試験であり、2017年10月1日~2018年9月30日の期間に患者の登録が行われ、最終フォローアップ日は2019年3月31日であった(Regents of the University of Californiaなどの助成を受けた)。

新型コロナウイルス感染におけるDOACの意味:ランダム化比較試験か観察研究か?(解説:後藤信哉氏)

観察研究にて、新型コロナウイルス感染による入院中の血栓イベント予防におけるDOACの価値は限定的とされた。血栓イベントリスクは退院後も高いと想定される。退院後の低分子ヘパリンの継続の根拠も確立されていない。本研究ではVTE risk 2~3以上、あるはD-dimer 500以上の症例を対象として抗凝固療法なしと1日10mgのrivaroxabanを比較するオープンラベルのランダム化比較試験である。退院後の抗凝固薬として標準治療は確立されていない。しかし、無治療と10mg rivaroxabanの比較試験の施行根拠を明確に説明することも難しい。本研究はブラジルの14の施設にて施行された。

経口コロナ治療薬の国内製造販売承認を申請/ファイザー

ファイザーは1月14日付のプレスリリースで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19) に対する経口抗ウイルス薬候補「PF-07321332/リトナビル錠」(米国での商品名:Paxlovid)の製造販売承認を厚生労働省に申請したことを発表した。日本も参加した国際共同第II/III相試験(EPIC-HR)の結果に基づくもので、特例承認による迅速な使用開始を目指す。  EPIC-HR試験は、重症化リスクが高く、入院していないCOVID-19成人患者を対象としたランダム化二重盲検試験。

60歳以上の片頭痛患者に対する抗CGRP抗体フレマネズマブの有効性、安全性

 片頭痛は、高齢者において頻繁に認められる疾患ではないが、高齢片頭痛患者に対する予防的治療は、さまざまな併存疾患に対する多剤併用による治療が行われていることを考えると、より困難である場合が少なくない。また、高齢片頭痛患者に対する予防的治療の有効性、安全性、忍容性に関するエビデンスは、限られている。米国・トーマスジェファーソン大学のStephanie J. Nahas氏らは、反復性片頭痛(EM)または慢性片頭痛(CM)を有する60歳以上の臨床試験参加者を対象に、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)に選択的に作用するヒト化モノクローナル抗体フレマネズマブの有効性、安全性、忍容性を評価した。The Journal of Headache and Pain誌2021年11月24日号の報告。

双極性障害の自殺死亡率に対する性別固有のリスクプロファイル

 双極性障害患者の自殺リスクに対する性差および併存疾患の影響についてのエビデンスは十分ではない。台湾・台北医学大学のPao-Huan Chen氏らは、自殺の発生率、医療利用状況、併存疾患の観点から、双極性障害患者における自殺リスクに対する性別固有のリスクプロファイルについて調査を行った。Psychological Medicine誌オンライン版2021年8月11日号の報告。  2000年1月~2016年12月の台湾の全民健康保険研究データベースを用いて、コホート研究を実施した。対象は、双極性障害患者4万6,490例および年齢、性別を1:4の割合でマッチさせた一般集団18万5,960例。自殺死亡率の比率(MRR)は、双極性障害コホートと一般集団の自殺率で算出した。また、双極性障害コホートにおける医療利用状況、併存疾患の性別固有のリスクを調査するため、ネストされたケースコントロール研究(自殺死亡患者:1,428例、生存患者:5,710例)を実施した。

N95マスク、医療従事者が知っておきたいこと

 オミクロン株の急拡大が進み、早くも医療現場の逼迫が見えている中、マスクは最も重要な個人防護具の1つである。わが国では、マスクの品質管理の一環として、日本産業規格(JIS)が2021年6月に制定された。しかし、適切な基準を満たさない製品も多く流通していることが懸念され、医療機関それぞれが対策しなければならない。そこで、N95マスクについて医療従事者が知っておくべき基本事項をまとめた。  国立感染症研究所が作成した「新型コロナウイルス感染症に対する感染管理(2020年6月2日改訂版)」では、N95マスクはエアロゾルが発生する可能性のある手技(気道吸引、気管内挿管、下気道検体採取等)を行う際に装着し、使用に際しては、事前のフィットテストと着用時のシールチェックが推奨されている。正しい着用方法はN95マスクを開発したスリーエム(3M)作成の「医療従事者のためのN95マスク適正使用ガイド」が参考になる。

