日本語でわかる最新の海外医学論文|page:1136

過去50年間の戦死者数は公表データの3倍以上?

戦争による死者数は、公式に発表されている数よりも実際にははるかに多いといわれている。ワシントン大学のZiad Obermeyer氏らの研究グループは、公衆衛生の統計手法を用いて、1960年代のベトナム戦争から2000年代のボスニア・ヘルツェゴビナ紛争に至る、過去50年間の戦死者の正確な推計値を導き出した。BMJ誌2008年6月28日号(オンライン版2008年6月19日号)掲載より。

QRISK2は心血管系イベントのハイリスクの予測に優れている

心血管系イベントの予測ツールとして、英国人データを基に開発されたQRISK(10年間心血管系イベント率予測スコア)(2007年8月10日配信号参照)。その進化バージョンQRISK2(心血管疾患リスクアルゴリズム)の開発・検証報告が、英国ノッチンガム大学のJulia Hippisley-Cox氏らにより発表された。QRISK2は、英国立医療技術評価機構(NICE)が推奨するFraminghamスコア補正バージョンよりもパフォーマンスが優れたもの、イングランドとウェールズ特異の人種コホートを鑑み心血管リスクの正確な推定値を提供できることを目的とし開発された。BMJ誌2008年6月28日号(オンライン版2008年6月23日号)掲載より。

ヘロイン依存症の治療にブプレノルフィン維持療法が有効

 ヘロイン依存症の治療では、ナルトレキソンよりもブプレノルフィン(商品名:レペタン)の維持療法が有効なことが、イエール大学医学部精神科のRichard S Schottenfeld氏らがマレーシアで行った無作為化試験によって明らかとなった。ヘロイン依存症の効果的な治療法へのアクセス拡大は、HIV感染の低減の面からも医療上の世界的な優先課題とされる。Lancet誌2008年6月28日号掲載の報告。

CKD死亡率1.83倍、心血管疾患罹患率2倍:台湾大規模コホート研究

台湾では、慢性腎臓病(CKD)とそれに起因する全死亡の発生率が、特に社会経済的な地位が低い人口層で高く、その低減が公衆衛生学的な優先課題であることが、国立健康研究所健康政策研究開発センターのChi Pang Wen氏らが実施したプロスペクティブな大規模コホート研究で明らかとなった。末期腎臓病、CKDともに世界的な規模で増加しているが、CKDの5つの病期ごとの死亡リスクが明確でないためその影響の全貌は不明だという。Lancet誌2008年6月28日号掲載の報告。

α遮断薬の投与によって治療中の高血圧症例の尿中アルブミンが減少する

自治医科大学循環器科の苅尾七臣氏(=写真)らは、治療中の高血圧症患者に対するα遮断薬ドキサゾシンの就寝前投与によって、尿中アルブミン/クレアチニン比(urinary albumin/creatinine ratio、以下UAR)の有意な減少が認められたことをJournal of Hypertension誌6月号に発表した1)。これは厳格な早朝高血圧管理が臓器障害の発症抑制に及ぼす影響を検討することを目的としたJapan Morning Surge-1(JMS-1)試験より得られた結果で、α遮断薬の投与によって微量アルブミン尿が減少することを無作為化比較試験において証明した。以下、本試験の概要とこれまで得られていた知見を踏まえてレビューする。

マルファン症候群の大動脈起始部拡張にはARBが抑制効果

 先天性の遺伝子疾患マルファン症候群において、進行性の大動脈起始部拡張は大動脈解離につながり、患者の若年死の主因となっている。そのマルファン症候群のマウス研究で、大動脈起始部拡張がトランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)の過剰な情報伝達に起因し、TGF-β拮抗剤であるアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)などによる治療で緩和可能なことが示されたことを受け、ジョンズ・ホプキンス医科大学のBenjamin S. Brooke氏らは、マルファン症候群の患児でARBの臨床効果を評価。結果、大動脈起始部拡張の進行を遅らせる効果があると報告した。NEJM誌2008年6月26日号より。

人工股関節置換後の血栓予防にはrivaroxabanがエノキサパリンより有効

スウェーデン・Sahlgrenska大学病院のBengt I. Erikssonらが参加した抗凝固剤rivaroxaban(経口直接作用型第Xa因子阻害剤)の国際共同第III相臨床試験RECORD 1の検討結果。人工股関節全置換術を受けた患者の長期的な血栓予防について、有効性と安全性をエノキサパリン皮下注(国内販売名:クレキサン皮下注、2008年1月承認)とを比較した結果、安全性は同等で、rivaroxabanのほうが有効であると報告している。NEJM誌2008年6月26日号より。

