日本語でわかる最新の海外医学論文|page:4

経口セマグルチドはASCVDかつ/またはCKDを合併した肥満2型糖尿病患者の心血管イベントを減らす(解説:原田和昌氏)

GLP-1受容体作動薬の注射剤は、さまざまな異なる患者像において心血管系の有効性が確立しており、メタ解析でも同様の結果が得られている。しかし、経口セマグルチドはPIONEER 6試験にて2型糖尿病(T2DM)かつ心血管リスクの高い患者における安全性は確立されたが、主要有害心血管イベント(MACE)に対する有効性は示されなかった。米国のDarren K. McGuire氏らはSOUL試験により、アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)かつ/または慢性腎臓病(CKD)を有する平均BMI 31のT2DM患者において、経口セマグルチドがプラセボと比較してMACEのリスクを有意に減少させることを示した。

非定型うつ病に対する薬理学的治療の比較〜ネットワークメタ解析

 非定型うつ病は、気分反応性、過眠、鉛様の麻痺を含む非常に一般的なサブタイプであり、メランコリックうつ病との異なる治療アプローチが求められる。イタリア・University School of Medicine of Naples Federico IIのMichele Fornaro氏らは、これまで実施されていなかった非定型うつ病に対する薬理学的治療についてのネットワークメタ解析を実施した。European Neuropsychopharmacolojy誌2025年7月号の報告。

TN乳がん術前ペムブロリズマブ併用化学療法、ddAC vs.AC

 高リスクの早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対し、ペムブロリズマブ+化学療法による術前補助療法およびペムブロリズマブ単独による術後補助療法は、病理学的完全奏効(pCR)および無イベント生存期間(EFS)を有意に改善することがKEYNOTE-522試験で示された。しかし、同試験では術前化学療法のレジメンとしてdose-denseAC(ddAC)療法は使用されていなかった。カルボプラチン+パクリタキセルとペムブロリズマブにddAC療法を併用した術前補助療法の有効性と安全性を評価する目的で、ブラジル・Hospital do Cancer de LondrinaのVitor Teixeira Liutti氏らはメタ解析を実施。結果をBreast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2025年6月13日号で報告した。

不適切な医療行為は一部の医師に集中~日本のプライマリケア

 日本のプライマリケアにおける「Low-Value Care(LVC:医療的価値の低い診療行為)」の実態を明らかにした大規模研究が、JAMA Health Forum誌オンライン版2025年6月6日号に掲載された。筑波大学の宮脇 敦士氏らによる本研究によると、抗菌薬や骨粗鬆症への骨密度検査などのLVCを約10人に1人の患者が年1回以上受けており、その提供は一部の医師に集中していたという。  LVCとは、特定の臨床状況において、科学的根拠が乏しく、患者にとって有益性がほとんどない、あるいは害を及ぼす可能性のある医療行為を指す。過剰診断・過剰治療につながりやすく、医療資源の浪費や有害事象のリスク増加の原因にもなる。本研究で分析されたLVCは既存のガイドラインや先行研究を基に定義され、以下をはじめ10種類が含まれた。 ●急性上気道炎に対する去痰薬、抗菌薬、コデインの処方 ●腰痛に対するプレガバリン処方 ●腰痛に対する注射

糖尿病と高血圧の併発が命を脅かす

 米国では2型糖尿病と高血圧を併発している患者が過去20年間で倍増し、そのような患者は全死亡リスクが約2.5倍、心血管死のリスクは約3倍に上ることが明らかになった。これは米コロンビア大学メイルマン公衆衛生大学院のNour Makarem氏らの研究の結果であり、詳細は「Diabetes Care」に5月21日掲載された。  この研究には、1999~2018年の米国国民健康栄養調査(NHANES)に参加した4万8,727人の成人のデータが用いられた。参加者全体を、2型糖尿病も高血圧もない群(50.5%)、2型糖尿病のみの群(2.4%)、高血圧のみの群(38.4%)、両方に罹患している群(8.7%)という4群に分類して、全死亡(あらゆる原因による死亡)と心血管死のリスクを比較した。なお、2型糖尿病と高血圧を併発している患者の割合は、前記の期間中に6%から12%へと倍増していた。

