日本語でわかる最新の海外医学論文|page:1045

初発の慢性骨髄性白血病に対するニロチニブ vs. イマチニブ

慢性骨髄性白血病の分子標的治療薬イマチニブ(商品名:グリベック)は、白血病細胞の原因となるBCR-ABL蛋白を阻害し作用を発揮する。ニロチニブ(商品名:タシグナ)は、イマチニブよりも強力かつ選択的にBCR-ABLを阻害するとして、イマチニブ抵抗性あるいは不耐容の慢性期および移行期のCML患者に対する治療に有用とされている。イタリア・トリノ大学のGiuseppe Saglio氏らの治験グループ「ENESTnd」は、ニロチニブの第3相試験として、初発の慢性期のフィラデルフィア染色体陽性慢性骨髄性白血病(Ph+ CML)患者を対象に、イマチニブとの直接比較で有効性と安全性の評価を行った。NEJM誌2010年6月17日号(オンライン版2010年6月5日号)より。

検索経験者の4割がネット検索をきっかけに病院へ!

アイシェアが20代から40代の男女504名の回答を集計した「ネット医療情報検索に関する意識調査」によると、インターネットで自分の体の気になる症状を検索したことが「ある」人は62.1%(313名)。男性の55.4%に対し、女性は69.8%と7割にのぼったという。年代別では、20代(59.7%)に比べ、30代(64.1%)・40代(62.2%)が高めの結果となった。

血中ビタミンB6とメチオニン値が高濃度だと、肺がんリスクは大幅減少

血中ビタミンB6とメチオニン値が高濃度だと、低濃度の人に比べ、肺がん発症リスクはおよそ半減するようだ。フランスInternational Agency for Research on CancerのMattias Johansson氏らが行ったケースコントロール試験で明らかになったもので、JAMA誌2010年6月16日号で発表した。これまで、ビタミンBのがん発症予防に関する研究は、主に葉酸塩値の大腸がん発症予防効果について行われ、ハイリスク集団についてその抑制効果を前向きに示すことはできなかったという。

早期肺がんの切除、実施率が低い原因は?

肺がんは米国において、がん死亡の主要な要因である。ステージI、IIの非小細胞肺がんでは、切除術が治癒の信頼性が高い唯一の方法であり、切除しない人の生存期間中央値は1年に満たない。しかし、早期肺がん患者の切除術実施率は低いのが現状で、特に黒人での実施率が低いという。米国ノースカロライナ大学チャペルヒル校のSamuel Cykert氏らは、修正可能な手術に関する因子を特定し、なぜ黒人で特に実施率が低い理由を明らかにするため、400人超を対象とする前向きコホート試験を行った。JAMA誌2010年6月16日号掲載より。

ただの貧血や血尿ではないかも?―命を脅かす超希少疾患、PNH

6月22日、東京のコンファレンススクエアにおいて、記者説明会「命を脅かす進行性の希少疾患 発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)」が開催された(主催:アレクシオン ファーマ)。大阪大学医学部血液・腫瘍内科の西村純一氏は、「PNH原因遺伝子の発見から治療薬『ソリリス(一般名:エクリズマブ)』の登場まで」と題して講演した。

新型インフル・パンデミックの機内伝播リスク、感染者席2列以内で3.5%

2009新型(A/H1N1)インフルエンザ・パンデミックに関して、WHOが非常事態を宣言したのは2009年4月25日だった。同日、ニュージーランドの開業医から、3週間のメキシコ旅行を終え米国ロサンジェルスから6時間前に帰国した高校生グループに、インフルエンザ様症状を認めたことが報告された。フライト中12人が症状を申告、後に9人が新型インフルだったことが特定された。旅客機内での感染伝播リスクは示唆されるが、機内でのインフルエンザ感染拡大が特定された例はこれまで3件しかなく、本件はそのうちの貴重な一つ。この事例を対象に、ニュージーランドのオタゴ大学公衆衛生学部門のMichael G Baker氏らは、旅客機内での感染伝播リスクと、着陸後の乗客に対するスクリーニングおよび追跡調査の効果について調査を行った。BMJ誌2010年6月12日号(オンライン版2010年5月21日号)掲載より。

