日本語でわかる最新の海外医学論文|page:476

エピジェネティック制御薬は心血管疾患の残余リスクを低下させない(解説:佐田政隆氏)-1217

冠動脈疾患に対する薬物療法の進歩には目を見張るものがあり、患者の長期予後を大きく改善させた。その中でも高用量のストロングスタチンは心血管イベントを3割から4割低下させるという数々のエビデンスが積み重ねられて、現在、標準的治療となっている。しかし、逆にいうと6割から7割の人が至適な薬物療法を行っても心血管イベントを起こしてしまうことになる。これが残余リスクとして非常に問題になっている。

新型コロナ、病棟の床や靴底、患者から4mの空気からも検出

 病棟における新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の分布について、中国・武漢のCOVID-19専門病院である火神山医院の空気と環境表面のサンプルを調査したところ、SARS-CoV-2は、床、コンピュータのマウス、ゴミ箱、ベッドの手すり、靴底など広く分布し、患者から約4m離れた空気からも検出された。Academy of Military Medical Sciences(北京)のZhen-Dong Guo氏らが、Emerging Infectious Diseases誌オンライン版2020年4月10日号で報告した。  著者らは、2020年2月19日~3月2日、火神山医院の集中治療室(ICU)とCOVID-19一般病棟(GW)の環境表面と空気のサンプルを検査した。ICUは重症患者15例、GWは軽症患者24例を収容していた。

アルツハイマー病とレビー小体型認知症の入院リスク

 認知症患者の入院リスクは高いことが知られているが、このことに認知症の種類による違いがあるのかは、あまりわかっていない。ノルウェー・スタヴァンゲル大学病院のRagnhild Oesterhus氏らは、アルツハイマー病(AD)患者とレビー小体型認知症(LBD)患者で入院に違いがあるのかを調査し、その入院率について年齢をマッチさせた一般集団との比較を行った。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2020年3月5日号の報告。  対象は、軽度のAD(110例)またはLBD(91例)と最近診断された外来診療所受診患者(年齢:75.7±7.4歳)。対象患者には、診断後5年間または死亡までフォローアップが行われた。

がん患者の脳卒中リスクに化学療法は影響するか

 化学療法はがん関連脳卒中の原因となる可能性があるが、脳卒中リスクを高めるかどうかは不明である。今回、大阪大学の北野 貴也氏らが脳卒中リスクへの化学療法の影響を調べたところ、化学療法を受けたがん患者の脳卒中リスク上昇はがんの進行が原因と考えられ、化学療法と脳卒中リスク増加は関連していないことが示唆された。Thrombosis and Haemostasis誌2020年4月号に掲載。  著者らは、2007~15年にスクリーニングされた病院ベースのがんレジストリにおける2万7,932例のうち、データが揃っている1万9,006例の診療記録を調査した。検証済みのアルゴリズムを使用し、がんの診断から2年以内の脳卒中イベントを同定した。最初の治療計画における化学療法の有無により患者を分け、カプランマイヤー法と層別Cox回帰モデルを用いて化学療法と脳卒中との関連を調べた。

3次治療以降のNSCLCに対するデュルバルマブ+tremelimumabの成績(ARCTIC)/Ann Oncol

 3次治療以降の転移のある非小細胞肺がん(NSCLC)に対する、デュルバルマブ+tremelimumabと標準治療(SoC)を評価した第III無作為化非盲検試験ARCTICの結果がAnnals of Oncology誌2020年2月20日オンライン版で発表された。  ARCTICは試験AおよびBの2つの独立した研究で構成されている。

TAVI後の出血リスク、抗凝固薬単独vs. 抗血小板薬併用/NEJM

 経口抗凝固薬内服中に経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)を受ける患者において、術後1ヵ月または12ヵ月にわたる重篤な出血の発生率は、経口抗凝固薬+抗血小板薬(クロピドグレル)併用療法と比較し経口抗凝固薬単独療法のほうが低いことが示された。オランダ・St. Antonius HospitalのVincent J. Nijenhuis氏らが、欧州の17施設で実施した研究者主導の無作為化非盲検並行群間比較試験「POPular TAVI試験」の2つのコホートのうち、コホートBの結果を報告した。TAVI後の抗凝固療法については、抗凝固薬の単独療法または抗血小板薬との併用療法の役割に関する検証がこれまで十分ではなかった。NEJM誌オンライン版2020年3月29日号掲載の報告。

