日本語でわかる最新の海外医学論文|page:1152

喫煙女性の肺疾患リスク、禁煙後20年で非喫煙者レベルに低下

喫煙は全体として死亡率上昇に関係しているが、喫煙継続あるいは禁煙後の、死亡率低下との関連については不確かで、とりわけ女性の喫煙と卵巣癌および結腸直腸癌との因果関係を推論する十分な証拠はなかった。米国ハーバード大学医学部ブリガム&ウィメンズ病院のStacey A. Kenfield氏らは、全米の看護師約10万5千人を対象に前向き観察研究を行った。その結果、癌死亡率のリスク増大に喫煙が関係していること、ただし禁煙によって改善する可能性があることを報告している。JAMA誌2008年5月7日号より。

ARBは心筋梗塞の発症抑制についてACE阻害薬より劣るのか? -ARB史上最大規模の試験「ONTARGET試験」は何をもたらしたか(2)-

 “ARBは心筋梗塞の発症リスクを増加させるのか?”、“ARBの心筋梗塞発症抑制はACE阻害薬より劣るのか?”-これらの疑問に対する答えを一身に背負わされてきた試験が先ごろ発表された。冠動脈疾患ハイリスク例に対してACE阻害薬とARB テルミサルタン、そしてその2剤併用療法を比較したONTARGET試験1)だ。

PCI施術医の技能評価とデータ公開に有用な方法が開発された

経皮的冠動脈インターベンション(PCI)施術医の技能評価やアウトカムの予測にはnorth west quality improvement programme(NWQIP)モデルが有用で、データの提示、公開には累積ファンネルプロットおよびファンネルプロットが使用可能なことが、英国James Cook大学病院循環器科のBabu Kunadian氏らの検討で明らかとなった。英国では心臓外科医の相対的な技能が公開されているが、施術医特異的なPCIデータはまだないという。NWQIPはPCI施行後の心臓の主要有害事象の予測モデルを提供しており、内的および外的妥当性が確立されている。BMJ誌2008年4月26日号(オンライン版2008年3月26日号)掲載の報告。

入院時のPCR法によるMRSA迅速検査は感染率を低減しない

入院時にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の全数スクリーニングとしてpolymerase chain reaction(PCR)法による迅速検査を実施しても一般病棟のMRSA感染率は低減しないことが、英国Guy's and St Thomas' NHS Foundation Trust感染症科のDakshika Jeyaratnam氏らの検討で明らかとなった。MRSA感染症は罹患率および死亡率が高く、入院期間を延長し、医療コストの増加をもたらす。英国では、MRSAを含む感染症関連保健医療の低減が政府の優先課題とされる。BMJ誌2008年4月26日号(オンライン版2008年4月16日号)掲載の報告。

モニタリング戦略による生存の差はわずか、抗レトロウイルス療法中のHIV感染例

抗レトロウイルス薬によるfirst-line治療を受けているHIV感染例においては、個々のモニタリング戦略(臨床観察、ウイルス量、CD4細胞数)のベネフィットはほぼ同等であることが、英国Royal Free and University College Medical SchoolのAndrew N Phillips氏らの検討で明らかとなった。WHOは、低所得国におけるHIV感染例の治療アプローチとして、標準化されたレジメンによる抗レトロウイルス治療とともに、ウイルス量よりもむしろ臨床観察あるいは可能な場合はCD4細胞数のカウントによるモニタリングを推奨している。同氏らはこれを検証し、Lancet誌2008年4月26日号で報告した。

インドの急性冠症候群はSTEMIが多く、貧困層の30日死亡率が高い

インドの急性冠症候群(ACS)患者は先進国に比べST上昇心筋梗塞(STEMI)の割合が高く、貧困層はエビデンスに基づく治療を受けにくいために30日死亡率が高いことが、インドSt John's医科大学のDenis Xavier氏が実施したCREATE registryにより明らかとなった。2001年には世界で710万人が虚血性心疾患で死亡したが、そのうち570万人(80%)が低所得国の症例であった。インドは世界でACSによる負担がもっとも大きい国であるが、その治療およびアウトカムの実態はほとんど知られていない。Lancet誌2008年4月26日号掲載の報告。

公共施設等同様に自宅にもAEDを装備すると有益なのか?

