日本語でわかる最新の海外医学論文|page:1143

多剤耐性結核患児へのフルオロキノロン投与は侵襲性肺炎球菌疾患を招く

 多剤耐性結核(MDRTB)に罹患した子どもの治療にフルオロキノロンを使用すると、レボフロキサシン(LVFX)非感受性肺炎球菌およびその院内伝搬に起因する侵襲性肺炎球菌疾患(IPD)の発現を招くことが、Anne von Gottberg氏らGERMS-SA(南アフリカ)の研究グループによって明らかにされた。現在、抗生物質に対する肺炎球菌の耐性獲得が世界的な問題となっており、フルオロキノロンなど比較的新しい薬剤に対する耐性菌は、とくに市中肺炎の経験的治療(empiric treatment)において重要とされる。Lancet誌2008年3月29日号(オンライン版2008年3月21日付)掲載の報告。

第2世代抗精神病薬が第1世代より優れるとはいえない

統合失調症の初期症状に対する抗精神病薬治療は少なくとも1年間は有効であるが、第2世代の薬剤が第1世代よりも優れるとはいえないことが、EUFEST(European First-Episode Schizophrenia Trial)試験の結果から明らかとなった。第2世代抗精神病薬が上市されて10年以上が経過した。当初から、第1世代より有効で運動系の副作用も少ないとされるが、反対意見も多かった。オランダUtrecht医科大学Rudolf Magnus神経科学研究所のRene S Kahn氏が、Lancet誌2008年3月29日号で報告した。

妊娠中期に子宮頸管の長い初産女性は帝王切開のリスクが高い

正期産となるかは妊娠初期の子宮の膨張に依存されることは、生理学および生化学の研究によって示唆されている。また妊娠中期の子宮頸管の短縮が自然早産のリスク増加に関係していることも知られている。英国ケンブリッジ大学産科・婦人科のGordon C.S. Smith氏らは、逆に妊娠中期に子宮頸管が長いままだと、正期産で帝王切開分娩になるリスクの増大につながるのではないかと仮説を立てた。NEJM誌2008年3月27日号より。

冠動脈カルシウムは人種・民族を問わず冠動脈イベントリスクの独立因子

CTにより測定される冠動脈カルシウムスコアは、従来のリスク因子とは別に冠動脈性心疾患が予測できる独立したリスク因子であることが報告されている。ただしこれは白人を母集団にした場合で、その他の人種・民族集団においても独立したリスク因子となりうるかどうかは明らかではない。カリフォルニア大学放射線部門のRobert Detrano氏らは、白人、黒人、ヒスパニック系、アジア人(中国人)の4つの人種・民族集団を対象とした循環器系疾患の前向き研究であるMESA(Multiethnic Study of Atherosclerosis)参加者のデータを用い検証した。NEJM誌2008年3月27日号にて掲載。

ホモ接合性も発癌リスク評価やマネジメントにおいて重要

癌は、生殖細胞変異と体細胞イベントから生じる多重遺伝子性疾患だが、癌組織におけるヘテロ接合消失(LOH)を研究していた米国クリーブランド・ゲノム医学研究所のGuillaume Assie氏らは「生殖細胞の癌組織には、ホモ接合性(homozygosity)の傾向を持つ特異的な遺伝子座が存在する」として、ホモ接合性が発癌リスク評価やマネジメントで重要な素因となる可能性を示唆した。JAMA誌2008年3月26日号より。

早産児は幼年期死亡・早産児出産リスクが高い

早産は小児の罹病率や死亡率を高める主要な要因とされるが、長期にわたる健康や生活の質への影響については明らかにされていない。米国ノースカロライナ州にあるデューク大学医療センターのGeeta K. Swamy氏らのグループは、早産の、生存、生殖、そして次の世代の早産といった長期的な影響を調べる縦断観察研究を行った。JAMA誌2008年3月26日号の報告より。