血行再建術後のPAD患者へのリバーロキサバン併用は?/NEJM

 下肢血行再建術を受けた末梢動脈疾患(PAD)患者において、リバーロキサバン+アスピリン併用療法はアスピリン単独療法と比較して、急性下肢虚血・血管疾患による大切断・心筋梗塞・虚血性脳卒中・心血管死の複合エンドポイントの発生率を有意に抑制したことが報告された。ただし、Thrombolysis in Myocardial Infarction(TIMI)分類による大出血の発生率は両群間で有意差はなく、国際血栓止血学会(ISTH)分類による大出血の発生率は、アスピリン単独療法と比較してリバーロキサバン+アスピリン併用療法で有意に上昇した。米国・Colorado Prevention Center(CPC)Clinical ResearchのMarc P. Bonaca氏らが、日本を含む世界34ヵ国の542施設で実施した第III相二重盲検比較試験「VOYAGER PAD試験」の結果を報告した。下肢血行再建術を受けたPAD患者は主要有害下肢/心血管イベントのリスクが高いが、このような患者におけるリバーロキサバンの有効性と安全性は不明であった。NEJM誌オンライン版2020年3月28日号掲載の報告。

血栓回収療法前の再灌流に対するtenecteplase増量の効果(解説:中川原譲二氏)-1214

EXTEND-IA TNK試験において、tenecteplase 0.25mg/kgによる血栓溶解療法は、アルテプラーゼと比較し、脳梗塞患者に対する血栓除去術施行前の再灌流を改善することが示された。これを受けて、EXTEND-IA TNK Part 2試験は、tenecteplase 0.40mg/kgが、0.25mg/kgと比較して、血栓除去術施行前の脳再灌流を改善するかどうか確定することを目的に行われた。本試験は、オーストラリアとニュージーランドの27施設で、2017年12月~2019年7月の期間に登録された患者に対し非盲検下で治療を行い、画像診断および臨床転帰の評価は盲検下で実施した無作為化臨床試験である。対象は、標準的な静脈血栓溶解療法の適格基準である発症後4.5時間未満で内頸動脈/中大脳動脈/脳底動脈の閉塞を有する脳梗塞成人患者300例とした。tenecteplase 0.40mg/kg(最大40mg)群(150例)または0.25mg/kg(最大25mg)群(150例)に無作為化し、それぞれ血管内血栓除去術の前に投与した。

NSCLC1次治療におけるデュルバルマブ+tremelimumabの成績(MYSTIC)/JAMA Oncol

 未治療の転移を有する非小細胞肺がん(NSCLC)において、デュルバルマブおよびデュルバルマブ・tremelimumab併用と化学療法を比較した無作為化非盲検第III相MYSTIC 試験の結果がJAMA Oncology誌2020年4月9日オンライン版に発表された。 ・対象:未治療の転移を有するNSCLC患者(EGFR、ALK変異含まず)1,118例 ・試験群1:デュルバルマブ (20mg/kg 4週ごとPDまで) ・試験群2:デュルバルマブ (20mg/kg 4週ごとPDまで) +tremelimumab (1mg/kg 4週ごと、最大4回), ・対照群:化学療法(プラチナ・ダブレット4~6サイクル) ・評価項目: [主要評価項目]PD-L1陽性(TPS≧25%)患者の全生存期間(OS)(デュルバルマブ対化学療法、デュルバルマブ+tremelimumab対化学療法 )、同患者の無増悪生存期間(PFS) (デュルバルマブ+tremelimumab対化学療法) [探索的研究]血中腫瘍遺伝子変異量(bTMB)による評価