米国では毎年約166,200例の突然の心停止が病院外で起きている。そのうち約4分の3は自宅で、それゆえ各家庭で適時治療を行えるかどうかは救急医療の課題になっている。Gust H. Bardy氏らHAT(Home Automated External Defibrillator Trial)研究グループは、公共施設等でのAED設置が突然の心停止の生存率改善に寄与していることから、リスクの高い患者の生存率改善のため在宅AED使用の有用性を検討した。NEJMオンライン版2008年4月1日号、本誌2008年4月24日号より。

ステント留置術 vs 冠動脈バイパス術 長期転帰に有意差なし

冠動脈ステント留置術と冠動脈バイパス術(CABG)の治療効果に関する比較研究はこれまでにも行われてきたが、非保護左冠動脈主幹部の病変にはCABGが標準治療とされるため、両者の長期転帰には限られたデータしかなかった。今回、欧米よりもこの部位へのステント留置術が広く行われている韓国・カソリック大のKi Bae Seung氏らが、比較研究の結果を報告。両手技の患者死亡率に有意差は認められないものの、ステント留置術のほうが標的血管の血行再建術施行率が高まる傾向があるとしている。NEJMオンライン版2008年3月31日号、本誌2008年4月24日号より。

肛門管癌におけるフルオロウラシル/シスプラチン/放射線併用療法は不成功

 肛門管癌患者にとって化学・放射線併用療法は根治療法の第一選択だが、フルオロウラシル/マイトマイシンとの併用療法では5年無病生存率は約65%にとどまる。そのためテキサス大学消化器腫瘍部門のJaffer A. Ajani氏らは、標準治療とされるマイトマイシン併用療法と比較するため、シスプラチン併用療法を試験的に実施、有効性について検証した。JAMA誌2008年4月23日号より。

エベロリムス溶出ステントはパクリタキセル溶出ステントより有利

免疫抑制剤エベロリムスを溶出するコバルトクロム製ステントは予備的研究で、冠動脈疾患患者の血管再狭窄リスクを軽減するとの見込みが示されていたが、エベロリムス・ステントの安全性と有効性を評価する「SPIRIT III」試験に携わっていたコロンビア大学メディカルセンター(米国ニューヨーク市)のGregg W. Stone氏らは、普及しているパクリタキセル溶出ステントより、血管内径の狭窄も、治療失敗による有害イベントも有意に少ないと報告した。JAMA誌2008年4月23日号より。

子どもの外遊びはママの時代より減少と8割のママが認識 ほとんどのママが子どもの紫外線対策を実施できずにいる

ロート製薬株式会社が、関東圏及び関西圏の1歳~9歳の子どもを持つママ300名に子どもの外遊びと紫外線対策に関する意識を探るために行ったアンケート調査によると、4割のママが自分の子どもは他の子どもと比べて「よく外で遊ぶほう」だと思っている一方、約8割のママは自分の子どもの頃に比べて外遊びは減っていると認識していることがわかった。

リピトールの高用量投与群、慢性腎臓病患者の心臓発作および脳卒中発症リスクを低下

米国ファイザー社は、心疾患を有する慢性腎臓病患者において、リピトール(アトルバスタチンカルシウム)80mg投与群が、リピトール10mg投与群と比較し、心臓発作および脳卒中発症リスクを32%低下させたと発表した。この解析は、5年間にわたるTreating to New Targets(TNT)試験の終了後に計画され、完了したもので、米国心臓病学会誌(JACC:Journal of the American College of Cardiology)に発表されている。

クラスター無作為化試験の内的妥当性は改善しているようだ

グループ・集団を無作為化して行われるクラスター無作為化試験は、保健サービス分野で介入の妥当性を調査するのに必須とされる。しかし、グループ構成がナーシングホームからであったり一般開業医からであったりといった違いがある。統計学者は設定デザインや解析法等の妥当性、特に盲検化について評価することの重要性を強調するが、研究者は必ずしもその点に留意していない。Barts and The London School of Medicine and Dentistry(英国)Sandra Eldridge氏らは、最近発表された34の治験(医学雑誌7誌で発表分)をレビューし、その内的妥当性、外的妥当性について評価を行った。BMJオンライン版2008年3月25日号、本誌2008年4月19日号より。

毛巣瘻の術後創には一次閉鎖術か開放ドレナージか

若年成人男性の罹患率が高い毛巣瘻の治療方針をめぐって、外科手術後の創傷治癒に要する期間と再発率について議論が分かれている。そこで術後創傷を縫合する一次閉鎖術と、開放ドレナージ術との両治療法効果を判定するため、無作為化試験のシステマティックレビューとメタ解析が、アバディーン王立病院外科(英国)Iain J D McCallum氏らのグループによって行われた。BMJオンライン版2008年4月7日号、本誌2008年4月19日号より。