日本語でわかる最新の海外医学論文|page:453

急性重症胆石性膵炎、ERCPによる括約筋切開vs.保存療法/Lancet

 胆管炎のない重症胆石性膵炎が疑われる患者に対し、内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)による括約筋切開の実施は保存療法と比較して、主要な合併症または死亡の複合エンドポイントを低下しないことが示された。オランダ・エラスムス大学医療センターのNicolien J. Schepers氏らが232例を対象に行った多施設共同無作為化並行群間比較優越性試験の結果で、著者は「示された所見は、保存療法の選択を戦略として支持するものであった」と述べている。胆管炎のない胆石性膵炎患者については、ERCP・胆道括約筋切開術がアウトカムを改善するのか、依然として明らかになっていなかった。Lancet誌2020年7月18日号掲載の報告。

英国の新型コロナワクチン、第I/II相試験で有望な結果/Lancet

 英国で開発中の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のスパイク蛋白を発現する、チンパンジー・アデノウイルスベクター型ワクチン(ChAdOx1 nCoV-19)の第I/II相臨床試験の結果が発表された。安全性プロファイルは許容可能で、ブースター投与後の抗体反応の増加も確認されたという。英国・オックスフォード大学のPedro M. Folegatti氏らによる検討で、著者は「今回の試験結果は液性免疫と細胞性免疫の両者の誘導を示すもので、この候補ワクチンの第III相試験における大規模評価の進行を支持するものであった」と述べている。Lancet誌オンライン版2020年7月20日号掲載の報告。

COVID-19、学校・職場閉鎖などの介入の効果は?/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への介入としての身体的距離(フィジカルディスタンス)の確保は、COVID-19の発生を13%抑制し、移動制限(封鎖)は実施時期が早いほうが抑制効果は大きいことが、英国・オックスフォード大学のNazrul Islam氏らが世界149ヵ国を対象に実施した自然実験で明らかとなった。研究の成果はBMJ誌2020年7月15日号に掲載された。COVID-19に有効な治療レジメンやワクチンのエビデンスがない中で、感染を最小化するための最も実践的な介入として、身体的距離の確保が推奨されてきた。この推奨の目標には、公衆衛生や保健サービスにおけるCOVID-19による負担の軽減や、この疾患の予防と管理のための時間の確保も含まれている。これらの介入の有効性に関するこれまでのエビデンスは、主にモデル化研究に基づいており、実地の患者集団レベルの有効性のデータは世界的に少ないという。

FDA、マントル細胞リンパ腫に新CAR-T療法を迅速承認

 米国食品医薬品局(FDA)は、2020年7月24日、成人の再発・難治性マントル細胞リンパ腫患者治療に、CD19を標的とするCAR-T細胞免疫療法brexucabtagene autoleucelを迅速承認した。  この承認は、アントラサイクリンまたはベンダムスチンを含む化学療法、抗CD20抗体、BTK阻害薬の治療歴のある再発・難治性マントル細胞リンパ腫(MCL)患者74例を対象とした非盲検多施設単群試験ZUMA-2に基づいたもの。主要有効性評価項目は、独立レビュー委員会による客観的奏効率(ORR)であった。

幼児期の睡眠問題とその後の精神疾患との関係

 小児期の悪夢は、思春期の精神疾患および境界性パーソナリティ障害(BPD)とプロスペクティブに関連している。しかし、この関連が睡眠行動問題にも当てはまるかは不明であり、潜在的なメカニズムもよくわかっていない。英国・バーミンガム大学のIsabel Morales-Munoz氏らは、親から報告された幼児期の睡眠関連問題と11~13歳時の精神疾患およびBPD症状、10歳時のうつ症状に関連する潜在的な影響について調査を行った。JAMA Psychiatry誌オンライン版2020年7月1日号の報告。  13年以上フォローアップを行ったAvon Longitudinal Study of Parents and Children birth cohortに参加した1万3,488人を対象に評価を行った。1991年4月1日~1992年12月31日に出産予定日であった英国・エイボン州出身の女性に対し、研究への参加を依頼した。データ分析は、2019年5月1日~12月31日に実施した。12~13歳の精神疾患症状は、Psychosis-Like Symptom Interviewを用いて評価し、11~12歳のBPD症状は、UK Childhood Interview for DSM-IV Borderline Personality Disorderを用いて評価した。親から報告された、子供の月齢および年齢が6、18、30ヵ月、3.5歳、4.8歳、5.8歳時における、夜間の睡眠時間、中途覚醒頻度、就寝時間、睡眠習慣の規則性を評価した。