電子タトゥーが脳への負担を測定

 何らかの問題について長時間にわたり考え過ぎて、顔が熱くなって頭が疲れ果て、目がかすんでしまったことはないだろうか。新たな研究で、一時的に肌に貼り付けるワイヤレスの電子タトゥーにより、このようなメンタルワークロード(精神的作業により生じる負荷)を測定できる可能性が示された。米テキサス大学オースティン校工学分野教授のLuis Sentis氏らによるこの研究の詳細は、「Device」に5月29日掲載された。  メンタルワークロードは人間の認知パフォーマンスや意思決定に大きな影響を与えることから、研究グループは、この電子タトゥーが航空管制官やトラック運転手など、常に集中力を必要とする職業に従事している人々の安全性を向上させるのに役立つ可能性があるとの見方を示している。

脳全体のアミロイドβとタウタンパク質の蓄積量は性別によって異なる

 女性や父親にアルツハイマー病(AD)歴がある人の方が、脳全体のアミロイドβ(Aβ)とタウタンパク質の蓄積量の間に強い関連が認められるという研究結果が、「Neurology」5月13日号に掲載された。  マギル大学(カナダ)のValentin Ourry氏らは、患者自身の性別やADを発症した親の性別がAβとタウタンパク質の蓄積に影響を与えるかどうかを検討するため、カナダで実施されたPresymptomatic Evaluation of Experimental or Novel Treatments for ADコホート研究から対象者243人のデータを分析した。

妊娠中のカルシウム摂取量が子供のうつ症状に関連か

 栄養バランスの偏りや特定の栄養素の不足は、うつ症状の発症リスクを高める可能性があるとされている。今回、妊娠中の母親のカルシウム摂取量が、子供のうつ症状の発症リスクと関連しているとする研究結果が報告された。妊娠中の母親のカルシウム摂取量が多いほど、生まれた子の13歳時うつ症状に予防的であることを示したという。愛媛大学大学院医学系研究科疫学・公衆衛生学講座の三宅吉博氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Psychiatric Research」に5月6日掲載された。

減量・心代謝リスク因子に対し、最も効果的な断食戦略は?/BMJ

 米国・Harvard TH Chan School of Public HealthのZhila Semnani-Azad氏らは、無作為化比較試験99報についてネットワークメタ解析を行い、断続的断食および連続的エネルギー制限食は自由食と比較して体重を減少させ、断続的断食の中でも隔日断食は連続的エネルギー制限食と比較して体重減少に有益であることを報告した。体重減少は心代謝リスク因子を低下させ、結果として2型糖尿病や心血管疾患などの疾病負担を減らすことを可能とするが、減量戦略としてよく行われている断続的断食が、カロリー制限食や自由食と比較して健康にどのような効果があるかは明らかになっていなかった。BMJ誌2025年6月18日号掲載の報告。

遺伝性・散発性の乳頭状腎細胞がん、ベバシズマブ+エルロチニブが有望/NEJM

 遺伝性平滑筋腫症腎細胞がん症候群(HLRCC)随伴性または散発性の乳頭状腎細胞がん患者において、ベバシズマブとエルロチニブの併用投与により抗腫瘍活性が得られ、毒性は併用レジメンで既知のものであったことを、米国国立がん研究所のRamaprasad Srinivasan氏らが、単施設で実施した第II相非盲検試験の結果で明らかにした。HLRCCは、フマル酸ヒドラターゼをコードする遺伝子の生殖細胞系列変異によって特徴付けられる遺伝性疾患で、乳頭状腎細胞がんのリスクが高い。進行HLRCC随伴性乳頭状腎細胞がん患者の多くは疾患進行により死に至るため、有効な治療法の確立が望まれていた。NEJM誌2025年6月19日号掲載の報告。