急性肺損傷や急性呼吸不全症候群への高頻度振動換気法の有効性

急性肺損傷および急性呼吸不全症候群(ARDS)治療として高頻度振動換気法が従来の機械的人工換気法に代わって行われるようになってきているが、高頻度振動換気法が従来法に比べ死亡率を低下させるとのエビデンスは明らかになっていない。大規模試験は進行中だが試験完了にはまだ時間を要することから、カナダ・トロント大学のSachin Sud氏らは、過去に行われた8つの無作為化試験を対象とするメタ解析を行った。BMJ誌2010年6月12日号(オンライン版2010年5月18日号)掲載より。

ミドルエイジの女性にとって最もショックな老化症状は「老眼」

チバビジョン株式会社は23日、40~54歳の女性600人に実施した「エイジングケアに関する意識調査」の結果を発表した。同調査は、一般的に身体の変化(エイジングサイン)が現れやすいミドルエイジの女性のエイジングケアに対する意識を広く理解するために実施。調査結果からほとんどの人がいつまでも若々しくありたいと願っていて、エイジング対策をしている人には意識の差があることがわかった。また、様々な老化現象がある中で最もショックな症状は、「老眼」ということもわかったという。

高頻度振動換気法は、早産児の予後を改善するか?

早産児に対する人工換気法として高頻度振動換気法(HFOV)を選択的に施行しても、気管支肺異形成症のリスクの抑制効果は従来の人工換気法と同等であることが、ベルギーVrije Universiteit Brussel NICU科のFilip Cools氏らPreVILIG collaborationによるメタ解析で示された。新生児ケアの進歩にもかかわらず、早産児では気管支肺異形成症のリスクが依然として高く、長期的には神経発達の遅滞や肺障害が起きる。動物実験では、HFOVは換気法関連の肺疾患が少ない有望な人工換気法であることが示されており、呼吸窮迫症候群を呈する早産児の死亡/気管支肺異形成症のリスクを低減する可能性が示唆されているという。Lancet誌2010年6月12日号(オンライン版2010年6月1日号)掲載の報告。

ほんとうに、eGFR、蛋白尿はCKDの指標なのか?

一般住民を対象とした試験のメタ解析により、推定糸球体濾過量(eGFR)<60mL/分/1.73m2および尿中アルブミン/クレアチニン比(ACR)≧1.1mg/mmolは死亡リスクの独立の予測因子であり、慢性腎臓病(CKD)の定義やstagingの定量的なデータとして使用可能なことが明らかとなった。Johns Hopkins Bloomberg公衆衛生大学院のJosef Coresh氏ら「Chronic Kidney Disease Prognosis Consortium」の研究グループがLancet誌2010年6月12日号(オンライン版2010年5月18日号)で報告した。アジアや欧米などでは成人の10~16%がCKDとされ、高血圧や糖尿病などにCKDが加わると全死亡や心血管死、腎不全の進行のリスクが増大する。しかし、CKDの定義やstageの決定にeGFRおよびアルブミン尿を使用することには大きな議論があるという。

「アフィニトール」がVEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤無効の進行性腎細胞がんの無増悪生存期間を延長する 米Cancer誌に掲載

ノバルティス ファーマ株式会社は21日、米国のがん専門誌「Cancer」の誌上掲載に先立ち、6月14日にEarly Viewとして「Cancer」誌のオンライン上で発表されたRECORD-1第III相試験データの最終解析結果において、血管内皮成長因子(VEGF)受容体チロシンキナーゼ阻害剤による治療中あるいは治療後に病勢が進行した進行性腎細胞がん(renal cell carcinoma: RCC)の患者に対する「アフィニトール」(一般名:エベロリムス)のベネフィットが確認されたと発表した。本試験の最終的な無増悪生存期間(PFS)に関する解析、および全生存期間(OS)結果を推測する探索的解析が、専門家が検証する学術誌で掲載されたのは、今回が初めてとのこと。