COVID-19流行、 ACSの入院数減に影響か/Lancet

 イングランドでは、急性冠症候群(ACS)による入院患者数が、2019年と比較して2020年3月末には大幅に減少(40%)し、5月末には部分的に増加に転じたものの、この期間の入院数の低下は、心筋梗塞による院外死亡や長期合併症の増加をもたらし、冠動脈性心疾患患者に2次予防治療を提供する機会を逸した可能性があることが、英国・オックスフォード大学のMarion M. Mafham氏らの調査で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2020年7月14日号に掲載された。COVID-19の世界的流行期に、オーストリアやイタリア、スペイン、米国などでは、ACSによる入院数の低下や、急性心筋梗塞への直接的経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の施行数の減少が報告されているが、入院率の変化の時間的な経過やACSのタイプ別の影響、入院患者への治療などの情報はほとんど得られていないという。

新型コロナ重症例、デキサメタゾンで28日死亡率が低下/NEJM

 英国・RECOVERY試験共同研究グループのPeter Horby氏らは 、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で入院した患者のうち、侵襲的人工呼吸器または酸素吸入を使用した患者に対するデキサメタゾンの投与が28日死亡率を低下させることを明らかにした。NEJM誌オンライン版2020年7月17日号に掲載報告。なお、この論文は、7月17日に改訂された厚生労働省が発刊する「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第2.2版」の“日本国内で承認されている医薬品”のデキサメタゾン投与の参考文献である。  この研究では、2020年3月19~6月8日の期間にCOVID-19入院患者へのデキサメタゾン投与における有用性を把握するため、非盲検試験が行われた。

認知症関連の行方不明発生とその後の死亡の関連因子

 認知症患者の増加に伴い、認知症に関連する行方不明やその後の死亡が深刻な問題となっている。しかし、認知症関連の行方不明発生率、その後の死亡率、リスク因子についてはよくわかっていない。国立循環器病研究センター研究所の村田 峻輔氏らは、日本の都道府県別に集計されたデータを用いて、生態学的研究を行った。Journal of Epidemiology誌オンライン版2020年6月27日号の報告。  2018年の警察庁の統計より、認知症関連の行方不明とその後の死亡に関するデータを抽出し、これらに影響を及ぼす候補変数として、高齢者の特性、ケア、安全性に関する変数を抽出した。候補変数と行方不明発生率および死亡率との関連は、交絡因子で調整した後、一般化線形モデルを用いて分析した。

新型コロナウイルス診療の手引きをアップデート/厚生労働省

 7月17日、厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部は、全国の関係機関ならびに医療機関に向けに作成する「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き」を改訂し、2.2版として発表した。  3月17日に第1版が発行されたこの手引きは、5月18日に第2版が発行され、その後も毎月1回のペースで改訂されている。今回の改訂における主なポイントは以下のとおり。 ・国内データ:直近まで更新 ・診断:遺伝子増幅検査(LAMP法・PCR法)の解説を追加 ・診断:抗原定量検査の解説を追加

医師の2020年夏季ボーナス支給、新型コロナの影響は?