ACE阻害薬とARBの併用療法は心血管疾患発症抑制においてもはや有用でない-ARB史上最大規模の試験「ONTARGET試験」は何をもたらしたか(1)-

4日、先頃、発表されたONTARGET試験の発表を受けて、日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社、アステラス製薬株式会社は、ARBテルミサルタン(販売名:ミカルディス)が心血管疾患のハイリスク患者に対して、既に心血管疾患の発症抑制効果が確立しているACE阻害薬ラミプリルと同等の効果を有することを発表し、同日、檜垣實男氏(愛媛大学大学院 病態情報内科学 教授)はその意義についてプレスセミナーにおいて講演した。ここではその内容を基にONTARGET試験に関していくつかの観点からレビューする。

消化不良にPPIによる胃酸分泌抑制は適切な初期治療

プライマリ・ケアにおける消化不良の初期治療では、ピロリ菌の検査・除菌とプロトンポンプ阻害薬(PPI)による胃酸分泌抑制の費用効果および症状抑制効果は同等であり、PPIは適切な治療戦略であることがMRC-CUBE試験の結果により示された。BMJ誌2008年3月22日号(オンライン版2008年2月29日号)で、英国Birmingham大学プライマリ・ケア科のBrendan C Delaney氏が報告した。英国の消化不良の治療ガイドラインでは、上部消化管の腫瘍が疑われる徴候がない場合は、これら2つの管理法が推奨されている。

スタチンは慢性腎疾患患者の心血管死を低減する

スタチンは、慢性腎疾患(CKD)患者の心血管死を一般人口と同程度にまで低減することが、無作為化試験のメタ解析の結果から明らかとなった。オーストラリアSydney大学公衆衛生学腎臓臨床研究センターのGiovanni F M Strippoli氏らが、BMJ誌2008年3月22号(オンライン版2008年2月25日版)で報告した。CKD患者は心血管病のリスクが増大している。スタチンは一般人口において心血管死や全原因死亡を低減することがわかっているが、CKD患者におけるスタチンの役割については不明な点が多い。

アクトス、2型糖尿病患者における冠動脈血管内プラークの進展を抑制

武田薬品工業は、シカゴで開催されている第57回米国心臓病学会(ACC: American College of Cardiology Annual Scientific Session 2008)において、アクトス(塩酸ピオグリタゾン)が2型糖尿病患者を対象としたPERISCOPE試験の結果、冠動脈プラーク体積を減少し、冠動脈の動脈硬化進展を抑制することが明らかになったと発表した。

結腸・直腸癌の肝転移に対する手術+化学療法は適格例、切除例に有効

結腸・直腸癌の肝転移に対し、手術と術前・後の化学療法を併用すると適格例および切除例の無増悪生存率(PFS)が改善することが、Bernard Nordlinger 氏らEORTC Intergroupの検討で明らかとなった。毎年、世界で約100万人が結腸・直腸癌と診断され、その40~50%に肝転移がみつかる。転移巣が切除可能な場合は5年生存率は35%に達するが、切除しても75%が再発するという。そのため、再発リスクを低減させるアプローチの探索が進められている。Lancet誌2008年3月22日号掲載の報告。

関節リウマチに対する新たな生物学的製剤トシリズマブの有用性を確認

関節リウマチ治療における新たな生物学的製剤として、日本で開発されたヒト化抗インターロイキン(IL)-6受容体モノクローナル抗体トシリズマブ(商品名:アクテムラ)の有用性を示唆する第III相試験(OPTION study)の結果が、オーストリアVienna医科大学リウマチ科のJosef S Smolen氏によりLancet誌2008年3月22日号で報告された。IL-6は免疫および炎症反応に広範な作用を及ぼすが、この系を介して関節リウマチの発症にも関与すると考えられている。トシリズマブは、すでに日本およびヨーロッパの第II相試験で関節リウマチに対する有効性が示されていた。