日本語でわかる最新の海外医学論文|page:946

〔CLEAR! ジャーナル四天王(66)〕 脳と精神の世紀は始まったばかり

 死後脳の大規模(33332 cases and 27888 controls)解析により、5つの精神疾患(自閉症スペクトラム障害、注意欠陥多動性障害、双極性感情障害、大うつ病性障害、統合失調症)に共通の(cross-disorder)、いくつかの一塩基多型との関連が見いだされたという報告である。著者らはサマリーでの「解釈」で「精神医学における記述的症候群を超えて、疾患の原因に基づく診断学というゴールに向けたエビデンスをもたらした」と高らかに宣言している。確かに、これにより精神医学は科学として確実に一歩前進した。しかし、著者らはゴールまでの気の遠くなるような距離を知っているに違いない。

腰痛患者の椎体骨折スクリーニングで“レッドフラッグ”の診断精度は低い

 各国の腰痛診療ガイドラインでは、椎体骨折など追加検査や特別な治療を要する病変を有している可能性が高い患者を特定するため“レッドフラッグ”の使用を勧告している。しかし、オーストラリア・シドニー大学のChristopher M Williams氏らによるシステマティックレビューの結果、ほとんどのレッドフラッグが椎体骨折のスクリーニングには役に立たないことが明らかとなった。

ナルコレプシーのリスクが約16倍に、インフルワクチン接種の子ども/BMJ

 ASO3アジュバント添加パンデミックA/H1N1 2009インフルエンザワクチン(Pandemrix)の接種を受けた英国の子どもで、接種後6ヵ月以内に睡眠障害であるナルコレプシーを発症するリスクが約16倍に増大したことが、同国健康保護局(HPA)のElizabeth Miller氏らの調査で明らかとなった。2010年8月、フィンランドとスウェーデンで同ワクチンの接種とナルコレプシーの関連を示唆するデータが提示され、2012年にはフィンランドの疫学調査により、ワクチン接種を受けた小児/青少年でリスクが13倍に増大したことが判明した。現在、北欧諸国以外の国での検証が進められている。BMJ誌オンライン版2013年2月26日号掲載の報告。

左室駆出率保持の心不全、スピロノラクトン長期投与で左室拡張能改善/JAMA

 左室駆出率が保存された左室拡張機能障害の認められる心不全患者に対する、抗アルドステロン薬スピロノラクトン(商品名:アルダクトンAほか)の長期投与は、左室拡張機能を改善することが示された。一方、最大運動耐容能の改善効果は認められなかった。ドイツ・ゲッチンゲン大学のFrank Edelmann氏らによる、400例超について行ったプラセボ対照無作為化二重盲検試験「Aldo-DHF」からの報告で、JAMA誌2013年2月27日号で発表された。本検討は、同患者について確立した治療法がない中、その進行にアルドステロン活性が関与している可能性が示されたことが背景にあった。

〔CLEAR! ジャーナル四天王(65)〕 スピロノラクトンは収縮機能保持心不全例の左室拡張機能指標を改善させる:予後改善効果に期待

 本研究は左室収縮機能が保持された心不全患者を対象に、二重盲検法でスピロノラクトン25mgあるいは偽薬を各々約200例に対して1年間投与し、同薬の左室機能や形態、運動耐容能などに与える影響を検討した。その結果、同薬は左室拡張能指標、左室重量係数、NT-proBNP値を改善させることを明らかにした。しかし、運動耐容能やQOL指標には明らかな改善効果はみられなかったとしている。

皮膚レーザー治療をめぐる訴訟、原告勝訴が約半数、賠償額は平均約38万ドル

 米国・UCLA デイヴィッド・ゲフィン医科大学院 のH. Ray Jalian氏らは、皮膚レーザー治療をめぐる訴訟について分析を行った。全米データベースでオンライン公開されている法定文書を精査したもので、レーザー治療に関する訴訟の詳細を特定した最大規模の研究だという。分析の結果、実際の処置をphysician extenderが行っていた場合でも医師の責任も問われていることが明らかになった。著者は、インフォームド・コンセントの重要性とともに、医師には最終的な監督責任があることを強調している。

アリピプラゾール vs.その他の非定型抗精神病薬:システマティックレビュー

 英国・East Midlands Workforce DeaneryのPriya Khanna氏らは、統合失調症に対するアリピプラゾールの有効性および忍容性について、他の非定型抗精神病薬と比較した試験結果を評価するシステマティックレビューを行った。Cochrane Database of Systematic Reviewsオンライン版2013年2月28日号の掲載報告。