 6~7月と言えば、業務に追われるもボーナス支給日を心待ちに日々励んでいる人が多い時期。ところが今年は新型コロナウイルスの影響で状況は一変。外来患者減などが医療施設の経営に大打撃を与え、医療者の給与や将来設計もが脅かされる事態に発展している。  この状況を受け、ケアネットでは7月9日(木)~15日(水)、会員医師1,014名に「夏季ボーナスの支給状況などに関するアンケート」を実施。その結果、全回答者のうち14.6%は本来支給されるはずの夏季ボーナスが不支給または未定であり、支給された方でも25%は例年より減額されていたことが明らかになった。

9価HPVワクチンの製造販売承認を取得/MSD

 わが国では、子宮頸がんに毎年約10,000人の女性が新規罹患し、約2,800人が亡くなっている。とくに子宮頸がんは発症年齢が出産や働き盛りの年齢と重なることもあり、治療によって命を取りとめても女性の人生に大きな影響を及ぼすことが多い疾患であり、本症の予防ではワクチンの接種と定期的な検診が重要となる。  そんな予防の切り札となるワクチンにつきMSD株式会社は、7月21日、ヒトパピローマウイルス(HPV)の9つの型に対応した組換え沈降9価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン[酵母由来](商品名:シルガード9水性懸濁筋注シリンジ)の製造販売承認を取得したことを発表した。

COVID-19流行下における緩和ケア、各施設の苦闘と工夫

 日本がんサポーティブケア学会、日本サイコオンコロジー学会、日本緩和医療学会は8月9~10日にオンライン形式で合同学術集会を予定している。これに先立って、7月上旬に特別企画として「COVID19と緩和ケア・支持療法・心のケア」と題するオンラインセミナーが行われた。3学会から立場の異なるメンバーが集まり、COVID-19が緩和ケアに与える影響とその対処法について、それぞれの経験を語り合った。 【司会】 ・里見 絵理子氏(国立がん研究センター中央病院 緩和医療科科長) ・林 ゑり子氏(藤沢湘南台病院 がん看護専門看護師) 【登壇者】 ・廣橋 猛氏(永寿総合病院 がん診療支援・緩和ケアセンター長) ・柏木 秀行氏(飯塚病院 連携医療・緩和ケア科部長) ・秋月 伸哉氏(がん・感染症センター駒込病院 精神腫瘍科科長) ・渡邊 清高氏(帝京大学医学部内科学 腫瘍内科准教授)

急性脳梗塞/TIA、チカグレロル+アスピリン併用で予後改善/NEJM

 軽症~中等症の急性非心原性虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)で、静脈内または血管内血栓溶解療法を受けなかった患者において、チカグレロル+アスピリン併用療法はアスピリン単独療法と比較し、発症後30日時点の脳卒中/死亡の複合アウトカムの発生が低下した。米国・テキサス大学オースティン校のS. Claiborne Johnston氏らが、無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「THALES試験」の結果を報告した。先行研究では、チカグレロルはアスピリンと比較して、脳卒中/TIA後の血管イベントまたは死亡の予防という点で良好な結果は示されておらず、脳卒中予防に対するチカグレロル+アスピリン併用療法の有効性は十分検討されていなかった。NEJM誌2020年7月16日号掲載の報告。

ACE阻害薬とARB、COVID-19死亡・感染リスクと関連せず/JAMA

 ACE阻害薬/ARBの使用と、高血圧症患者における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診断率、またはCOVID-19と診断された患者における死亡率や重症化との間に、有意な関連は認められなかった。デンマーク・コペンハーゲン大学病院のEmil L. Fosbol氏らが、デンマークの全国登録を用いた後ろ向きコホート研究の結果を報告した。ACE阻害薬/ARBは、新型コロナウイルスに対する感受性を高め、ウイルスの機能的受容体であるアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)の発現が亢進することによりCOVID-19の予後が悪化するという仮説があったが、今回の結果から著者は「COVID-19のパンデミック下で臨床的に示唆されているACE阻害薬/ARBの投与中止は、支持されない」とまとめている。JAMA誌2020年7月14日号掲載の報告。

“do処方”を見直そう…?(解説:今中和人氏)-1263

誰しもが駆け出しとして医師人生をスタートする。医療におけるさまざまな処置や処方には、往々にして歴史的な変遷や患者限定の根拠があったりして実に奥深く、駆け出しがすべてを理解して対応するのは事実上不可能だが、何でもかんでも先輩に尋ねるわけにもゆかない。まして「これは本当に必要なんですか?」なんて、一昔前の「仕分け」のような質問をすればうっとうしがられること必定だから、いわゆる“do処方”の乱発が起きる。もちろん、自分なりに意味付けをしてのことだが、世の中には実はほとんどアップデートされておらず、もはや伝統芸能の域に達しているような処置や処方も存在する。

