日本語でわかる最新の海外医学論文|page:794

胃の前がん病変における胃がんの発症リスク:欧米の低危険群を対象としたコホート研究(解説:上村 直実 氏)-405

胃前がん病変の胃がんリスクに関する研究は、胃がんの最多国である日本のお家芸と思われているが、世界的にみると1992年に報告されたCorreaの仮説に基づく研究が主たるものである。今回、胃粘膜から内視鏡的に採取された生検組織像により分類された、グループ別の胃がん発症リスクに関する大規模なコホート研究の結果が、スウェーデンより報告された。

精神疾患の診断、過去の診断名が大きく影響

 精神医学において診断はユビキタスであり、ベネフィットをもたらす一方で、ラベリング効果の弊害となりうる。英国・キングストン大学のDanny C.K. Lam氏らは、境界性パーソナリティ障害(BPD)併存の診断という不適切な提示がパニック症患者に対する臨床医の判断に影響を及ぼすかどうかを評価した。その結果、診断がもたらす保険数理的価値にかかわらず、現在も問題が併存しているように見える状況下では、臨床医は過去の診断名に大きく影響されることを明らかにした。著者らは、「したがって臨床医は、患者の記述に診断ラベルを使用すること、および過去の診断名が今もなお妥当であるかを確かめることに注意すべきだ。そうしたラベルが自身の臨床診断に影響しうることを忘れず、絶えず診断名に疑問を持つよう努めるべきである」とまとめている。British Journal of Clinical Psychology誌オンライン版2015年7月25日号の掲載報告。

オキシコドン徐放性製剤Xtampza ER、中~重度の慢性腰痛を改善

 オピオイド鎮痛薬は慢性腰痛の治療に用いられるが、一方では乱用が大きな懸念となっている。米国・Analgesic Solutions社のNathaniel Katz氏らは、オキシコドンの乱用防止製剤であるXtampza ER(オキシコドン徐放性製剤)の安全性および有効性を評価する第III 相臨床試験を行い、Xtampza ERは中等度~重度慢性腰痛患者において臨床的に有意な鎮痛効果を発揮することを示した。Pain誌オンライン版2015年8月6日号の掲載報告。

リラグルチド、肥満糖尿病患者の減量に有効/JAMA

 過体重/肥満(BMI 27.0以上)の2型糖尿病患者へのリラグルチド皮下注3.0mg(商品名:ビクトーザ)1日1回投与は、プラセボと比較して56週の間、有意な体重減少が認められ、5%以上または10%超の減量達成者の割合も有意に多かったことが示された。英国・レスター大学のMelanie J. Davies 氏らが、二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験の結果、報告した。体重の5~10%減少は、2型糖尿病および糖尿病関連の合併症を改善することが示唆されているが、現時点では、安全性、有効性が認められた体重コントロール薬はない。著者は今回の結果を踏まえて、さらなる検討を行い、より長期的に有効性、安全性を評価する必要があるとまとめている。JAMA誌2015年8月18日号掲載の報告。

ドイツ版ベックうつ病調査票、実地臨床で活用可能か

 臨床の場において、抑うつ症状の評価手段としてベックうつ病調査票(BDI)が確立されているが、ドイツにおいて疫学調査用にapplied version(BDI-V)が開発されている。ドイツ・Federal Institute of Occupational Safety and Health(FIOSH)のUwe Rose氏らは、BDI-Vとさまざまな機能評価尺度との関連を分析し、BDI-Vのカットオフ値について検討した。検討の結果、性別によりカットオフ値に差がみられ、女性で高い傾向にあることが明らかになったという。Journal of Occupational Medicine and Toxicology誌オンライン版2015年7月19日号の掲載報告。

特発性肺線維症(IPF)初の分子標的薬ニンテダニブ発売

 日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:青野吉晃、以下、日本ベーリンガーインゲルハイム)は8 月31 日、チロシンキナーゼ阻害剤/抗線維化剤ニンテダニブエタンスルホン酸塩(商品名:オフェブ カプセル100mg、同カプセル150 mg、以下オフェブ)を、特発性肺線維症の効能・効果で発売したと発表。

少量飲酒でも発がんリスクは上昇する?/BMJ

 米国人では、大量飲酒は何種かのがんリスクを上昇することが知られている。ハーバードTHチャン公衆衛生大学院のYin Cao氏らは今回、少量~中等量の飲酒(女性1日1杯、男性1日1~2杯)により、有意差はないものの発がんリスクがわずかに上昇することを確認した。一方で、喫煙と独立した飲酒の役割は明らかになっていない。米国では非喫煙者が増加しているが、先行研究で喫煙は、飲酒ががんに及ぼす影響を部分的に促進する可能性があることが示されているものの、非喫煙者に喫煙者に関する知見をそのまま当てはめることはできないという。BMJ誌オンライン版2015年8月18日号掲載の報告より。