カフェインと頭痛の重症度との関係

 重度の頭痛や片頭痛は、日常生活に大きな影響を及ぼす非常に一般的な神経疾患である。毎日のカフェイン摂取と重度の頭痛や片頭痛との関係に関する議論は、いまだ続いている。中国・南昌大学のZhiqiang Liao氏らは、食事介入のためにも、カフェイン摂取と重度の頭痛または片頭痛との関連を調査した。Frontiers in Neurology誌2025年5月14日号の報告。  対象は、1999〜2004年に行われた米国国民健康栄養調査(NHANES)のデータより抽出した20〜49歳の参加者5,234人。食事性カフェイン摂取量と重度の頭痛または片頭痛との関連を調査するため、多変量ロジスティック回帰モデルを用いた。潜在的な用量反応関係の調査には、制限付き3次スプライン(RCS)回帰モデルを用いた。smoothed two-pieceロジスティック回帰モデルにより、食事性カフェイン摂取量と重度の頭痛または片頭痛の閾値関連の特定を試みた。サブグループ解析により、重度の頭痛や片頭痛に対する食事性カフェイン摂取の影響にサブグループ間で違いがあるかを調査した。カフェインの摂取量に応じて、Q1(最も少ない)〜Q4(最も多い)の四分位に分類した。

高齢の進行古典的ホジキンリンパ腫、ニボルマブ+AVDがBV+AVDより有用(S1826サブ解析)/JCO

 進行古典的ホジキンリンパ腫に対する1次治療としてニボルマブ(N)+AVD(ドキソルビシン+ビンブラスチン+ダカルバジン)とブレンツキシマブ ベドチン(BV)+AVDを比較した第III相S1826試験における高齢者(60歳以上)のサブセット解析で、N+AVDはBV+AVDより忍容性および有効性が高いことが示された。米国・Weill Cornell MedicineのSarah C. Rutherford氏らがJournal of Clinical Oncology誌オンライン版2025年6月16日号で報告した。

週に数パックの納豆で死亡リスクが40%減少か~前向き研究

 納豆など、個別の大豆発酵食品の摂取が死亡率に及ぼす影響を調べた疫学研究はほとんどない。今回、関西医科大学の藤田 裕規氏らが高齢男性を対象とした前向きコホートで調査したところ、納豆を習慣的に摂取している男性は全死亡リスクが低く、週に数パック摂取する男性では摂取しない男性より40%低いことが示された。Clinical Nutrition ESPEN誌オンライン版2025年6月12日号に掲載。  本研究は65歳以上の男性2,174人を対象とし、このうち2,012人がベースライン調査を完了した。5年後と10年後に追跡調査を実施、アウトカムは死亡率とした。ベースライン時および追跡調査時に納豆摂取に関するアンケートを行った。Cox比例ハザードモデルを用いて、納豆摂取と全死亡との関連についてハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算出した。

過体重・肥満者の変形性膝関節症による痛みをメトホルミンが緩和

 経口血糖降下薬の一種であるメトホルミンが、変形性膝関節症による痛みを抑制するとする研究結果が、世界変形性関節症研究会議(OARSI2025、4月24~27日、韓国・仁川)で報告された。モナッシュ大学(オーストラリア)のFeng Pan氏らの研究によるもので、24日の発表に合わせて「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に論文が掲載された。  前臨床試験およびヒト対象の予備的な研究から、メトホルミンには炎症抑制や軟骨保護作用があり、変形性膝関節症患者の疼痛を改善する可能性が示唆されている。Pan氏らはこの効果を、ランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験によって検討した。

歌いかけはぐずる乳児の気分を落ち着かせる

 乳児に歌いかけることは、乳児の気持ちを落ち着かせる簡単で安全、かつ費用もかからない方法であることが新たな臨床試験で明らかになった。新しい歌や歌を使った育児のアイディアを教えられた親は乳児に歌いかける頻度が高くなり、その結果、乳児の全般的な気分が改善することが示されたという。オークランド大学(ニュージーランド)心理学分野のSamuel Mehr氏らによるこの研究結果は、「Child Development」に5月28日掲載された。  論文の筆頭著者である米イェール大学児童研究センターのEun Cho氏は、「歌うことは誰にでもできるし、ほとんどの家庭ですでに実践されている。われわれは、このシンプルな習慣が乳児の健康に実際に効果のあることを証明した」と話している。また、研究グループは、乳児の気分の改善は、親と乳児双方の生活の質(QOL)の向上につながるため、結果的に家族全体の健康にも有益であると述べている。