再生不良性貧血に免疫抑制療法+エルトロンボパグが有効/NEJM

 未治療の重症再生不良性貧血患者において、エルトロンボパグと標準免疫抑制療法の併用は、血液学的奏効の得られる割合、速さ、大きさを改善し、さらなる毒性は認められなかった。フランス・パリ大学のRegis Peffault de Latour氏らが、未治療の重症再生不良性貧血患者を対象に、標準免疫抑制療法とエルトロンボパグの併用について検討した、研究者主導の無作為化非盲検第III相試験「RACE試験」の結果を報告した。重症再生不良性貧血患者を対象とした第I/II相試験において、エルトロンボパグは、ウマ抗胸腺細胞グロブリン(ATG)+シクロスポリンを含む標準免疫抑制療法の有効性を改善することが示されていた。NEJM誌2022年1月6日号掲載の報告。

コロナワクチンの感染抑制効果、デルタ株では低下/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)へのワクチン接種について、アルファ変異株と比較してデルタ変異株のほうが感染減少が少なく、ワクチンの有効性は経時的に低下したことが示された。また、感染発端患者の診断時PCRサイクル閾値(Ct)値は、感染減少を部分的に説明するのみであることも明らかにされた。英国・オックスフォード大学のDavid W. Eyre氏らが、後ろ向き観察コホート研究の結果を報告した。SARS-CoV-2のデルタ(B.1.617.2)変異株の出現以前は、ワクチン接種によりウイルス量が減少し、感染したワクチン接種者からのSARS-CoV-2の伝播が抑制したとみなされていた。ワクチン接種により感染リスクはさらに低下しているが、デルタ変異株に感染したワクチン接種者と未接種者のウイルス量は同程度であることが判明し、ワクチン接種が感染をどの程度予防するのか疑問視されていた。NEJM誌オンライン版2022年1月5日号掲載の報告。

6時間以上経過した脳主幹動脈閉塞患者に対する血管内治療の有効性について、さらに強いエビデンスとなる結果(解説:高梨成彦氏)

本研究は発症から6~24時間経過した主幹動脈閉塞患者に対する経皮的脳血栓回収術についての6試験のデータを対象としたメタアナリシスである。505症例のデータが解析され、主要評価項目である90日後のmRSの改善について血管内治療の有効性が確認され、調整済みオッズ比は2.54と高いものであった。また副次評価項目である90日後の死亡率および症候性頭蓋内出血の発生率には差はなかった。本試験の意義はサブグループにおいても均一な結果が示されたことで、年齢(<70/70~80/>80)、性別、脳卒中の重症度(NIHSS ≦17/≧18)、閉塞部位(ICA/M1)、ASPECTS(≦7/≧8)、発症形態(眼前発症/wake-up stroke)、いずれの群でも血管内治療の有効性が示された。すでに脳卒中ガイドラインにもあるように、発症から6時間以上経過した患者についての血管内治療は実施されているものの、高齢者や重症患者であっても治療をためらう必要はないということが明確に示された意義は大きい。ただし、軽症群にNIHSS 5点以下の患者は含まれておらず、ASPECTSが低値の群に0~5点は含まれていないことは留意する必要がある。

3回目接種でオミクロン株への中和抗体が大きく増加/NEJM

 新型コロナウイルスのmRNAワクチン2回接種から6ヵ月以降に3回目の接種を受けると、オミクロン株に対する中和抗体価が大きく上昇することが、米国・ロックフェラー大学のFabian Schmidt氏らの研究で示された。また、ワクチン未接種の既感染者においても、mRNAワクチンの接種によりオミクロン株に対する中和抗体価が大きく上昇した。NEJM誌オンライン版2021年12月30日号のCORRESPONDENCEに掲載。  著者らは、新型コロナウイルスのワクチン接種または感染、もしくはその両方で曝露された47人における169の血漿検体において、武漢株とオミクロン株に対する中和抗体価を測定した。

ペムブロリズマブの非小細胞肺がん術後アジュバント、無病生存率を改善/Merck

 Merck社は、2022年1月10日、EORTCおよびETOPとともに、第III相KEYNOTE-091(EORTC-1416-LCG / ETOP-8-15 – PEARLS)試験の結果を発表した。  独立データモニタリング委員会による中間分析では、主要要評価項目の1つであるステージIB~IIIAの非小細胞肺がん(NSCLC)全集団のDFS(無病生存期間)について、ペムブロリズマブ治療群はプラセボ群と比較して、PD-L1発現を問わず、統計学的に有意かつ臨床的に意味のある改善を示した。