初期症状がより重症のうつ病患者のほうが、低レベル介入の効果は大きい?/BMJ

 うつ病患者に対する、パンフレットによる自助といった低レベルの介入は、初期症状がより重症であるほうが、より軽症である人に比べ、その効果は高いことが、メタ解析の結果、示された。英国・マンチェスター大学のPeter Bower氏らによる報告で、これまで、重症うつ病患者に対する低レベル介入効果の有無については不明であった。本結果を踏まえて著者は、「より重症のうつ病患者に対する低レベルの介入は、段階的ケアの一部として有用な可能性はある」と述べている。BMJ誌オンライン版2013年2月26日号掲載の報告より。

プレドニゾロン+クロラムブシル、特発性膜性腎症の腎機能低下を抑制/Lancet

 特発性膜性腎症で腎機能障害が進行している患者について、プレドニゾロンと免疫抑制剤クロラムブシル(chlorambucil)による併用療法(1ヵ月ずつ交替で6ヵ月間)が最も支持される治療アプローチであることが、英国・バーミンガム大学のAndrew Howman氏らによる無作為化試験の結果、報告された。本検討は免疫抑制剤の腎保護効果の検証を目的としたもので、同時に検討されたシクロスポリン単独12ヵ月の治療については腎保護効果がみられず、同治療については「回避すべきである」と報告した。膜性腎症の一部の患者について免疫抑制剤による治療効果が認められているが、これまで腎機能が低下している患者については試験に基づくエビデンスは得られていなかった。Lancet誌オンライン版2013年1月8日号掲載報告より。

がん関連製薬企業に求める情報=有害事象と製品関連(病院看護師アンケートより)

 ファイザー株式会社(本社:東京都渋谷区、社長:梅田一郎、以下、「ファイザー」)オンコロジー事業部門は、2013年2月16日~17日に石川県金沢市において開催された「第27回日本がん看護学会学術集会」にて、これまでの活動を通じて得た調査結果等を発表した。

パーキンソン病患者は骨折リスクが高い

 パーキンソン病(PD)患者は非PD患者と比べ骨折リスクが有意に高いことが、オランダ・ユトレヒト大学のS. Pouwels氏らが行った後向きコホート研究で明らかになった。PD患者では、一般的な骨折リスクとされる高齢者および女性のほかにも、最近の選択的セロトニン再取込み阻害薬または高用量抗精神病薬の使用歴、骨折歴、転倒、BMI低値、腎疾患がある場合は骨折リスクを評価することが望ましいと考えられる。

血清ビタミンD値と小児アトピーの重症度、統計学的に有意な関連は認められない

 血清25ヒドロキシビタミンD値と小児アトピー性皮膚炎の重症度との関連について、統計学的に有意な関連はみられないことが、米国・ウィスコンシン医科大学のYvonne E. Chiuらによる検討の結果、報告された。両者の関連については、逆相関の関連性が示唆されていた。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2013年2月14日号の掲載報告。

仕事のストレスが大きいほど、うつ病発症リスクは高い:獨協医科大学

 日々の仕事で深刻な悩みやストレスを抱えている日本人就労者の割合は60%を超え、仕事への義務感による精神的重圧から、精神障害および自殺を起こす頻度が増加している。そこで獨協医科大学の和田佳子氏らは、職業性ストレス簡易調査票(BJSQ)で測定・評価したストレス反応から、うつ病のリスクを識別しうるか否かを明らかにすることを目的としたコホート研究を行った。PLoS One誌オンライン版2013年2月12日号の掲載報告。

テレヘルス(遠隔医療)、慢性疾患患者のQOLや不安・うつ病への効果は?/BMJ

 英国・シティ大学ロンドンのMartin Cartwright氏らは、テレヘルス(遠隔医療)による慢性疾患患者への介入について、QOLおよび精神的アウトカムへの効果について評価を行った。テレヘルスは、患者の自己モニタリング評価を遠隔的にできる簡便性から、医療コストを削減し健康関連QOLを改善するとして推進されてきたが、その有用性についてのエビデンスは相反する報告がされている。また不安症やうつ病への効果についてはほとんど評価が行われていなかったという。BMJ誌オンライン版2013年2月26日号掲載より。