けいれんや痛み、麻痺の治療に新たな電極パッドが有用か

 背中に貼り付けたグリッド電極が近い将来、痛みやけいれん、麻痺の治療に役立つ可能性のあることが、新たな研究で示された。この電極を通じて皮膚の上から低電圧の電気刺激を与えることで、脊髄内の神経の機能を短期間、変化させることができたという。米テキサス大学(UT)サウスウェスタン医療センター物理療法学・リハビリテーション医学教授のYasin Dhaher氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of Neural Engineering」に4月7日掲載された。  論文の上席著者であるDhaher氏は、体の外側に設置した電極を使って脊髄神経の興奮性を調整できるこの方法は、「侵襲的な脊髄刺激療法を受けられない患者や希望しない患者にとって、有望な代替手段になり得る」とUTのニュースリリースの中で述べている。

不眠症へのベンゾジアゼピン中止のための介入策の効果は?/BMJ

 ベンゾジアゼピン系および類似の催眠鎮静薬(BSH)を中止するための介入について、有効性に関するエビデンスの確実性は低く、患者教育、薬剤の見直し、薬剤師主導の教育的介入がBSHを中止する患者の割合を増加させる可能性はあるが、現状ではエビデンスの確実性が低いため、さらなる質の高い研究が求められるという。カナダ・McMaster UniversityのDena Zeraatkar氏らが、システマティックレビューとメタ解析の結果を報告した。多くの患者が、転倒、認知機能障害、依存などのリスクがあるにもかかわらず、不眠症の治療にBSHを使用している。しかし、BSHの代替療法に関する知識は限られており、その有害性が明確ではなく、中止を支援する最適な戦略に関するエビデンスは不十分であることが報告されていた。BMJ誌2025年6月17日号掲載の報告。

局所進行頭頸部がん、周術期ペムブロリズマブ上乗せが有効(KEYNOTE-689)/NEJM

 未治療の局所進行頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)に対し、標準治療へのペムブロリズマブ術前および術後補助療法の追加は、標準治療のみと比較し無イベント生存期間(EFS)を有意に改善した。ペムブロリズマブの術前補助療法は、手術施行に影響を与えず、新たな安全性に関する懸念は認められなかった。米国・ハーバード大学医学大学院のRavindra Uppaluri氏らKEYNOTE-689 Investigatorsが、日本を含むアジア、北米、欧州などの192施設で実施した第III相無作為化非盲検比較試験「KEYNOTE-689試験」の結果を報告した。局所進行HNSCC患者に対する手術と術後補助療法の標準治療に対し、周術期のペムブロリズマブ追加の有用性は不明であった。NEJM誌オンライン版2025年6月18日号掲載の報告。

手術不能胃がんに対する2次治療:抗HER2抗体薬物複合体vs.ラムシルマブ+パクリタキセル併用療法(解説:上村直実氏)

日本における胃がんはピロリ菌感染率の低下および除菌治療の普及と共に、患者数および死亡者数が著明に低下しているが、世界的には依然として予後不良な疾患とされており、手術不能胃がんに対する薬物療法の開発が急務となっている。手術不能または転移を有する胃がんに対する化学療法に関しては、HER2遺伝子の有無により決定されている。全体の20%弱を占めるHER2陽性胃がんに対しては、従来の化学療法に抗HER2抗体のトラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)を追加した3剤併用療法が標準的1次治療として推奨されている。1次治療が奏効しないもしくは効果不十分な症例に対する2次治療としては、現在、ヒト型抗VEGFR-2モノクローナル抗体ラムシルマブとパクリタキセルの併用療法が標準治療とされているが、最近、トポイソメラーゼI阻害薬を搭載した抗HER2抗体薬物複合体であるトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)の有用性を示す研究結果が相次いで報告されている。

DVRd療法、移植適応・非適応によらず未治療多発性骨髄腫に使用可能に/J&J

 Johnson & Johnson(法人名:ヤンセンファーマ)は25日、ダラツムマブ・ボルヒアルロニダーゼ アルファ(商品名:ダラキューロ配合皮下注)について、医薬品添付文書改訂相談に基づく添付文書改訂により「用法及び用量に関連する注意」が追加された結果、ダラツムマブ+ボルテゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン(DVRd)療法が、造血幹細胞移植(ASCT)が適応および適応とならない未治療の多発性骨髄腫に対する新たな治療選択肢として使用可能になることを発表した。