抗精神病薬のQT延長リスク、アリピプラゾールはどうか

 特定の抗精神病薬は、補正QT間隔(QTc)の延長リスクを高め、その結果torsades de pointes(TdP:トルサードポワン)や心臓突然死(SCD)のリスクを高める。また、薬剤誘発性ブルガダ症候群(BrS)もSCDと関連している。そして、ほとんどのSCDは、さらなる心リスク因子を有する患者において発生する。これまで、QTc延長リスクが高いトルサードハイリスク患者に対するアリピプラゾールの心臓への安全性に関する評価は行われていなかった。デンマーク・オールボー大学病院のChristoffer Polcwiartek氏らは、アリピプラゾールの心臓への安全性を評価するため、メタ分析的アプローチによるシステマティックレビューを行った。Psychopharmacology誌2015年9月号の報告。

働く糖尿病患者の65%が薬をきちんと服薬せず

 日本イーライリリー株式会社は、フルタイム勤務で、複数の経口薬のみで治療中の40~50代の2型糖尿病患者、390名を対象に意識調査を実施、その結果を発表した。  調査の結果、働き盛りの糖尿病患者では、多忙や不規則な生活で必ずしも医師の指示通り服薬ができていないことが明らかになった。また、ライフスタイルに合わせた治療を望んでおり、外出先での服薬をなくしたり、服薬回数の多さを考慮することが、治療継続のポイントと考えていることがわかった。

1日1回1錠のジェノタイプ1型C型慢性肝炎治療薬 ハーボニー配合錠発売

 ギリアド・サイエンシズ株式会社(以下、ギリアド)は9月1日、ジェノタイプ1型のC型慢性肝炎またはC型代償性肝硬変におけるウイルス血症改善を適応とするNS5A阻害薬と核酸型NS5Bポリメラーゼ阻害薬の配合剤である「ハーボニー配合錠」(以下、ハーボニー)(一般名:レジパスビル・ソホスブビル配合剤)を発売した。

H.pylori除菌治療、最も有効なレジメンは?/BMJ

 複数あるヘリコバクター・ピロリ(H.pylori)除菌治療の有効性と忍容性について、中国・安徽医科大学のBao-Zhu Li氏らが、システマティックレビューとネットワークメタ解析により評価を行った。結果、14種類の除菌治療に関するデータが入手でき、解析の結果、標準治療とされている抗菌薬3剤併用7日間の効果が最も低く、最も有効であるのは、併用療法(抗菌薬3剤+PPI阻害薬)で、次いで抗菌薬3剤+生菌10~14日間、レボフロキサシンベースのトリプル治療10~14日間、ハイブリッド治療14日間、逐次的治療10~14日間であることが示唆された。標準治療は除菌効果が低いとして、多くの新たなレジメンが導入され、効果が高いものがあることも報告されている。しかし、各治療間の比較や最適な治療を特定する検討はこれまで限定的であった。BMJ誌オンライン版2015年8月19日号掲載の報告。

長時間労働は、冠動脈心疾患よりも脳卒中のリスクを高める/Lancet

 長時間労働を行う労働者は、標準時間労働の場合よりも脳卒中のリスクが高く、冠動脈心疾患のリスクは脳卒中に比べると低いことが、英国ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのMika Kivimaki氏らIPD-Work Consortiumの検討で示された。長時間労働は心血管疾患や冠動脈心疾患のリスクを増大させることが、日本の調査を含むいくつかの研究で示され、標準時間労働と比較した相対リスク(RR)は約1.4倍に上昇することが知られている。一方、これらの研究の問題点として以下の点が挙げられるという。(1)出版バイアス(結果が肯定的な研究は、否定的な研究に比べ公表される可能性が高い)、(2)逆因果関係(進行性の器質的心血管疾患があるために、イベント発生前の期間の労働時間が短くなった)、(3)交絡関係(長時間労働は社会経済的地位が高い職種で多いが、心血管疾患は地位が低い職種のほうが高頻度)、(4)重要な心血管エンドポイントである脳卒中のリスクを検討した試験がほとんどない。Lancet誌オンライン版2015年8月19日号掲載の報告より。