日本語でわかる最新の海外医学論文|page:1009

抗てんかん剤「Zonegran」の単剤療法、EMAより承認取得

エーザイ株式会社は3日、英国子会社であるエーザイ・ヨーロッパ・リミテッドが抗てんかん剤「Zonegran」(一般名:ゾニサミド)について、新規に診断されたてんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する単剤療法の追加適応の承認を欧州医薬品庁(European Medicines Agency:EMA)より受領したと発表した。

双極性障害の再発予防に有効か?「Lam+Div療法」

双極性障害の治療では発現している躁症状やうつ症状を治療することだけでなく、予防することも重要である。現在わが国において「双極性障害における気分エピソードの再発・再燃抑制」に適応を有する薬剤にラモトリギン(Lam)がある。Bowden氏らはLamとジバルプロエックス(バルプロ酸とバルプロ酸塩の1:1配合剤:Div)の併用が双極性障害のうつ病相予防に有用であるかを検討した。Acta Psychiatr Scand誌オンライン版2012年6月18日付報告。

糖尿病発症年齢別にみた、膵臓がんのリスク因子

糖尿病は、膵臓がん(PaC)のリスク因子とされているが、最近では、糖尿病自体がPaCの初期兆候として考えられている。今回、東京大学の水野氏らの研究で、糖尿病発症年齢に応じたPaCのリスク因子が明らかになり、PaCの初期兆候とこれらリスク因子を組み合わせることが、PaCのスクリーニングに有用である可能性が示された。(J Gastroenterol 誌オンライン版2012年6月28日付)

膣脱修復術後の失禁予防のための中部尿道スリング術

骨盤臓器脱の経膣的手術後に、尿失禁リスクに対して予防的に行う中部尿道スリング術のベネフィットとリスクについて検証した多施設共同無作為化試験の結果、3ヵ月と12ヵ月時点の尿失禁は低率となる一方、有害事象が高率でみられることが、米国・ミシガン大学のJohn T. Wei氏らにより明らかにされた。文献的には膣脱修復術を受ける女性は5人に1人に上り、欧州女性に関する報告では手術を受けた女性の4人に1人に尿失禁が出現することが示されている。これらに対して近年施術されるようになったのがスリング術だが、この予防的処置の相対的なベネフィットとリスクについては、これまで明らかにされていなかったという。NEJM誌2012年6月21日号より。

大腸がんに対する軟性S状結腸鏡スクリーニングのベネフィットは?

軟性S状結腸鏡を用いたスクリーニングの効果について、その実施は大腸がんの発生率(遠位・近位大腸がんとも)および死亡率(遠位大腸がんのみ)を有意に低下することが示された。米国・ピッツバーグ大学のRobert E. Schoen氏らが米国内多施設共同による無作為化試験で約15万5,000例のスクリーニング受診者を追跡し報告した。大腸がん検診のための内視鏡スクリーニングの利点は定まっていない。これまで軟性S状結腸鏡スクリーニングのベネフィットを検討する無作為化試験は欧州(英国、イタリア、ノルウェー)で3試験が行われているが、結果は相反する報告が寄せられている。NEJM誌2012年6月21日号(オンライン版2012年5月21日号)掲載報告より。

もっと知ってほしい、乾癬患者 心の苦しみと全身炎症による合併疾患のリスク 臨床医と患者が語る、乾癬の研究と治療の最新動向

 6月25日、アボット・ジャパン株式会社、エーザイ株式会社の主催でプレスセミナー「もっと知ってほしい、乾癬患者 心の苦しみと全身炎症による合併疾患のリスク」が開催された。聖母病院皮膚科 小林里実氏を講師に、乾癬患者さんをゲストに迎え、乾癬がおかれている現状と、乾癬に罹患した患者さんがどのような症状で苦しんでいるのかを紹介した。

成人トゥレット症候群に対するアリピプラゾール治療成績(100例報告)