日本におけるコミュニティレベルの学力と認知症リスク

 コミュニティレベルの学力と認知症リスクとの関連は、あまり知られていない。浜松医科大学の高杉 友氏らは、認知症発症リスクに対し、コミュニティレベルでの低学歴の割合が影響を及ぼすかについて、検討を行った。また、都市部と非都市部における潜在的な関連性の違いについても、併せて検討した。BMC Geriatrics誌2021年11月23日号の報告。  日本老年学的評価研究(JAGES)より、2010~12年にベースラインデータを収集し、6年間のプロスペクティブコホートを実施した研究のデータを分析した。対象は、7県16市町村のコニュニティ346ヵ所の身体的および認知機能的な問題を有していない65歳以上の高齢者5万1,186人(男性:2万3,785人、女性:2万7,401人)。認知症発症率は、日本の介護保険制度から入手したデータを用いて評価した。教育年数を9年以下と10年以上に分類し、個々の学力レベルをコミュニティレベルの独立変数として集計した。共変量は、まず年齢および性別を用い(モデル1)、次いで収入、居住年数、疾患、アルコール、喫煙、社会的孤立、人口密集度を追加した(モデル2)。欠落データに対する対処として、複数の代入を行った。コミュニティおよび個人における2つのレベルでの生存分析を実施し、ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算出した。

膝関節全置換術の術後鎮痛にデキサメタゾンは有効か?/BMJ

 人工膝関節全置換術後48時間以内に行う、多角的疼痛治療へのデキサメタゾン2回追加投与は、モルヒネ使用量をプラセボ群に比べ約11mg減少することが示された。デンマーク・Naestved, Slagelse and Ringsted HospitalsのKasper Smidt Gasbjerg氏らが、485例を対象に行った無作為化試験の結果を、BMJ誌2022年1月4日号で発表した。人工膝関節全置換術後は概して、手術に関連した中等度から重度の術後疼痛が報告される。デキサメタゾンは、術後の多角的疼痛治療の一剤としてしばしば用いられるが、アジュバントとしての鎮痛効果、とくに高用量の反復投与に効果があるのかエビデンスは乏しい状況であった。

単回投与の中国製コロナワクチン、予防効果は57.5%~第III相試験/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するアデノウイルス5型ベクターワクチン「Ad5-nCoV」(中国・カンシノ・バイオロジクス[康希諾生物]製)の単回投与について、健康な18歳以上成人における有効性および安全性が示された。接種後28日以降のPCR検査確定・症候性COVID-19の予防効果は57.5%であり、また、重篤有害事象の発生率は0.1%でプラセボと同等であったという。カナダ・ダルハウジー大学のScott A. Halperin氏らが、第III相の国際二重盲検プラセボ対照無作為化試験の結果を報告した。Lancet誌オンライン版2021年12月23日号掲載の報告。  試験は、アルゼンチン、チリ、メキシコ、パキスタン、ロシアの試験センターで18歳以上を登録して行われた。被験者は、不安定または重度の内科的・精神的基礎疾患がなく、検査確定の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染歴が認められず、妊娠または授乳中でない、アデノウイルス・ベクター、コロナウイルス、またはSARS-CoV-2ワクチンの未接種者だった。

尽きることのない話題PCI vs.CABG、FAME 3試験をめぐって(解説:中川義久氏)

虚血性心疾患の治療において、PCI vs.CABGは尽きることのない話題である。欧米などの48施設で実施したFractional Flow Reserve versus Angiography for Multivessel Evaluation(FAME)3試験の結果を米国Stanford大学の Fearon氏がTCT 2021で発表した。その結果は、NEJM誌オンライン版2021年11月4日号に報告された(Fearon WF, et.al. N Engl J Med. 2021 Nov 4. [Epub ahead of print])。3枝冠動脈疾患患者においてPCIの適応を判断するにあたり、冠血流予備量比(FFR)のガイド下とすることで予後が改善し、PCIがCABGに劣らない成績を達成することが期待されていた。つまりPCIがCABGに劣っていないことを証明しようという非劣性試験である。結果は、1年時点の死亡・心筋梗塞・脳卒中・再血行再建術の複合イベントの発生で、FFRガイド下のPCIは、CABGに対する非劣性を示すことができなかった。3枝冠動脈疾患患者においてはCABGが依然として最適な治療法といえることが再確認されたのである。

CPと表記される医療用語が15種類…「誤解を招く医療略語」の解決に役立つポケットブレインとは?