インフルエンザウイルスの家庭内感染率やウイルス排出パターン、新型も季節性も類似

家族がインフルエンザに感染し発症した場合、同居する家族への感染率やウイルス排出のパターンは、H1N1(新型)も季節性も類似していることが明らかにされた。香港大学Li Ka Shing医学公衆衛生校感染症疫学のBenjamin J. Cowling氏らが、約100人の患者とその同居する家族を対象に調べたもので、NEJM誌2010年6月10日号で発表した。

オセルタミビル予防的投与と集団隔離は、新型インフル感染封じ込めに有効だったか

2009年6月22日から6月25日にかけて、シンガポール軍キャンプ内で新型インフルエンザ(H1N1ウイルス)による4つの集団感染が発生した。防衛省バイオ防御センターのVernon J. Lee氏らは、このケースでオセルタミビル(商品名:タミフル)投与(1日1回75mg)による包囲予防薬物療法(ring chemoprophylaxis)を試み、その有効性を検証した。NEJM誌2010年6月10日号掲載より。

心筋梗塞発症率、2000年以降有意に低下

大規模住民ベースを対象とした研究で、2000年以降、心筋梗塞の発症率が有意に低下していることが明らかにされた。ハーバード・メディカル・スクール、マサチューセッツ総合病院循環器部門のRobert W. Yeh氏らによるもので、NEJM誌2010年6月10日号で発表されている。近年の心筋梗塞発症率および転帰の傾向について、住民ベースの研究はほとんどなかったという。

アイスホッケージュニアリーグ、ボディチェック容認で試合中の怪我3倍超

カナダのアイスホッケージュニアリーグで、ボディチェック(相手の動きに対し体を使って妨害する)行為を容認した場合、容認していない場合と比べて、試合中の怪我の発生リスクが3倍超に増大することが明らかにされた。カナダRoger Jackson Centre for Health and Wellness ResearchのCarolyn A. Emery氏らが、カナダの二つの州のリーグを対象に前向きコホート試験を行い明らかにしたもので、JAMA誌2010年6月9日号で発表した。

QRISKスコアはFraminghamよりも、心血管ハイリスク患者の特定に優れる

心血管疾患10年リスクを予測するものとして英国ノッティンガム大学のQRESEARCH研究グループによって開発されたQRISKスコアのパフォーマンス検証試験が、英国オックスフォード大学Wolfso校医学統計センターのGary S Collins氏らにより行われた。検証されたスコアは最新のQRISK2で、英国政府機関NICEが推奨するFramingham方式との比較、およびQRISK1との比較が行われた。BMJ誌2010年6月5日号(オンライン版2010年5月13日号)掲載より。

スタチンの思わぬ効果・有害事象

スタチンの想定されていない効果および有害事象について検討する、英国人男女200万人超を対象とする前向きコホート研究が、英国ノッティンガム大学プライマリ・ケア部門のJulia Hippisley-Cox氏らにより行われた。思わぬ効果として、食道がんリスク低下の有益性が認められた一方、様々な有害事象リスク上昇との関連が確認されたという。BMJ誌2010年6月5日号(オンライン版2010年5月20日号)掲載より。

20年間で世界の子どもの死亡数は減少したか?:MDG4達成に向けて

世界の5歳未満の子どもの死亡数は1990~2010年の20年間で420万人減少し、低所得国を含む13地域では低下速度が加速化していることが、アメリカWashington大学のJulie Knoll Rajaratnam氏らによるミレニアム目標4(MDG4、2015年までに5歳児未満の死亡率を1990年の水準の3分の1に削減する)の進捗状況の調査から明らかとなった。MDG4の目標達成期限まであと5年しか残されていない。以前の調査では、MDG4達成の軌道上にある国は4分の1以下であることが示され、2000年以降になされた施策構想や投資の観点からは、MDG4達成に向けた進展に増強傾向が認められるか否かの見極めが重要なことが示唆されているという。Lancet誌2010年6月5日号(オンライン版2010年5月24日号)掲載の報告。