トゥレット症候群は1,000~2,000人に1人の割合で発症する神経精神疾患である。小児期で発症し、チック症状の軽快と増悪を繰り返しながら慢性に経過する。原因は明らかになっていないものの、脳内神経伝達物質であるドパミンの過剰活動によると考えられている。そのため、トゥレット症候群の治療では抗精神病薬(適応外)を使用することも少なくない。Wenzel氏らは抗精神病薬アリピプラゾールがトゥレット症候群に対し、有用であるかを検討した。J Clin Psychopharmacol 誌オンライン版2012年6月19日付報告。

リナグリプチンは、SU薬に比べ低血糖リスクを減らし、HbA1c値低下効果は非劣性

メトホルミン投与下の2型糖尿病患者へのDPP-4阻害薬、リナグリプチン(商品名:トラゼンタ)追加投与の有効性と安全性に関するデータが示された。対照薬であるSU薬グリメピリド(商品名:アマリールなど)に比べ、主要評価項目であるHbA1c値低下効果においてリナグリプチンの非劣性が証明され、低血糖発現頻度が低いことが明らかになった。Baptist Gallwitz氏らによりLancet誌Early Online Publication 2012年6月28日付で報告された。

腎不全の未治療率、年齢が高いほど高率

腎不全の未治療率は、年齢が高齢になるほど、より若い人に比べて高いことが、カナダ・カルガリー大学のBrenda R. Hemmelgarn氏らによる当地の住民約182万人について行った一般住民対象コホート試験の結果、明らかにされた。eGFR値が15~29mL/min/1.73m2のグループでは、腎不全未治療率は85歳以上が18~44歳の5倍以上だったという。Hemmelgarn氏らは、高齢者の腎不全研究は透析開始に焦点が集まっており、未治療高齢者の疾患負荷について軽視されているのではないかとして、年齢と腎不全治療との関連について検討した。JAMA誌2012年6月20日号掲載より。

新たな脂質マーカーによる心血管疾患リスクの予測能改善はわずか

心血管疾患発症の予測因子として、総コレステロール、HDLコレステロール、年齢や性別、喫煙の有無など従来リスク因子に、アポリポ蛋白B/A-Iといった脂質マーカーの情報を加味しても、同発症リスクの予測能はごくわずかな改善であったことが示された。英国・ケンブリッジ大学のJohn Danesh氏らが、約17万人を対象にした試験で明らかにしたもので、JAMA誌2012年6月20日号で発表した。初回心血管疾患イベント発生予測に、様々な脂質マーカーの測定がどれほど役立つかという点については議論が分かれていた。

データバンクでアルツハイマー病の治療実態が明らかに―仏BNA調査―

急速に超高齢社会に突入したわが国において、認知症診療のスキルは専門医だけでなく、かかりつけ医にも求められるようになってきた。2011年に新規抗認知症薬が次々と承認され、今後の薬物療法に関して議論が行われている。Tifratene氏らはデータバンクを活用し、フランス国内のアルツハイマー病(AD)の薬物療法の現状とその治療がフランスのADガイドラインに準じているかを検討した。その結果、ADのデータバンクがADの診療や関連疾患診療に有益な情報をもたらすことを、Pharmacoepidemiol Drug Saf誌オンライン版2012年6月20日付にて報告した。

肺がん家族歴を有する非小細胞肺がん患者の臨床病理学的特徴

家族歴を有する非小細胞肺がん患者の臨床的な特徴と予後予測 は確立されていない。Haraguchi 氏らは、1982年から2010年まで自施設で治療した非小細胞肺がん患者の診療録を用い、臨床病理ステージおよび患者の転帰について、肺がんの家族歴を有する患者(family history of lung cancer、以下FHLC)と家族歴の無い患者(non family history of lung cancer、以下non-FHLC)を比較し、包括的なreviewを行った。その解析結果がInternational Journal of Medical Sciences 誌2012年Vol.9で発表された。