新型コロナで7都府県の健診中断へ/日本人間ドック学会

 2020年4月10日、日本人間ドック学会(理事長 篠原 幸人氏)は健診現場での感染拡大を防ぐため、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に係る緊急事態宣言を踏まえた人間ドック健診等における対応について」を通知した。  7都府県を対象とした「緊急事態宣言」が4月7日~5月6日まで発出されたことにより、国の定める法定健診(特定健康診査・特定保健指導、労働安全衛生法に基づく一般健康診断、学校保健安全法に基づく児童生徒等及び職員の健康診断)は、4月中の実施が見送られる。通知には以下の協力事項が記載されている。

早期乳がん患者の認知障害、化学内分泌療法vs.内分泌療法/JCO

 がん治療に伴う認知機能障害(CRCI)は補助化学療法中によくみられ、持続する場合がある。米国・Wake Forest School of MedicineのLynne I Wagner氏らは、TAILORx試験(早期乳がん患者の補助療法として化学内分泌療法または内分泌療法単独に無作為に割り付け)において認知障害を前向きに評価したところ、3ヵ月と6ヵ月では化学内分泌療法のほうがCRCIが有意に多かったが、時間とともに差が縮小し12ヵ月以降では有意差は見られなかった。この結果から著者らは「化学内分泌療法は内分泌療法単独に比べて早期に認知障害を引き起こしたが持続的ではなく、補助化学療法によって再発リスク低減が示されている患者や医師に安心をもたらす」としている。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2020年4月9日号に掲載。

統合失調症や双極性障害患者における寛解後の睡眠と概日リズム障害~メタ解析

 統合失調症では、睡眠障害や概日リズム障害が一般的に認められるが、その特徴はよくわかっていない。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのNicholas Meyer氏らは、寛解期統合失調症患者における睡眠概日変化の重症度や不均一性について比較検討を行った。また、これらのエピソードについて双極性障害患者との比較を行った。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2020年3月10日号の報告。  統合失調症または双極性障害患者を対象としてアクチグラフィーパラメータを調査したケースコントロール研究をEMBASE、Medline、PsycINFOより検索した。

中国でのCOVID-19、第2波の潜在的可能性は/Lancet

 中国では2020年1月23日に全国的な新型コロナウイルス感染症(coronavirus disease 2019、COVID-19)拡散防止措置を実施後、国内の主な感染地域における感染者の再生産数(1人の感染者が生産する2次感染者数、Rt)は1未満へと大幅に減少し維持されていたことを、中国・香港大学のKathy Leung氏らが報告した。しかしながら、ウイルス再生産数のリスクは高く、とくに海外から持ち込まれるリスクが高いとして、著者は「潜在的な第2波に備えてRtと致死率の厳格なモニタリングを行いつつ、健康と経済活動の最適なバランスを取ることが必要である」としている。Lancet誌オンライン版2020年4月8日号掲載の報告。

HFrEFへの経口sGC刺激薬、複合リスクを有意に低下/NEJM

 左室駆出率(LVEF)が低下したハイリスクの心不全患者に対し、新しい経口可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬vericiguatの投与はプラセボと比較して、心血管死または心不全による入院の複合イベントリスクを有意に低下することが示された。カナダ・アルバータ大学のPaul W. Armstrong氏らが、5,050例を対象に行った第III相プラセボ対照無作為化二重盲検試験の結果で、NEJM誌オンライン版2020年3月28日号で発表した。LVEFが低下し直近に入院または利尿薬静注を受ける心不全患者におけるvericiguatの有効性は明らかになっていなかった。