 電子カルテの普及により多職種間で患者情報を共有しやすくなり、紙カルテ時代とは比にならないくらい業務効率は改善したー。はずだったのだが、今度は医療略語の利用頻度の増加による『カルテの読みにくさ』という新たな課題が浮上している。  医療略語は忙しい臨床現場で入力者の負担軽減に寄与する一方で、略語の多用や種類の増加が、職種間での情報共有における新たな弊害になっている可能性がある。また、診療科や職種により医療略語の意味が異なるため、“医療事故”のリスク因子にもなりかねない。増加の一途をたどる医療略語に、医療現場はどう対処していけばよいのだろうか。

ブースター接種、オミクロン株に対する発症・入院予防効果は?

 オミクロン株に対するワクチンの有効性について、発症予防効果はデルタ株と比較して低く、投与後の期間に応じてさらに低下する一方で、入院予防効果は2回目接種後6ヵ月以降も約50%となり、3回目接種により約90%まで高まるというデータが報告された。英国・UK Health Security Agency(UKHSA)が2021年12月31日にオミクロン株に関する大規模調査結果を公開した。  デルタ株と比較したオミクロン株の症候性COVID-19に対するワクチン有効率(VE)が、診断陰性例コントロールデザインを用いて推定された。2021年11月27日~12月24日までに検査を受けたオミクロン株感染20万4,036例とデルタ株感染16万9,888例のデータを使用している。

統合失調症の遺伝的リスク~併発する他疾患との関連性

 統合失調症は、重度の身体的および精神医学的な症状を伴う深刻な精神疾患である。併発する健康被害が遺伝的リスクにより発生するのか、統合失調症の影響で発生しているかは、よくわかっていない。スウェーデン・カロリンスカ研究所のRuyue Zhang氏らは、この課題に対し統合失調症の遺伝的リスクからアプローチを試みるため、英国バイオバンクより統合失調症と診断されていない40万6,929例を対象に、健康関連問題に対する統合失調症ポリジーンリスクスコア(PRS)の影響について調査を行った。Molecular Psychiatry誌オンライン版2021年11月19日号の報告。

新型コロナ、異種ワクチン接種の有益性を確認/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの異種接種について、1回目接種がアデノウイルスベクターワクチンのChAdOx1 nCoV-19(ChAd、AstraZeneca製)またはmRNAワクチンのBNT162b2(BNT、Pfizer-BioNTech製)いずれの場合も、2回目接種がmRNAワクチンのmRNA-1273(m1273、Moderna製)の場合は、一過性の反応原性を増大することが示された。遺伝子組換えスパイク蛋白ナノ粒子ワクチンのNVX-CoV2373(NVX、Novavax製)は、BNTのプライム接種群で非劣性が示されなかった。英国・オックスフォード大学のArabella S. V. Stuart氏らによる無作為化試験の結果で、「複数のワクチンが、BNTまたはChAdでプライミング後の免疫完了に適していた。今回の結果は、異種ワクチンによる接種スケジュールを支持するもので、ワクチン接種の迅速なグローバル展開を促進することになるだろう」と述べている。Lancet誌2022年1月1日号掲載の報告。

新型コロナの後遺症、入院患者と自宅療養者で違い/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症での一般診療医(GP)受診率について、COVID-19で入院を要した患者(入院患者)と入院を必要とせずコミュニティで療養した患者(コミュニティ療養者)で差があることを、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのHannah R. Whittaker氏らがイングランド住民を対象としたコホート研究で明らかにした。コミュニティ療養者では、時間の経過とともに受診率が低下する後遺症もあったが、不安や抑うつなど受診が継続している後遺症があり、ワクチン接種後に受診率の低下が認められる後遺症があることも明らかにされた。これまでいくつかの観察研究で、COVID-19回復後の持続的な症状および新たな臓器機能障害は報告されているが、それらは主に重篤症状の入院患者でみられたもので、コミュニティ療養者の長期アウトカムを比較した研究はごくわずかで、いずれも小規模で選択バイアスの掛かったものであった。また、大規模な住民ベースのコホート研究での経時的評価やCOVID-19ワクチン接種後のアウトカムの評価も行われていなかった。BMJ誌2021年12月29日号掲載の報告。