学会発表を通じて考えた、医学生の学ぶべきもの

慶應義塾大学医学部医学科二年岡田 直己 2012年6月29日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 ※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。  4月14日、私は大阪国際会議場にいた。所属する学生団体「医師のキャリアパスを考える医学生の会」を代表して、第30回臨床研修研究会で発表するためだ。議題はシームレスな医学教育。楠岡英雄・国立病院機構大阪医療センター院長を会長に、全国の病院の臨床研修部長たちが参加する。

仏サノフィとジョスリン糖尿病センターが提携、糖尿病の新薬開発へ

フランス、サノフィ社とハーバード大学医学部付属の教育研究機関であるジョスリン糖尿病センターは19日(現地時間)、糖尿病と関連疾患の治療に向けた新薬開発を促進する新たな研究提携契約を締結したことを発表した。今回の提携は、米国マサチューセッツ州ボストンで開催された2012年バイオ国際会議(Bio International Convention)において発表されたもの。サノフィ・アベンティス株式会社が29日に報告した。

乾癬とアトピー性皮膚炎患者に対する教育プログラムは治療に影響を与えるのか?

標準治療に加えて、治療に何らかの影響を与えるような患者教育の実施は、皮膚科領域では比較的新しい概念である。ベルギーのゲント大学病院のBostoen氏らは、乾癬またはアトピー性皮膚炎患者の重症度やQOLに対して12週間の教育プログラムがどのような影響を与えるかを調べるため、無作為化試験(RCT)を実施した。単独施設におけるRCTではあるが、今回実施したような教育プログラムは長期にわたる乾癬治療において付加価値をもたらすことが示唆された。British Journal of Dermatology誌オンライン版2012年6月18日号の報告。

BDI-IIのカットオフ値で増加する青年期うつ病を早期発見

 近年、わが国におけるうつ病患者数は増加の一途をたどっている。とくに、青年期のうつ病が増えており、日本人の青年は諸外国と比較しうつ病になりやすいとも言われている。うつ病の評価尺度としてベック抑うつ評価尺度(BDI)が汎用されているが、青年期のうつ病の早期発見に有効かどうかは明らかになっていない。Pietsch氏らはBDI-Second Edition(BDI-II)やBDI -Fast Screen(BDI-FS)が青年期うつ病の早期発見に有効かどうかについて検討を行った。Psychother Psychosom Med Psycholオンライン版2012年6月21日付の報告。

研究論文は多数の医学ジャーナルに分散、最新知識を得るための支援システムが必要

各専門分野の無作為化試験の論文は多数の医学ジャーナルに広範に分散して掲載され、個々の医師が個人購読で最新の知識を得るには限界があることが、オーストラリアBond大学のTammy Hoffmann氏らの調査で示された。研究論文やそれを掲載する医学ジャーナルの数は急激に増えており、医師が常に最新の研究論文を熟読することは困難で、多くは選定された論文や電子ジャーナルにざっと目を通すだけだという。このようなやり方が効果的とは考えられないが、各専門分野の研究論文がどの程度ジャーナル間に分散しているかは明らかでない。BMJ誌2012年6月16日号(オンライン版5月17日号)掲載の報告。

重症敗血症、症例数の多さと良好なアウトカムは関連しない

英国の成人重症敗血症患者の一般集中治療室への入院症例数と患者アウトカムの間に関連はないことが、カナダ・McGill大学のJason Shahin氏らの検討で示された。過去30年以上にわたり、種々の外科的、内科的疾患において、治療例数と患者アウトカムの関連の評価が行われている。腹部大動脈瘤の修復や特定のがん種、小児の心疾患の手術など複雑な手技では、症例数とアウトカムの間に強い関連を認め、AIDSや心筋梗塞などの内科的疾患でも症例数の多い施設での治療はアウトカムの改善が確認されている。症例数と人工呼吸器の使用や重症敗血症との関連や、重症敗血症における症例数-アウトカム関連を示唆する研究結果もあるという。BMJ誌2012年6月16日号(オンライン版2012年5月29日号)掲載の報告。