上部尿路がんに対する術後抗がん化学療法の有効性:POUT trial第III相試験(解説:宮嶋哲氏)-1216

上部尿路がんは予後不良であるものの、術後補助化学療法の有効性は確認されていない。本研究では腎盂尿管がんで腎尿管全摘除術を施行された患者(261例)を対象に、経過観察群とシスプラチン主体の抗がん化学療法投与群(ゲムシタビン+シスプラチンまたはカルボプラチン)の2群にランダム化してその有効性を前向きに比較検討したものである。2012年から2017年までに登録された261症例のうち、132例が化学療法群、129例が経過観察群に割り付けられ、観察期間中央値は30.3ヵ月であった。術後化学療法はDFS(HR:0.45、p=0.0001)ならびにMFS(HR:0.48、p=0.0007)を有意に改善した。3年無事象生存率(event-free survival)は化学療法群で71%、経過観察群で46%であった。一方、Grade3以上の有害事象は、化学療法群で44%、経過観察群で4%に認めたが、治療関連死は認めなかった。

重症COVID-19へのremdesivir、68%で臨床的改善か/NEJM

 抗ウイルス薬remdesivirを、重症新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者53例(日本からの症例9例を含む)に投与したところ、36例(68%)で臨床的改善がみられた。米国・シダーズ・サイナイ医療センターのJonathan Grein氏らが、remdesivirの人道的使用によるコホート分析データを、NEJM誌オンライン版2020年4月10日号で発表した。 <試験概要> ・対象:COVID-19 感染による重度急性呼吸器症状を呈する入院患者で、酸素飽和度≦ 94%もしくは酸素補充を受けている患者

肺がん1次治療、二ボルマブ・イピリムマブ併用への化学療法の限定追加療法、米国および EU で申請/BMS

 ブリストル・マイヤーズ スクイブは、2020年4月8日、米国食品医薬品局(FDA)が、ファーストライン治療薬として、化学療法のサイクルを限定して追加した二ボルマブ(商品名:オプジーボ)とイピリムマブ(商品名:ヤーボイ)の併用療法の生物学的製剤承認一部変更申請(sBLA)を受理したと発表。  また、欧州医薬品庁(EMA)は、同適応に関して、化学療法を限定して追加した二ボルマブとイピリムマブの併用療法の承認申請を受理した。本申請の受理により、提出が完了し、EMAの中央審査が開始される。

COVID-19情報、一般市民はTVニュースからが8割/アイスタット

 新型コロナウイルス感染症の拡大について、一般市民の意識の実態を知る目的に、株式会社アイスタット(代表取締役社長 志賀保夫)は、「新型コロナウイルスに関するアンケート調査」を行った。  アンケートは、業界最大規模のモニター数を誇るセルフ型アンケートツール“Freeasy”を運営するアイブリッジ株式会社の会員で20~79歳の300人を対象に調査を実施したもの。  同社では今後も毎月定期的に定点調査を行い、その結果を報告するとしている。

うつ病の原因リスク遺伝子

 うつ病に関連するいくつかの遺伝的変異は、ゲノムワイド関連解析(GWAS)により特定されている。しかし、リスク遺伝子座において関連シグナルの要因となる原因変異を特定することは、依然として大きな課題となっている。中国・Jining Medical UniversityのXin Wang氏らは、うつ病との因果関連が認められる遺伝子の特定を行った。Journal of Affective Disorders誌2020年3月15日号の報告。  Summary data-based Mendelian Randomization(SMR)とPsychiatric Genomics Consortium(PGC)のGWASサマリーおよび脳の発現定量的形質遺伝子座データを用いて、その発現レベルとうつ病との因果関連が認められる遺伝子の特定を行った。

腎デナベーション、降圧薬非投与の高血圧に有効/Lancet

 降圧薬治療を受けていない高血圧患者の治療において、カテーテルを用いた腎神経焼灼術(腎デナベーション)は偽手術と比較して、優れた降圧効果をもたらし、安全性も良好であることが、ドイツ・ザールラント大学のMichael Bohm氏らの検討(SPYRAL HTN-OFF MED Pivotal試験)で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2020年3月29日号に掲載された。カテーテルを用いた腎デナベーションは、腎神経の焼灼を介して交感神経活性を抑制することで血圧を低下させる治療法。初期の概念実証研究では降圧効果が観察されているが、血圧がコントロールされていない患者を対象とした無作為化偽対照比較試験では、ベースラインに比べ有意な降圧効果を認めたものの、対照との間には差がなかったと報告されている。