マスク着用で医療者のCOVID-19抑制効果が明らかに/JAMA

 マサチューセッツ州最大の医療システムで12の病院と75,000人超の従業員を抱えるMass General Brigham(MGB)は、2020年3月、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)において、医療従事者(HCW:health care workers )のCOVID-19の前兆に対する体系的な検査やサージカルマスクを着用した全HCWと患者に対してユニバーサルマスキングを含む多面的な感染対策の研究を実施した。その結果、MGBでのHCWのマスク着用習慣がHCW間の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)陽性率の有意な低下に関連していたと示唆された。また、患者-HCWおよびHCW同士の感染率低下に寄与する可能性も明らかになった。JAMA誌2020年7月14日号リサーチレターでの報告。

自閉スペクトラム症と統合失調症の鑑別症状

 自閉スペクトラム症(ASD)と統合失調症(SZ)は、類似症状を呈する異種性の神経発達障害である。米国・イェール大学のDominic A. Trevisan氏らは、ASDとSZの重複および鑑別する症状の特定を試みた。Frontiers in Psychiatry誌2020年6月11日号の報告。  対象は、成人のASD患者53例、SZ患者39例、定型発達者40例。すべての対象者に、ASD評価のための半構造化観察検査(ADOS-2)および陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)による評価を行った。ADOSの感度と特異性は、診断カットオフ値を用いて評価した。群間の重複症状の分析には、IQと性別分布による群間差をコントロールした後、ANOVA、ROC曲線、ANCOVAを用いた。

CABGの10年転帰、橈骨動脈vs.伏在静脈グラフト/JAMA

 冠動脈バイパス術(CABG)を行う際、橈骨動脈グラフトの使用は伏在静脈グラフトに比べ、複合心血管アウトカムの発生リスクは低いことを、米国・Weill Cornell MedicineのMario Gaudino氏らが、5件の無作為化比較試験(被験者総数1,036例、追跡期間中央値10年)についてメタ解析を行い明らかにした。これまで、観察試験では、橈骨動脈グラフト使用のほうが伏在静脈グラフト使用よりも、臨床的アウトカムを改善する可能性が示唆されていたが、無作為化試験では確認されていなかった。JAMA誌2020年7月14日号掲載の報告。

新型コロナワクチン、米の第I相試験で全例が抗体獲得/NEJM

 米国・国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)とModerna(米国マサチューセッツ州ケンブリッジ)が共同で開発中の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)mRNAワクチン「mRNA-1273」の、第I相臨床試験の結果が発表された。全例で中和抗体が検出され、試験中止について事前に規定した安全性に関する懸念は発生しなかった。米国・カイザーパーマネンテ(Kaiser Permanente Washington Health Research Institute)のLisa A. Jackson氏らmRNA-1273 Study Groupによる報告で、著者は「結果は、本ワクチンのさらなる開発を支持するものであった」とまとめている。NEJM誌オンライン版2020年7月14日号掲載の報告。

小児精神疾患における80種の向精神薬の安全性~メタ解析

 精神疾患は、小児期や青年期にしばしば発症する。小児精神疾患の治療に適応を有する向精神薬はさまざまあり、適応外での使用が往々にして行われる。しかし、これら向精神薬の副作用については、発達途上期間中であることを踏まえ、とくに注意が必要である。イタリア・パドヴァ大学のMarco Solmi氏らは、小児および青年の精神疾患に対する抗うつ薬、抗精神病薬、注意欠如多動症(ADHD)治療薬、気分安定薬を含む19カテゴリ、80種の向精神薬における78の有害事象を報告したランダム化比較試験(RCT)のネットワークメタ解析およびメタ解析、個別のRCT、コホート研究をシステマティックに検索し、メタ解析を行った。World Psychiatry誌2020年6月号の報告。