ダビガトラン、VTEの延長治療に有効、出血リスクも/NEJM

 直接トロンビン阻害薬ダビガトラン(商品名:プラザキサ)による抗凝固療法は、静脈血栓塞栓症(VTE)の延長治療として有効であり、大出血や臨床的に重要な出血のリスクはワルファリンよりは低いもののプラセボに比べると高いことが、カナダ・マクマスター大学のSam Schulman氏らの検討で示された。VTE治療はビタミンK拮抗薬が標準とされ、複数の血栓エピソードなど再発のリスク因子を有する場合は長期投与が推奨されるが、大出血のリスクとともに頻回のモニタリングや用量調整を要することが問題となる。ダビガトランは固定用量での投与が可能なうえ、頻回のモニタリングや用量調節が不要で、VTEの治療効果についてワルファリンに対する非劣性が確認されており、初期治療終了後の延長治療に適する可能性がある。NEJM誌2013年2月21日号掲載の報告

統合失調症の再燃や再入院を減少させるには:システマティックレビュ―

 統合失調症の再燃や再入院を減少させるには、早期警告症状への気づきを促す介入が重要であることが、英国・ノッティンガム大学のRichard Morriss氏らによるシステマティックレビューの結果、明らかとなった。Cochrane database of systematic reviewsオンライン版2013年2月28日掲載の報告。

大腿骨転子部骨折に対するINTERTANの治療成績はsliding hip screwと類似

 大腿骨転子間・転子下骨折の治療では髄内釘またはsliding hip screwが用いられる。ノルウェー・ベルゲン大学ハウケランド病院のKjell Matre氏らは多施設前向き無作為化比較試験を行い、TRIGEN INTERTAN nail使用時の術後12ヵ月における疼痛、運動機能および再手術率はsliding hip screws使用時と類似していることを示した。The Journal of Bone & Joint Surgery誌2013年2月6日号の掲載報告。

統合失調症患者の社会的認知機能改善に期待「オキシトシン」

 統合失調症患者は社会的認知機能(感情認識、他者への共感、パースペクティブテイキングメンタル[相手の立場で考える能力]を含む)が広い範囲で損なわれていることはこれまでの研究で明らかとなっている。最近の研究によると、統合失調症患者における社会的障害にオキシトシン作動性システムが関連しているともいわれている。イスラエル・ハイファ大学のM Fischer-Shofty氏らは、統合失調症患者に対するオキシトシン治療が社会的認知機能を改善するかを検討した。Schizophrenia research誌オンライン版2013年2月19日号の報告。

アピキサバン、VTEの抗凝固療法の延長治療として有用/NEJM

 経口第Xa因子阻害薬アピキサバン(商品名:エリキュース)による抗凝固療法の延長治療は、大出血の発生率を上昇することなく静脈血栓塞栓症(VTE)の再発リスクを低減することが、イタリア・ペルージャ大学のGiancarlo Agnelli氏らによるAMPLIFY-EXT試験で示された。深部静脈血栓症(DVT)や肺塞栓症(PE)などのVTEは、心疾患や脳卒中後の血管関連死の原因として3番目に頻度が高いという。欧米のガイドラインは3ヵ月以上の抗凝固療法を推奨しているが、標準治療であるワルファリンは、出血リスクのほかモニタリングや食事制限などの問題で治療の継続が難しくなることが多く、延長治療の決定には困難が伴う。アピキサバンは固定用量レジメンでの投与が可能で、モニタリングも不要なため、VTEの延長治療の選択肢となる可能性があった。NEJM誌2013年2月21日号(オンライン版2012年12月8日号)掲載の報告。

食道下部への磁気デバイス留置で、GERDの胃酸逆流を抑制/NEJM

 手術的に食道下部に装着して括約筋を補強する磁気デバイスが、プロトンポンプ阻害薬(PPI)の効果が十分でない胃食道逆流症(GERD)患者の胃酸逆流の抑制に有効である可能性が、米国・Minnesota GastroenterologyのRobert A. Ganz氏らの検討で示された。GERDの根本的な病理学的異常は食道下部括約筋の機能低下だという。現在の第1選択治療は主にPPIによる胃酸分泌抑制だが、文献的には最大40%の患者で症状のコントロールが不十分とされる。これらの患者には噴門形成術(Nissen法)が適応となる場合があるが、合併症のため同意が得られないことも多いとされる。NEJM誌2013年2月21日号掲載の報告。