広がる「がん診療と心のケア」への要求に 精神腫瘍学の学会推薦講師の全国リスト

サイコオンコロジー学会は、ホームページ上に学会推薦講師(精神腫瘍学)のリストを公開した。同推薦講師は学会世話人、研修会受講経験医師から構成され学会推薦の条件を備えた腫瘍精神学の専門家。推薦講師は、現在全国展開している「がん診療に携わる医師10万人に対する緩和ケア研修会」で、3分の1の時間を占める「心とコミュニケーション」を担当、オファーされた研修会にいって講師を行う。内容は、痛み・気持ちのつらさ・せん妄への対応、コミュニケーションスキルなどからなる。

薬剤溶出ステントの2年後転帰はベアメタル・ステントより有利

薬剤溶出ステント(DES)はベアメタル・ステント(BMS)より再狭窄率を低下させるが、ステント血栓症リスクの増加にも関係するという懸念は依然として強い。米国・ダートマス大学医学部のDavid J. Malenka氏らは、DES認可前と認可後にステント留置術を受けた患者群について、それぞれ2年後の転帰を比較した結果、「DESは血管再生術再施行の必要性を低下させ、死亡率とST上昇心筋梗塞のリスクはBMSと同じである」と報告した。JAMA誌2008年6月25日号より。

高血圧管理にはインターネットによる薬剤師支援が有効

高血圧治療の進展は心血管系疾患の死亡率と身体機能障害を減少させはしたが、患者の大半はコントロール不十分な状態にいる。そこで米国・ワシントン大学のBeverly B. Green氏らは、薬剤師によるインターネットを利用した患者支援(血圧モニタリング、情報提供サービス)という新しいケアモデルを検討した。無作為化試験の結果、「インターネットによる薬剤師の管理は血圧管理を改善する」と報告している。JAMA誌2008年6月25日号より。

ボディピアスの実態:イギリス全国調査

イギリスでは特に若い成人女性で耳たぶ以外の身体部位へのピアス装着の頻度が高く、問題が多発し健康サービスの支援を要する事例も多いことが、健康保護局感染症センターのAngie Bone氏らが実施した横断的世帯調査で明らかとなった。近年、イギリスでは美容的なボディピアシングが急増しているが、その実態は不明だという。医学、歯学論文では合併症の報告が相次いでおり、国会でも議論されているが、問題の大きさを把握するための検討はほとんどなかった。BMJ誌2008年6月21日号(オンライン版2008年6月12日)の報告。

喘鳴が見られる幼児が将来、喘息を発症する予測因子が明らかに

喘鳴の見られる就学前の幼児が、将来、喘息をきたす可能性は、運動で誘発される喘鳴およびアトピー性疾患の既往という2つの因子で予測可能なことが、イギリスWythenshawe病院北西肺研究センター一般診療研究部のPeter I Frank氏らが実施した縦断的研究で明らかとなった。就学前の幼児の25~38%に喘鳴が見られるが、これらの幼児が将来、なんらかの肺疾患をきたす症候は明確でなかった。BMJ誌2008年6月21日号(オンライン版2008年6月16日号)掲載の報告。

ボセンタンは軽度症候性の肺動脈高血圧にも有効

エンドセリン受容体拮抗薬ボセンタン(商品名:トラクリア)は、進行性のみならず軽度症候性の肺動脈高血圧(PAH)にも有効なことが、イタリアBologna大学心臓病研究所のNazzareno Galie氏らが実施した無作為化試験(EARLY試験)で明らかとなった。PAHの治療はおもに進行性病変について検討されており、軽症例に関する研究は少ないという。Lancet誌2008年6月21日号掲載の報告。

再発寛解型多発性硬化症に対するlaquinimod治療は、増量しても有効かつ耐用可能

再発寛解型多発性硬化症(RRMS)の新たな治療薬であるlaquinimodは、0.6mg/日に増量しても十分に耐用可能で、MRI上の疾患活動性を有意に低減させることが、イタリアVita-Salute大学San Raffaele科学研究所のGiancarlo Comi氏らが実施した第IIb相試験で明らかとなった。すでに、laquinimod 0.3mg/日の安全性および有効性は確かめられていた。Lancet誌2008年6月21日号掲載の報告。

喘息治療配合剤「アドエア」の長期投与が可能に 30日分をおさめた60ブリスター製剤を新発売

グラクソ・スミスクライン株式会社は、喘息治療配合剤「アドエア」(サルメテロールキシナホ酸塩・フルチカゾンプロピオン酸エステル ドライパウダーインヘラー)の発売から1年が経過し、7月1日から長期投与が可能になるのに伴い、2週間分の薬剤(28ブリスター)をひとつの吸入器具におさめた従来の製剤に加え、30日分の薬剤をおさめた60ブリスター製剤を7月4日に発売すると発表した。